2015年6月 3日
#432 辻本 雄起 『先発で出場したい』
◆ゲインラインとボールキープ
—— 昨シーズンの反省と今シーズンへの課題は?
一昨年のシーズンにタイトルが取れなかったというところからスタートして、「We want it back(なくした物を獲り返す)」というスローガンを掲げて何かを変えるために新しいことを取り入れていったんですが、その結果、本来の自分たちのアタッキング・ラグビー、やるべきサントリーラグビーがぼやけてしまったと思います。そのためにシーズン序盤は僅差の試合が多くなり、すっきりとした試合が少なかったと思います。
シーズン終盤になってチームとして意思統一が出来て、サントリーラグビーがまた出来るようになったことで、日本選手権のファイナルまで進むことが出来たと思います。それを踏まえて今シーズンの課題は、ブレずに自分たちのスタイルを貫くこと、そしてサントリーラグビーの精度を上げることを、突き詰めてやることだと思います。
—— 今シーズンに関しても変えるべきところはあるんですか?
アタッキング・ラグビーをベースに、プラスアルファーしていかなければいけないと思います。サントリーにはアタッキン・グラグビーというしっかりした土台があると思うんですが、それが体現できなくなってしまったらサントリーではなくなると思いますし、勝てなくなってしまうと思います。
ただし、ずっと同じことをやっていたのでは相手に研究されますし、ベースだけで勝ち続けることは難しいと思うので、新しいエッセンスは必要だと思います。その中で、自分たちの根本のプレーを忘れないようにしなければいけません。
—— 個人的な課題は何ですか?
フォワードとして、ゲインラインをしっかりと意識をしたプレーをすることや、サントリーはコンタクトが多いチームなので、ボールをキープすることが大切だと思います。あとは、チームから求められている役割や、与えられた仕事をしっかりとやり切ること継続していかなければいけないと思います。
—— 昨シーズンについては、その部分はどれくらい出来ていたと思いますか?
自分で評価することは難しいんですが、出来た時もあれば出来なかった時もあるので、その波をいかに少なくしていけるかが重要だと思います。そういうところがチームからの信頼に繋がっていくと思います。
◆地道に積み上げていく
—— これまでのキャップ数は?
今シーズンで6年目になりますが、11キャップです。僕は、「サンゴリアスの中でいかにチャレンジ出来るか」という思いでチームに入ってきたので、全然満足はしていませんし、もう中堅になることを考えると、キャップ数だけを見れば少ない数だと思います。
—— これまでに得たものは何ですか?
得たものばかりだと思います。その中で最も大きかったものは、ラグビーというスポーツは逃げたら負けなので、いかに苦しい状況の中でファイト出来るかだと思います。サントリーのラグビーもそうだと思いますし、苦しい状況の中でいかに精度を高く、これまでやってきたことを出せるかを意識しています。
手を抜くとか、逃げるということは簡単なことだと思いますが、それをしていたのではいつまでもチームから信頼をされませんし、チームに貢献することも出来ないと思います。
そういう点で、苦しい状況に向き合い続ける力を得られたと思います。簡単そうに見えますし、当たり前のことなんですが、そこがすごく大事なことだと思います。
—— 自分の長所はどこだと思いますか?
プレーに関しては、動き続ける仕事量のところはコーチ陣からも評価していただいています。なかなか大きな結果を出すことは出来ていませんが、物事に取り組む姿勢やコツコツと地道に積み上げていくというところは長所だと思っています。
—— その長所は子供の頃からあったんですか?
僕は陸上を少しやったことはありますが、ラグビー以外に他の競技をやってきていないので、途中で投げ出すということはなかったと思います。
◆海外の選手がどんなスパイクを履いているか
—— ラグビーをする上で、用具や道具へのこだわりはありますか?
パフォーマンスを出すために用具などを大切に扱うことも1つのルーティンだと思っています。普段、生活をするにしても、ボロボロの服を好んで着る人はいないと思いますし、好んで髪をボサボサにしている人はいないと思います。ラグビーにおいても、しっかりとしたパフォーマンスを出すためには、用具を大切に扱うということは、それと同じことだと思います。
—— スパイクについてはどうですか?
スーパーラグビーを見ていても、海外の選手がどんなスパイクを履いているのかなどは気になりますね。ラグビーはコンタクトが多いですし、動き回らなければいけないスポーツで、更にフォワードはスクラムを組むので、ポイントがしっかりしたシューズを履いて、スクラムを押せるようにしていると思います。
バックスの選手は、パスやランが多くなるので、フォワードよりも軽くて走りやすいスパイクを好んでいると思います。ポジションによってプレーの特徴が変わるので、ラグビーにおいてスパイクは重要だと思います。
—— スパイクはどれくらい持っているんですか?
人にもよると思うんですが、グラウンドによってスパイクを変えている人もいれば、履き慣れたスパイクを好んで、どのグラウンドでも同じスパイクを履く選手もいます。僕の場合は、練習用と試合用で分けています。
練習用スパイクでも何種類か持っていて、ランニングがメインの練習の時には固定式のスパイクを履いたり、より実践に近い練習をする時にはピンが取り換え式のスパイクを履いたりします。それに加え、試合用の取り換え式のスパイクを持っています。
—— いま履いているスパイクを選んだ理由は?
僕はアディダスのスパイクを履いていて、他のメーカーのスパイクをあまり履いたことがないので、比較が難しいんですが、アディダスのスパイクはクッション性やアジリティー面での機能が良いと思います。あとはしっかりと地面を踏み込めるような作りになっていると思います。
マニアックな話になってしまいますが、フォワードの中でも1列目の選手はスクラムを押すので、比較的重いスパイクを履く選手が多いと思いますし、バックローの選手は比較的バックスに近いスパイクを履く選手が多いと思います。僕はロックなので、その間のスパイクを探していたんです。
アディダスの中で、まだ日本では展開されていないんですが、海外ではその中間のスパイクがあって、インターネットで取り寄せて、そのスパイクを履いているんです。
◆出場時間を1分でも長く
—— 今シーズンの目標は?
トップリーグの開幕がワールドカップの後になり、大会方式が変わりますし、試合数も少なくなります。代表選手がチームに戻ってきた時にどういうコンディションかは分からない状態なので、チームに残っているメンバーがチームのコアにならなければいけないと思いますし、そのメンバーで戦っていかなければいけないと思います。
そういう意味でも今シーズンはとても大事なシーズンになると思いますし、今シーズンこそタイトルを取らなければ、チャンピオンに返り咲くのに時間がかかってしまい、更に苦しい状況になっていってしまうと思います。
個人としての目標は、試合に出ることです。これまで試合に出る機会は与えてもらっていますが、先発で出場することがなかなかない状況なので、先発で出場したい思いがあります。それはまだチームからの信頼がないということと経験が少ないからだと思うので、チームが勝つために自分は何をするのかを考えて取り組んでいきたいと思います。
どれだけ良いパフォーマンスをしていても、チームからの信頼や経験を理由に試合に出られないのであれば、それは悔しいことなので、今シーズンこそは先発で出場し、出場時間を1分でも長くしたいと思います。
(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]