どうせ毎日つけるのは初めのうちだけと判ってはいるが、買い求めた真新しい日記帳をパラパラめくりつゝ(そしていいウイスキーなどちょっと舐めつゝ)、来年に思いを馳せるのも悪くない習慣である。日本人は日記が好きだ。平安の昔から、蜻蛉日記、土佐日記、奥の細道と、枚挙に暇のない位豊
な日記文学の伝統を私たちはもっているが、こんな国は日本だけだとドナルド・キーンさんも「百代の過客」の序に書いておられる。欧米人は、つけても大抵天候の事とか予定とか、そんな事しか書かないらしいが、日本人はどうしても思いが入るのだ。ともあれ白いページの埋まらない日があっても、グラスが琥珀色に満たされていれば、それもまたよかろう、である。