2015-2016シーズンはすべての試合に先発出場し、トップリーグレギュラーシーズンではサンゴリアスの背番号4に定着した辻本雄起選手。初めてレギュラーとして1シーズンを過ごして、今、何を考え、何を課題としているのでしょうか？2015-2016シーズンを振り返り、来シーズンへの意気込みを訊きました。（取材日：2016年1月29日）

◆ここにいるべきではない

—— 2015-2016シーズンはどんなシーズンでしたか？

チームとしては9位という結果で、みんながこの順位にいるべきチームではないと思っていますし、タイトルを取ることを目標にやっている中で、今回の結果になってしまったので悔しいシーズンでした。個人的には全試合に出場することは出来たんですが、チームとして結果を出すことが出来なかったので、悔しさしか残っていません。

—— サンゴリアスとしてはトップリーグが始まって以来、初めて9位という結果に終わりましたね

僕らの世代の選手たちは優勝していた時のチームを知っていますし、ここまで順位が下がることを経験していなかったので、居心地が悪い気持ちで、表現が難しいのですが、ここにいるべきではないという感情があります。サントリーには勝つ文化があったと思いますし、勝ち続けなければいけないチームだと思っています。9位という順位は違和感でしかありません。

チームの歴史の中でずっと勝ち続けることは難しいと思います。だから、9位という結果は受け入れて、次に繋げなければいけないと思います。この結果を無かったことには出来ないので、ポジティブに捉えて、同じことを繰り返さないようにしなければいけないということが、今のチームには必要だと思います。

—— 次に繋げるためのポイントは何だと思いますか？

全く何も出来ずに終わった試合は無いと思います。どの試合もサントリーのラグビーをやり続けるという意志を持って臨んでいて、実際にアタックしている時間は長かったと思います。ただその中で、敵陣に入った時にスコア出来ずに、相手に簡単にトライを許してしまうということが多く、ボールは持っているけれど、得点に繋げられないことが多かったと思います。サントリーラグビーをやり切るという意志を持って試合に臨んでいますが、局面、局面で相手を上回れなかったことがあって、それが結果に繋がってしまったと思います。

—— 次のシーズンに向けて、何をポイントとして取り組んでいこうと思っていますか？

これからのサントリーのスタイルは、"アグレッシブ・アタッキング・ラグビー"で変わりませんし、サントリーのラグビーは1人1人に役割があって、その役割をしっかりとやり切らなければ上手くいかないと思います。アタックするためにはボールを確保しなければいけなくて、そのためにはブレイクダウンなどのところを更に追求していかなければいけないと思っています。

◆チャレンジを乗り越えて

—— シーズン前のインタビューでは「先発で出場したい」と言っていて、その思いは成し遂げられましたね

先発で出場するということに関しては達成出来ましたが、その中で自分の役割を遂行出来た試合もあれば、出来なかったり、インパクトが弱かったりした試合があったので、個人としてのパフォーマンスに関しては内容が伴わなかったと思います。

—— 試合に出る上で気をつけていたことは？

2015-2016シーズンの自分の役割は、ラインアウトと仕事量のところだったんですが、毎試合、独特の緊張感の中で自分の役割をしっかりと遂行するための準備はしていたつもりです。試合に出ることに関して"絶対"はなくて、先発で出場したからといって次の試合に出られるか分からない状況で、次の試合に向けたチャレンジを毎回繰り返していました。分かっていたことですが、試合に出ることは簡単なことではなくて、想像していた以上にプレッシャーや緊張感がある中でのチャレンジを乗り越えていきました。

—— シーズンの中で成長したところは？

ラインアウトに関しては高い確率でボールを獲得することが出来ていたと思います。これまでは経験が足りずに試合に出られないことが多かったんですが、シーズンを通して試合に出続けることが出来て、その中でラインアウトのコーラーをやって、基準の高い獲得率を出すことが出来たので、自分にとってもプラスになりましたし、自信に繋がりました。

—— トップリーグ公式アプリのラインアウト部門で特別賞を受賞しましたね

マイボールの獲得率が90％で、16チームの中で一番で、結果としても表れたので、嬉しいというよりも安心したという気持ちの方が大きかったですね。

◆1つ1つのプレーの精度を更に上げる

—— お客さんの数も、これまでのシーズンと比べると増えましたよね

ワールドカップでの日本代表の活躍の影響で、注目のされ方がこれまでとは比べものにならないくらいに変わったと思います。試合が始まると、お客さんの多さはあまり気にならないんですが、入場した時に会場が満員になっているところを見ると、「凄い」と感じることがありました。

—— 更にお客さんを増やすために選手が出来ることは何だと思いますか？

生で観戦してもらって、「良かった」と思ってもらえるようなプレーをしなければいけないと思いますし、退屈なラグビーをしてはいけないと思います。ボールの動きが多くて、得点がたくさん入るような試合は、見ているお客さんにとっては凄く楽しい試合になると思います。試合の展開にはそれぞれのチームカラーがあると思うので、全てがそういう展開にするのは難しいと思いますが、選手としては見応えのある試合になるようなプレーをしていかなければいけないと思います。

—— そのためには辻本選手、そしてサンゴリアスとしては何をしなければいけないと思いますか？

あくまでも個人的な見解になってしまいますが、サントリーのラグビーはボールがよく動きますし、人もよく動いて、良い形に持ち込めばたくさんのトライが取れます。実際にたくさんのトライを取っているので、見ている人を退屈させないラグビーだと思います。そういうラグビーをするためには、アタックのところで1つ1つのプレーの精度を更に上げることや、ディフェンスで相手をしっかりと止め切るところを更に高めていかなければいけないと思います。

—— 見ている世界のラグビーも少しずつ変わってきていますか？

今の世界の流れは、反則に凄く厳しくなっていると思います。選手としても反則をしないようにとか、ボールの動きを妨げないようにという意識が高まっていて、倒れてから起き上がるスピードが速くなっています。だからよりボールが動きますし、コンタクトの強度も上がっていると思います。世界では体が大きくて、速く動ける選手が求められていると思います。

◆毎試合がチャレンジ

—— 来シーズンの目標は？

セットプレーのところでは自信を持つことが出来たと思いますが、その他のプレーでは、はっきり言ってまだまだレベルが低いと思っています。高いレベルの中でも自分の強みをしっかりと出せるように、日頃から取り組んでいかなければいけないと思います。

—— ラインアウトについてはコツを掴んだという感じですか？

凄くシンプルなことなんですが、相手の良いジャンパーがいることを瞬時に見極め、そこを外す判断をすることや、すぐにサポート出来る態勢になっている選手がいると反応されやすいので、相手の体の向きや空いているスペースを見つけられるようになったと思います。

—— 来シーズンも試合に出るためにはポジション争いに勝たなければいけませんね

絶対に試合に出られる保証はないので、毎試合がチャレンジになります。試合のメンバーに選ばれるようにチャレンジしなければいけませんし、メンバーに選ばれたら自分の強みを出すための準備をしなければいけないと思います。もしメンバーに選ばれなければ、何がダメだったのかをしっかりと自分の中に落とし込んで1つ1つ改善して、メンバーに選ばれるようにチャレンジしていくだけだと思います。

—— 改めてラグビーの面白さはどこになりますか？

試合に出てラグビーをすることが面白いですね。試合に出ることで責任も生まれますし、もっと上手くなりたいとか、強くなりたいという気持ちも生まれます。トップリーグの試合に出てみて、改めてラグビーの楽しさを感じることが出来たと思います。

—— サンゴリアスのラグビーを進化させていくために、フィットネスも更に鍛えていくんですか？

ただ動き回るのではなくて、しっかりと効果的な働きが出来るようにならなければいけないと思います。ブレイクダウンに寄るだけであれば誰でも出来ると思うんですが、その局面になった時に如何にしっかりと自分の仕事が出来ているかを、突き詰めていかなければいけないと思います。

—— 来シーズンへの意気込みは？

ライバルはたくさんいますし、今シーズンはもう終わったので、来シーズンもしっかりとポジションを取りにいかなければいけないと思います。守りに入ってしまってはいけないと思いますし、僕はまだ守りに入るような位置にもいないので、またポジションを取りにチャレンジしていきます。チャレンジした先に結果がついてくると思うので、これからもチャレンジを続けていこうと思っています。理想とする姿と比較してもまだ50％くらいだと思っているので、まだまだレベルは低いと思いますし、やらなければいけないことはたくさんあると思います。