2025年3月14日
#948 木原 三四郎 『学ぶことが好き』
1月下旬にアーリーエントリーされ、1ヶ月ちょっとで初出場を果たした木原選手。期待のプロップに意気込みを聞きました。(取材日:2025年3月上旬)
◆スクラムやセットプレー、ボールキャリー
――リーグワン公式戦、アーリーエントリーで大学生のうちに出場しましたね
僕の今シーズンの目標として、ファースト・キャップを取りたいという大きな目標があったので、それを大学生のうちに叶えられたということは、正直嬉しく思いますし、本当に高いレベルでラグビーが出来ていることを実感しているので、素直に嬉しいです。
――試合に出られるという自信はありましたか?
ヘッドコーチやアシスタントコーチからも、「チャンスはあるから一生懸命プレーすることだけを考えてやって欲しい」と言われていました。正直、僕には輝かしい成績がなくて、サンゴリアスに入るまで社会人でラグビーを続けるか迷っていました。不安はありましたがサンゴリアスに入り、大学生のうちにサンゴリアスの練習に参加させてもらって、日々レベルアップしていることは実感していたので、試合に出られる自信というよりは「試合に出たい」という思いは強かったです。
――出場時間16分の間、自分の得意なプレーは出せましたか?
僕はスクラムやセットプレーを強みにしています。セットプレーのモールやスクラムでしっかりとボールを出すことが出来たんですけれど、フィールドプレーではもっとアグレッシブに動いたり、ボールをもらいに行ったりすることが必要になってくると感じました。
――フィールドプレーでの得意なところは?
大学の時はボールキャリーで少しでも前に出ることを意識してプレーしていて、ボールキャリーを強みにしていました。
◆ブレイクダウンがいちばん伸びた
――サンゴリアスに入って更に伸びたと感じるところはどこですか?
セットプレーはアオさん(青木佑輔アシスタントコーチ)やマーフ(ローリー・マーフィーアシスタントコーチ)にしっかりと教えてもらって、そこは本当にレベルアップしていると思います。他のサンゴリアスの3番の選手や、組んでいる1番の選手、隣にいる2番の選手とコネクトしながら、セットプレーのレベルアップを感じています。
フィールドプレーの部分では、ブレイクダウンがいちばん伸びたと思います。僕は4歳からラグビーを始めて20年近くプレーしていますが、まだまだ学ぶことが多くて、特にブレイクダウンの入り方であったり、サポートのスピードであったり、それらはサンゴリアスに入っていちばんこだわってやっているところでもありますし、ブレイクダウンは好きなプレーでもあるので、強みにしていきたいと思っています。
――先日青木コーチにインタビューをしたんですが、スクラムについては3番は2番にギューッと寄らなければいけないとのこと
2番とのコネクションが外れたらスクラムは終わってしまうので、2番とのコミュニケーションや肩のコネクションが重要になってきます。大学だと後ろの選手が軽いこともあって、自分でどうにかしようと力ずくでやって、それで通用する部分もありました。リーグワンのレベルでは、どうにかしようとしても出来なかったり、すぐに対策されてしまうので、そこは本当に重要な部分で、サンゴリアスに入って教わっている部分でもあります。
◆人生は一度きり
――本気でラグビーをやっていこうと決めたタイミングはいつですか?
正直、大学では声がかからなかったら普通に就職しようと考えていました。ですが就職活動を始めようと思った3年生の時に声をかけてもらって、練習などに参加させていただき、コーチの方々と話していくうちに「上のレベルでやれると思っている」と期待の言葉をかけていただきました。そこで僕は「人生は一度きりだし、高いレベルでチャレンジしてみよう」と思いました。
――そういう言葉をかけてもらって相当嬉しかったのではないでしょうか?
そうですね。本当に嬉しかったですね。
――周りの評価よりも自分の評価が低いというのは、もともと謙虚な性格なんですか?
高校でもそんなにプレータイムをもらえていたわけではなくて、同じ3番の選手と切磋琢磨しながら、どっちが試合に出るか出ないかという状況でした。大学は専修大学に入りましたが、1年目で2部に落ちてしまって、2部だとリクルーターの人が見ることも少なくなりますし、そこで地道にやってきました。性格が謙虚かは分からないですね(笑)。
――基本的には自信があったんでしょうか?
幼い頃からトップリーグ(リーグワンの前身)をずっと見ていて、サンゴリアスは強みがあって、アグレッシブにアタックするラグビーが魅力的だったので、小さい頃からトップのレベルでプレーすることは夢でもありました。
◆お腹の中にいる時からラグビー
――4歳でラグビーを始めたきっかけは何だったんですか?
父親がもともとラグビーをやっていて、長男がラグビーを始めました。僕は3人兄弟の末っ子で、長男とは7歳離れているんですけれど、僕がお腹の中にいる時からグラウンドには連れていかれていました。実際には4歳から始めましたけれど、お腹の中にいる時からラグビーには触れていたんです。僕が入っていたスクールが背番号順だったんですけれど、親としては3番になる時に入れたかったみたいで、待っていたら4歳のタイミングでちょうど3番が空いて、それでスクールに入ったという感じです。
――三四郎という名前にかけるご両親の思いは?
姿三四郎という作品があって、その柔道家のように強くなって欲しいという思いが込められています。
――それで柔道ではなくラグビー?
父親が中学生くらいまで柔道をやっていて、それで柔道も好きだったみたいです。
――お父さんは社会人でもラグビーをやられていたんですか?
トップリーグが始まる前だったんですけれど、コカ・コーラでラグビーをしていました。高校は長崎北高校でやっていて、卒業してそのままコカ・コーラに入って、そこでラグビーをやっていました。
――2番目のお兄さんもラグビーをやっていたんですか?
そうですね。2番目とは3歳離れているんですけれど、2番目もずっとラグビーをやっていて、今はリコーでプレーしています。
――兄弟対決がありそうですね
僕は今まで兄と試合をしたことがないので、それはひとつの目標でもあります。兄と試合をしたいという強い思いもあります。兄はフランカー、ナンバーエイトのバックローをやっていますが、試合でタックルしたいですね。
◆仲間の大切さ
――ラグビーを初めて始めた時には面白いと思ったんですか?
本当に面白いと思いましたね。最初はトライを取ったり、ボールを相手から奪ったりすることが、とても面白いと思いました。けれど、小学校くらいで一回嫌になる時期があって、行きたくないと思う時期もありました。
――それはなぜですか?
僕の地域はスクールが盛んで、僕の代がたまたま強くて、あまり負けたことがなく勝たなければいけないという感じでした。相手に1トライでもされたら怒られるようなチームでした。小学校からそういうプレッシャーがあって、試合の時にはめちゃくちゃ緊張したりして、「負けたらどうしよう」と思うこともありました。
でもその後、またタグビーが好きになったきっかけがあります。小学6年生の時の試合中に脚の骨を折ってしまい、そこで一度ラグビーから離れる時期がありました。僕はキャプテンをやっていたんですけれど、みんながやっているラグビーを見ていて、客観的にラグビーを見てみたら面白くて、仲間が戦っている姿とか「三四郎のために頑張るから」と言ってくれたりして、「もう一度ラグビーを頑張ってみよう、ラグビーがしたい」と思いました。
僕らが小学生の時にはスクールの全国大会(ヒーローズカップ)があったんですけれど、その大会で優勝することが出来て、そこで改めてラグビーは面白いと思いましたし、仲間って良いなと、仲間の大切さを知ることが出来て、そこでまたラグビーが好きになりました。
――その後の年代でもキャプテンをやってきたんですか?
中学でもキャプテン、高校ではバイスキャプテンで、大学でまたキャプテンをやりました。
――キャプテンは合っていると思いますか?
自信はないですけれど、合っている方だとは思います。僕はコミュニケーションを取ったりすることが好きで、いろいろな選手と接することが好きなので、そういう部分で言うと合っているかなと思います。
――将来、サンゴリアスのキャプテンはどうですか?
ちょっとまだ荷が重い部分はあります(笑)。他にも素晴らしい選手がいるので、どうでしょうか。
◆いろいろな知識を身につける
――これから自分の強みにしていきたいプレーは?
ブレイクダウンとスクラムは、どんどん強化していって強みにしていきたいです。
――コーチや先輩たちからも教わっているんですか?
スクラムもそうですし、ブレイクダウンもそうですけれど、アオさんに聞いたらすぐに答えてくれるので、自分から積極的に聞きに行かなければいけないと思っています。もっといろんな選手とコミュニケーションを取って、日本人選手だけじゃなくて、通訳の人に手伝ってもらって外国人選手に聞くのもそうですし、練習後やグラウンド外でコミュニケーションを自分から取って、積極的にアプローチして、強みをどんどん伸ばしていきたいと思っています。
――コミュニケーションを取ることが得意そうですよね
そうですね。好きですね。
――そこはご両親から譲り受けた性格ですか?
父親も結構喋ることが好きで、兄も好きですし、そこの遺伝はあるかもしれません。自分の性格としていろいろな知識を身につけること、学ぶことが好きなので、小さい頃からいろんな人に話しかけて、新しい知識を得るということをやっていました。普段あまり喋らない人でも話しかけたら面白い回答をしたりするので、それが学びであったり面白かったりします。そういう性格でもありますし、遺伝もあると思います。
◆次に自分が入った時に何が出来るか
――リーグワンというレベルでラグビーをプレーしてみて、いま感じるラグビーの面白さは何ですか?
ラグビーのグラウンド面もそうですけれど、分析の部分、どういうストラクチャーアタックをするか、相手をどう崩していくか、今はそういうところが面白いと思っています。高校や大学では自分たちで分析をして、相手の対策をしていましたが、今はいろいろなラグビーを見られる時代になっています。日本のリーグワンだけじゃなく、海外のスーパーラグビーや代表のテストマッチがどこでも見られるようになっていますが、相手の対策をしながらどう崩していくかという部分が面白いですね。
――考える楽しさと、そこに実際に入ってプレーする楽しさもありますか?
対策しながら自分の強みをどう出すかを考えながら、実際にプレーするのが楽しいですね。リーグワンに入ってみて、特にフィジカル面のレベルが高く、それによって学びが増えることも本当に面白いと思います。
――今シーズンの目標は?
1試合出たことを皮切りに、この後の試合にも出られる選手になっていきたいと思っています。まずはサンゴリアスでの練習、グラウンド内外で結果を出すこと、そこが求められてくると思います。今回はリザーブのリザーブとしてメンバーに入って、急きょ試合に出ることになったので、次は自分でしっかりと結果を出して、最初からメンバーに入れるように、信頼されるプレーヤーになりたいです。
――初出場した試合の翌週はバイウィークになりましたね
リフレッシュできる部分があると思うので、もう一度頭をクリアにして、自分がいまサンゴリアスから求められていることは何か?次の練習でどういうアプローチが出来るか?試合の映像を振り返ってもっとどういうプレーが出来るか?そういうことを振り返ることが出来る1週間になると思うので、身体を休ませると共に、次に自分が入った時に何が出来るかを考えてやっていきたいと思っています。
――活躍したらまたインタビューしますね
またスピリッツ・オブ・サンゴリアスに出られるように頑張ります。
(インタビュー&構成:針谷和昌)
[写真:長尾亜紀]