2014年1月 8日
#361 畠山 健介 『ハードワーク以外の選択はない』
サンゴリアスでも日本代表でも試合に出続け、年間表彰式にも毎年登場する畠山選手。その安定感と持続力の秘密は何なのでしょうか?決して身体の大きくない3番の大きな存在感は、どこから生まれるのでしょうか?久々のインタビューで、その秘密に迫りました。
◆練習中から声を出す
—— ずっと試合にも出続け、日本代表でも活躍し、とても安定していると思いますが、自分ではいかがですか?
試合には出させてもらっていますし、日本代表にも呼ばれていますが、感覚としては出させてもらっている、選んでもらっているという感覚があります。そのために努力はしますが、運や巡り合わせもあると思います。試合に出ているという自信よりは、出させてもらっている、選んでもらっているという思いが強いと思います。
—— 選んでもらうための努力とは、具体的にどういうことをしているんですか?
いちばん意識していることは、練習中から声を出すことで、それを心掛けてやっているつもりです。
—— 言葉によるコミュニケーションが大切ということですか?
口に出すことで味方が気づくこともありますし、相手のプレッシャーになることもあると思います。サントリーにはサントリーのスタイルがあり、阿吽の呼吸でやれることがいちばん良いことですが、やはり疲れてきたり、試合でプレッシャーを感じる状況だと、自分のプレーに集中し過ぎてコミュニケーションが取れなくなる時間帯が、チームとしても自分としてもあると思います。
その状況ではコミュニケーションが大事で、強いラグビーをやっている時のサントリーは、みんながサントリーのラグビーをやろうとしているんです。そのラグビーは必要以上にコミュニケーションを取ってやっているから、出来ていることだと思っています。逆に良くない時も、強い時の状況に戻すために、コミュニケーションを大事にして声を出そうと心掛けています。
—— 普段はよく喋りますが、1年目の時にしたインタビューでは、「ラグビーになるとあまり喋らなくなる」と話していました。これまでの間で話す機会を増やしてきたんですか?
やはり増えたと思います。今もまだまだですが、当時はラグビーについて知らないことが多くて、ただがむしゃらにやっていたところがあると思います。社会人になって直弥さん(大久保/監督)が3人目の監督で、キャプテンも変わっていますし、若手が入ってきたり、ベテランでずっと試合に出ている人もいます。 すでに引退された方もいて、そんな中でやっていて思うことは、特に試合中は言わなければ伝わらないですし、他の選手と同じところを見ていて走るコースが同じになってしまったり、僕がブレイクダウンに入るべき場面で、他の選手が入ってきてしまったりして、「ここでこのプレーをすればもっと合理的に進められるのに」と思うこともあります。
そういうふうに合理的にことを進めようと思った時に、僕の中ではその答えがコミュニケーションになるんです。次に良いアタックをするために、良い準備をするために必要なことは、事前に声を出すことだと思っています。
それに色々なことを勉強してきましたし、自分の中でのワードも増えてきて、「この状況ではこういうことをやらなければいけない」「このアタックの時はこういうことをしなければいけない」と分かってきましたし、チームとしても決め事も増えてきて、そういうことを1つずつ理解できるようになってきたと思います。
◆用意した言葉は響かない
—— 「自分の良さは冷静さ」と言っていましたが、そこに関しては変わりませんか?
冷静であることは変わらないと思います。試合の流れを見てプレーをチョイスするのは、9番、10番の仕事ですが、「いま何をしなければいけないのか」とか、最近サントリーの中で"ボイルアップ"という言葉があるんですが、「ここは集中する」という意味で使っていて、それも含めて冷静でなければ必要なコールが出ないと思います。僕はキャプテンではないので、チームが集まった時に話すというよりは、プレー中にコールを出すことを心掛けています。
—— フォワードリーダー的な役割はしてきていますよね
昔の僕であれば、そういう立場が大好きでしたが、今はプレッシャーではありませんが、力不足というか、その位置で良いのかという思いがあり、どこかで「いちプレーヤーとしてやりたい」という思いがあります。
もともとフォワードリーダーとして役割を与えられているわけではありませんが、キャプテンの真壁がいない時には任されることもありますし、そういう時には「難しい」と感じています。キャプテンやリーダーというポジションは難しいと思います。
—— これだけコミュニケーションを取っていても、難しいと感じるんですね
プレー中のコールというのは、チーム全体というよりは、個人個人に対するコミュニケーションだったりして、フーリー(デュプレア)に対して「ボールをくれ」と言ったり、横のプレーヤーに対して「2人でディフェンスしよう」とか、そういうコミュニケーションです。
チーム全体に声を出すこともありますが、1人に対するコミュニケーションを繰り返しているんです。リーダーであれば、グラウンド外でも他のメンバー全員に言葉を発信しなければいけないと思います。誰かが言っていましたが、「用意した言葉は響かない」んです。そういった部分で、まだまだ難しいと感じています。
—— 素質はあるんじゃないですか?
僕の場合は、言葉を用意しちゃうんですよ。選手は敏感ですから、そういう言葉では響かないんです。確かそういうことをジャパンの時にトシさん(廣瀬俊朗/東芝)が言っていたと思います。
プレー中に関しては、声を出していきたいと思います。それが勝ちに繋がると思います。「勝つためには何をしなければいけないのか」と考えると、サントリーのラグビーをしなければいけなくて、「サントリーのラグビーをするためにはどうすればいいのか」と掘り下げていくと、僕に出来ることの1つに「コミュニケーションを取る、コールを出す」ということがあります。
◆すごく痛がり
—— 社会人になって、新人賞を獲り、それから毎年ベスト・フィフティーンにも選ばれています。毎年成長していなければ難しいことだと思いますが、どこが成長していると思いますか?
ベスト・フィフティーンの選考方法が、各チームの監督、キャプテン、そして記者さんの投票によって決まるので、そういった人たちとコミュニケーションを取ることが大事だと思います(笑)。投票してくれる方々と良いコミュニケーションを取って、選んでもらえるようにしています(笑)。もちろん試合でのパフォーマンスがあった上で、選んでもらっているとは思います。
—— MVPを獲りたいという気持ちはありませんか?
2010-2011シーズンでは堀江(翔太/パナソニック)がMVPを獲りましたし、昨シーズンは山田(章仁/パナソニック)が最多トライゲッターで、五郎丸(歩/ヤマハ発動機)が得点王とベストキッカーになっていて、同期の活躍が凄いんですよ。そういう個人タイトルを獲っていなくてもジャパンの中では僕の世代が一番人数も多いですし、トップリーグの中で同世代の選手が活躍していると励みになります。
ただ僕の中でMVPという賞は、特に意識はしていません。僕がMVPを獲れるわけがないと思っていますし、チームが優勝することがいちばんなので、優勝するために努力をしています。その中で、いちばん頑張った選手やインパクトを残した選手などが選ばれるんだと思います。ジョージ(スミス)は2年連続でMVPを獲りましたが、やはり彼の献身的なプレーは、あまりラグビーを見たことがない人からコアなファンまで、惹きつけるものがあるから選ばれているんだと思います。
彼がMVPに選ばれたことに対して、誰も異を唱えないのは、やはり彼がしっかりと仕事をしているからで、チームメイトの僕らもジョージのラグビーに対する姿勢、考え方が分かるから、ジョージがMVPを獲ることに異を唱えないんです。そういう選手でなければ、MVPは獲れないと思います。MVPはもらうべき人がもらう賞であり、僕はその対象ではないと認識しています。
—— 大きな怪我もなく、これだけ試合に出続けられている要因は何だと思いますか?
すごく痛がりだからだと思います。怪我をする選手は、体の体質もありますが、すごく責任感が強くて「試合に出なければ」という想いが強い人だと思います。70%や80%のコンディションでも試合に出て、チームのためにプレーして、その反動で怪我をしてしまって、思ったようなパフォーマンスを出せない選手を何人か見てきています。
僕は痛がりなので、少しでも痛いところがあればトレーナーのところに行って、痛い箇所を診てもらっています。トレーナーが「チームの中での痛がりランキングのダントツ1位は畠山だ」と言っています(笑)。
あと以前聞いたことがある話で、身体能力が高い選手は怪我をしやすいみたいなんです。今村雄太さん(神戸製鋼)や剛さん(有賀)など、身体能力が高い選手は、意識に筋肉が追いついていかなくて、怪我をしてしまうと聞いたことがあります。そういった選手も、決してトレーニングを怠っているわけではなくて、それでも怪我をしてしまうんです。
僕はそこまで身体能力が高くないんです。池谷さんも肉離れなどをするんですが、それは持っている感覚に身体が追いついていないんだと思います。最近の池谷さんは肉離れが少なくなりましたが、以前までは肉離れが癖になっていた時期がありました。
◆身体を作ること、フィットネス、ストレングス
—— これからの日本代表での目標は?
2015年のワールドカップを目標に頑張りたいと思っています。
—— ウェールズ、ニュージーランド、スコットランドと試合をして、やはり違いを感じましたか?
全然、違いましたね。特にセットプレーとブレイクダウン周りは、激しいですし、重くて強いと感じました。そこに対抗するためには、まずは身体を作ることだと思います。そして勝つためにはフィットネスが大事になると思います。サントリーでも取り組んでいますが、高いフィットネスレベルを維持することが大切です。 試合のメンバーが23人に変わったことで、プロップが2人交替出来るようになりました。それにより戦術的に交替しやすくなったので、ジャパンにいる時はフィットネスよりもストレングスを重点的に鍛えた方が良いのかなと思っています。
あとは、姿勢の低さじゃないですかね。僕は色々なところで、「低いスクラム」と言っているんですが、他の選手は「なぜ低いのか」と思っているかもしれません。パック・ウエイトという8人の体重で言えば、圧倒的に海外のチームの方が重たいんです。そういう相手に対して、同じ高さでスクラムを組んでも勝てるわけがないんです。そういう相手に対して、少しでも低い姿勢で組むことで、パック・ウエイトのアドバンテージを無くすように努めています。
—— 現時点での完成度はどのくらいですか?
低さに関しては、意識できていると思います。それにスクラムのルールも変更になり、日本代表や体重が軽いチームにはポジティブなルール変更だったと思います。スクラムを組んだ後は低さを維持して組めれば、相手が無理やり押そうとしてもなかなか押せないと思います。そのためにストレングスが必要で、バランスが大事になります。低く組めてもストレングスがなければダメですし、体を大きくしても低く組めなければダメなので、バランスが大事です。
—— 日本代表が成長している実感はありますか?
勝つ力はついてきましたが、なかなかエンジンがかかるまでに時間がかかってしまうと思います。勝てるのに勝てなかったり、自分たちがやろうとしていることが出来なかったりする時間帯が多いんです。
2012年のパシフィック・ネーションズカップでのトンガ戦では、顕著に表れてしまいましたね。まだ波があるので、そこを無くすことが2015年で勝つためには大事になると思います。
◆昨シーズン以上にハングリーに
—— いま、プレッシャーを感じる時はありますか?
今でも試合前にはプレッシャーを感じます。「勝ちたい」というプレッシャーが強いと思います。もともとプレッシャーをあまり感じない方ではありますが、試合の直前になると「負けたくない」という想いになりますね。
—— 昨シーズンの無敗のサントリーと、今シーズンのサントリーを比べて、違いはありますか?
昨シーズンは恵まれた部分もあったと思います。負けそうになった試合が何試合もありましたし、リーグ戦の東芝戦でも、相手が最後にPGを外したから勝てたと思います。たまたま昨シーズンの結果が良かっただけであって、それは今シーズンとは関係のないことだと思います。
今シーズンは2敗(2ndステージ第4節終了時点)していますが、ハードワークをしていないわけではありません。結果には運もあったり、僕らもこのスタイルで何年もやって来ているので、研究されている部分もあると思います。
そこで勝つために、自分たちのスタイルを貫くために、またハードワークと更に「勝ちたい」というハングリーさを出していかなければいけないと思います。昨シーズン以上にハングリーにならなければ、今シーズンは勝てないと思います。
—— 昨シーズン以上にハングリーになる自信はありますか?
なると思います。負けるということが、その想いを強くしてくれると思います。負けて悔しい思いを認識したり、負けてうなだれる姿はみんなも嫌だと思います。そういう想いがあれば、「やるべきことをやる」という考えになると思います。
—— いま振り返って、プロ選手になって良かったと思いますか?
今のラグビーをさせてもらっている環境から言えば、良かったと思います。ラグビーのために時間を使えることが大きいですね。休む時もラグビーのため、練習のために休めますし、ハードな練習をするために休める時間があることは、プロ選手ならではだと思います。
社員選手のスケジュールを聞きましたが、すごいスケジュールで仕事と練習をやっていると思います。他のチームの状況は分かりませんが、サントリーの社員選手のスケジュールで僕が練習をしていたら、怪我せずに乗り切れるか分かりません。
◆他の代表でこんなサイズの3番はいない
—— もうすぐ東日本大震災から3年が経とうとしていますが、震災からこれまでの間で、ラグビーをやる意義などは考えましたか?
当時から変わりませんが、何を考えても、僕にはラグビーをすること以外ないんです。2013年は東北でサントリーの試合がありませんでしたが、1回くらいはチームで東北に行きたかったですね。
チームにはジョージやトゥシ(ピシ)、フーリー(デュプレア)、ライノ(ニコラス ライアン)など、すごい選手がいますし、他のチームにも海外のスター選手が多くいます。ラグビーが好きな東北の子供たちがラグビーを見る機会はまだまだ多くないと思いますし、大人の人でもあまり機会は多くないと思います。そういうラグビーが好きな子供たち、大人の人たちに東北で試合が出来れば良かったと思いますね。
—— 「英語を話せるようになりたい」と言っていましたが、話せるようになりましたか?
ラグビーノートに書くことは、出来る限り英単語を使って書くようにしています。中学生がやるようなことですけど(笑)、ノートを書いていて、日常的に使っている言葉でも英語が分からない言葉がたくさんあるので、分からない言葉は教えてもらってノートに書いておいて、見返すようにしています。
—— 外国人選手と英語でコミュニケーションを取ることもありますか?
そこは日本語になっちゃいます(笑)。サントリーの外国人選手は日本語が上手なので、ジョージやフーリーも日本語を交えながら話してくれますし、ライノはほぼ日本語で話しますから、そこに甘えてしまいますね。
—— 将来は海外のチームでプレーしたいという想いがあるんですか?
その夢は無くなったと言ってもいいくらいになりましたね。勉強しに留学することはあっても、海外のチームに移籍することはほぼないと思います。年齢的にも体のサイズも難しいと思います。僕のポジションはもっと体が大きい選手がやるポジションで、僕が3番をやっているのは稀だと思います。他の代表でこんなサイズの3番はいないですよ。
体のサイズでは敵いませんが、日本代表に選んでもらっている以上は試合に出たいですし、そのために努力をします。チームで試合に出るための努力はしますが、海外のチームに移籍することに関しては、サイズ的にも実力的にも厳しいと思います。世界のチームと戦って、そういう想いになりましたね。
サントリーは良いチームですし、海外に行くということは何かを求めに行くわけなので、その何かがはっきりをするまでは踏み出せないですね。今の僕には求めなければいけない部分がいっぱいあると思いますが、臆病になって二の足を踏んでいる部分もあると思います。
—— 運動神経が良いので、もしバックスのポジションになっていれば、海外でのプレーも視野に入っていたかもしれませんね
気づいたらプロップでしたからね(笑)。小さい頃はご飯ばかり食べていたので、体は大きかったんですよ。宮城県内、東北エリア、そして全国の高校、大学くらいまでは体が大きい方だったと思います。最近、後輩と会った時に昔の写真を見せてもらったんですが、今見てもデカいと思いましたね(笑)。
◆ボールを持ってアタックしたい
—— 今のサントリーのラグビーをやるために体を絞ったと思いますが、これまでやってきたラグビーとは変わりましたか?
感覚的にはそんなに変わってないと思うんですが、数値的に見ると変わっているので、良くなっていると思います。
—— 今の畠山選手の最大の特徴はどこだと思いますか?
どこなんですかね。コミュニケーションが取れることを評価してもらっているんですかね。試合中の動きで言えば、ロックとかバックローの方が動いていると思いますし、青木さんと比べても低いと思います。
1年目の石原も良い動きをしていると思いますし、今の大学生のプロップでもいい動きをする選手が多いと思います。身体能力、フィジカル、ストレングスを含め、動きなどでは他の選手の方が上だと思うんです。
プレーの波は大きくはないと思いますが、周りの評価は分からないので、自分の特徴がどこなのかは分からないですね。日本代表でエディーさん(ジョーンズ/日本代表ヘッドコーチ)に同じような質問をされて、その時も「分からない」と答えました。
その時にエディーさんは、「ボールをもらいに行く姿勢は良い」と言ってくれましたし、「ボールキャリアーとなっても良い働きをしてくれる」と言ってくれました。サントリーはアタッキングラグビーなので、攻撃に対する意欲というところを評価してもらっているのかもしれません。
小さい頃から「ボールを持ってアタックしたい」という想いでラグビーをやってきたので、それの延長線上でここまで来たんだと思います。
—— これからの選手としての目標は?
まずは2015年のワールドカップに出ることですね。今の日本では2019年のワールドカップのことばかり取り上げられているんですが、まずは2015年だと思います。2015年をピークにターゲットとしている選手もいて、僕はその選手の1人なので、2015年のワールドカップに出ることが選手としての最大の目標ですね。
そしてワールドカップで勝って、歴史を作りたいと思います。さらに先については、その目標を達成した時に、どういう心境になるかによって変わると思います。
—— 指導することも考えていますか?
プレーの言語化にはもっと勉強が必要だと思います。選手主体の目線で話すことは出来ますが、指導者になったらそこから一歩引いて、チーム全体やフォワード全体を見なければいけなくなると思いますし、そういう立場になった時には違う感覚が必要になると思います。
引退後に指導者になることは、ここまでラグビーをやってきたので将来的に無いという話でもないと思いますし、指導者の道も視野には入っています。
—— 畠山選手はお子さんがいますが、家庭ではイクメンなんですか?
妻に聞いてもらった方が実際の様子は分かると思いますが、共働きで僕は遠征で家を空けることが多いので、出来る限りのことはやろうと思っています。世の中のイクメンと言われている方々がどれくらいやられているかは分かりませんが、僕が出来るサポートはしているつもりです。
—— お子さんは女の子ですが、将来的にラグビーをやらせたいですか?
やるのであればフォワードになっちゃうと思いますね(笑)。子供がやりたいと思うことはやらせたいので、それがラグビーであれば、少し考えるかもしれませんが、やらせると思います。
◆1戦1戦大事に勝っていくこと
—— 改めて、今シーズンの目標は?
1戦1戦を大事にして勝っていくことです。2冠を獲ることが最大のターゲットなんですが、やはりどこのチームもサントリーをターゲットに研究していますから、それを実践したのがパナソニックだったと思います。これからもう一度パナソニックと試合をすることもあると思います。
だから1戦1戦でみんなが成長しようと思って試合に臨むことが大事だと思います。トップリーグの試合だけじゃなくて、サテライトや練習試合も大事だと思います。これから大事な試合が続くので、1戦1戦大事に勝っていくことが凄く重要です。
—— 優勝はやはり良いものですか?
最高ですよ。最高だということを知っているので、「もう一度あそこに行きたい」「そういう気持ちになりたい」という想いになりますし、そのために「頑張らなければいけない」と思います。
このインタビューの前にたまたま話したんですが、僕が1~2年目の時は一度も優勝出来ませんでしたし、三洋(現パナソニック)には一度も勝てませんでした。
でも、今では勝つ事も出来ていて、更に今は勝てなかった時よりもハードトレーニングをしていて、社員選手は更に厳しいスケジュールの中でトレーニングをしていて大変だと思いますが、優勝することと優勝出来ないことと、どちらがいいかということだと思います。
単純に優勝したいかしたくないかと質問されたときに、「優勝したい」という気持ちがあるのであれば、ハードワークしなければいけないということだと思います。僕はもう優勝するためにはハードワークしなきゃいけないと知っている人間なので、もう迷う必要がないんです。
今の若手選手は優勝しか知らないですし、1年目の選手はハードワークすることしか知らないので、大変だと思います。僕らは全然勝てない時期も知っていて、勝てなくて悔しいのに個人としては表彰されて壇上に上がったりする時の気持ちを知っているので、ハードワークすること以外の選択はないですよ。
—— ファンの方々に見て欲しいプレーはありますか?
あまりないですね。期待されると、その期待以上の結果は出せない、と思っています。僕は「今日もいい仕事をしてくれたね」と言われるのが好きなんです。サントリーのラグビー自体はボールがたくさんまわって楽しいと思うので、それを楽しみに試合会場へ足を運んで頂けると嬉しいですね。
その中で、ジョージのプレーであったり、バックスもいい仕事をしますし、真壁のダイナミックなプレーもあるので、僕はその中でいい仕事をして、ラグビー関係者に良い印象を与えられればと思っています(笑)。
サントリーの楽しいラグビーをするために一生懸命ハードワークする姿を見てもらって、「この人またいるね」って言われたいですね。「ずっとこの人だね」って言われるような、常に評価の対象である位置にいたいですね。
(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]