地球に存在する水の大部分は海水で、私たちの生命と日常生活を支えている淡水の量は非常に少なく、地球上の水のわずか0.01~0.02パーセントにすぎません。
貴重な淡水は、陸地の水分、海水の蒸発と降雨などによって循環していますが、この循環の一役を担っているのが森林です。森林が蒸散させる水分により雨雲ができ、雨を降らせ、その雨がまた森林の土壌に染みこみ、木々を育て、木が水分を蒸散させる……など、様々な水循環過程に森林が関与しています。
森林は水の循環を生み出すだけではなく、降水を貯留し、河川へ流れ込む水の量を平準化して洪水を緩和するとともに、雨の降らない時の川の流量を維持させるという機能を持っています。森林が“緑のダム”と呼ばれているのは、このような理由によるのです。
雨水は森林土壌を通過することにより、浄化されます。 さらに、森林は海のプランクトンや海藻を育てる栄養素を海に運び、食物連鎖により魚介類を増やしています。「森は海の恋人」「森が海を育てる」とよく言われますが、森林と河川、海はひとつながりになっていて、切り離して考えることはできないのです。
日本には江戸時代から「魚つき林(うおつきりん)」という言葉があります。これは、森林近くの海岸に魚が多く寄りつくことから、その森林をこのように呼んでいるのですが、当時の漁師や幕府はこのエリアを手厚く保護してきたという歴史があります。現在でも「魚つき保安林」として政府の保護を受けている森林が存在します。
現在、危惧されている環境問題のひとつに、地球の砂漠化が挙げられます。今日、陸地の6分の1は砂漠と推定されていますが、その面積が年々広がりつつあります。これは、地球規模の気候変動が原因ともいわれていますが、経済効率を優先させている人類の手によるところも大きいと考えられています。森林の乱伐、過放牧、焼畑などがその一要因です。森林が少なくなれば、多量の土砂が下流に運ばれて河口に押し出され、その濁流が海の生態系を崩すことも危惧されています。また、前述した水の循環も変化させる結果となるのです。
地球の大切な資源である森林がこのように失われていくと、上で述べたような川の流量調節機能も失われ、下流での洪水や渇水が起きやすくなってしまいます。
このような環境破壊を食い止めるために、企業や行政、ボランティアグループなどが、さまざまな活動を展開しています。水源(森林)涵養活動もそのひとつです。涵養とは、辞書で引くと「自然に水がしみこむように、徐々に養い育てること」とあります。つまり、森林を保護し育てることで水源を守っていこうという活動です。具体的には、植林をしたり、枝打ち(枝の付け根から枝を切り落とす作業)をしたり、下草刈りをしたり、堆肥づくりをしたり、間伐をしたりしながら、森林が生き生きと育つことができるような環境を整えているのです。
サントリーの天然水の森では、森を健康にするために木を伐って森に光を入れ、木々の育成を促す必要があります。
育った木々は、様々な形で生活の材になり、燃料やエネルギーにもなります。木材には金属やプラスチックとは違う魅力や利点にあふれています。そしてそこには豊かな「木の文化」が存在します。
天然水の森サイトで<育林材>の魅力を知ってください。
【参考文献】
- 中村運/著 『生命にとって水とは何か』 講談社
- 松永勝彦/著 『森が消えれば海も死ぬ』 講談社
- 柳沼武彦/著 『森はすべて魚つき林』 北斗出版
- 藤森隆郎/著 『森との共生』 丸善
- 小澤晋照/著 『図解木のすべて4 森ができるまで』 大日本図書