バーボンウイスキー・エッセイ アメリカの歌が聴こえるバーボンウイスキー・エッセイ アメリカの歌が聴こえる

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マイ・ウェイ 文・達磨信

では話を「メーカーズマーク46」に戻そう。このプレミアム・バーボンウイスキーこそ、『マイ・ウェイ』である。

“インナーステイブ”での熟成期間はおよそ冬の3ヵ月ぐらい。後熟的なものだが、この期間に樽内に沈めた10枚のフレンチオーク材の香味特性を馴染ませていく。

フレンチオークはフェーノール含有量やヴァニリン含有量がアメリカンオークよりも多いことが知られている。甘く厚みのあるリッチな「46」の香味は、メーカーズマークの香味にフレンチオークの成分が溶出し、融合したものである。

ちなみに46とは、オーダー番号のことだそうだ。フレンチオークをトーストした際のオーダー番号で、46番目のものが最も適していたということらしい。

さて、後熟期間がなぜ厳密ではないのか。それはメーカーズマークの「時間ではない。テイストが重要である」という製造理念によるものだ。同じオーク材のものを用いてもまったく同じ熟成をする樽はひとつとしてない。決まった熟成期間にとらわれるのではなく、ひと樽ひと樽に詰められた原酒のベストな熟成のタイミング、ベストな香味の見極めに心血を注いでいるのである。

まさにマイ・ウェイ。他の何ものでもない。あらゆる工程のディテールの追求と積み重ねによって、世界のプレミアムバーボン、メーカーズマークはつくり上げられる。職人たちひとりひとりが“I did it my way”を貫くのだ。


日本では晴れの日の曲としてのイメージが強い『マイ・ウェイ』だが、イギリスでは葬儀のときに最もよく流れる曲だそうだ。この違いを笑うのは簡単なことである。でも、笑ってはいけない。

酒に目を向けてみよう。涙と笑顔のどちらのときも、やさしく人を包み込んでくれるではないか。あるときは癒し、あるときは叱咤激励してくれる。音楽も酒も同じではないか。

「メーカーズマーク46」はストレートでそのしなやかさを味わっていたただきたい。しかしながら無理強いはしない。オン・ザ・ロックでゆるゆると味わうのもいい。アメリカンオークとフレンチオークの特性が融合した、バーボンウイスキー界のマイ・ウェイをじっくりと堪能いただきたい。

辛いときも嬉しいときも、どんなときにでも「46」はあなたを見守り、やさしく包み込んでくれるはずだ。自分の道を貫けと語りかけてくれる。

(第16回了)

for Bourbon Whisky Lovers