2012年2月29日
#269 小川 真也 4シーズン振り出場 『諦めずに頑張っていれば絶対先が見えてくる』
◆嬉しかった
—— 今シーズンの出場が、2009年1月の東芝戦以来となりましたが、久しぶりに出場した時の心境を聞かせてください
今シーズンは春から怪我なくやってこられて、いつメンバーに選ばれても大丈夫という準備はしてきました。メンバーに選ばれた時に、変な緊張感はありませんでした。普段は3番をやっているんですが、1番での出場だったので、その部分では緊張感がありました。メンバーに選ばれてから、山岡さんや元さんなどすごいベテランの方々や同期からも声を掛けてもらったので、純粋に嬉しかったですね。3年ぶりの出場でもありましたから。
—— 3年前は1試合の出場でしたが、今シーズンは出場が続いていることに関しては、どう感じていますか?
正直、1番としての仕事をしっかり出来ているかと考えると、今まで1番で出場していた尾崎さんや金井よりも、スクラムやラインアウトの部分で劣っていると思います。ただ僕なりに必死にやっている部分が、エディーさん(ジョーンズ/GM兼監督)や直弥さん(大久保/フォワードコーチ)など、コーチ陣にしっかり見てもらえていることで、続けて試合に出られている結果なのかと思います。
—— 1番と3番はまったく違うポジションですか?
人によってですね。違いはないと言う人もいますよ。僕に関しては、1番と3番はまったくの別世界ですね(笑)。具体的に言うと、スクラムでは3番は両肩に支えがあるので、純粋に押し合いなんですが、1番は片方にしか相手がいないので、バランスであったり、自分が楽な方向に逃げてしまうと、スクラム自体がグチャグチャになってしまいます。そういう1番と3番の違う部分で、いま苦労しているところです。
—— 1番と3番では、鍛え方も変わってくるんですか?
トレーニング自体は変わらないですが、考え方としては、3番をやっていた時に、1番にこうやられたら嫌だとか有効的だということを考えて実践しようとはしています。ただ、それをまだ実践出来るまでには行っていないですね(笑)。
—— どうすれば3番は嫌なんですか?
それは内緒にしておきます(笑)。
◆瞬間的なスピード
—— 4年前のスピリッツ・オブ・サンゴリアスで、130kgを目指すと言っていましたよね
そう言えば、ありましたね(笑)。いまの体重は110kgあるかないかくらいです。
—— さきほど怪我がないと言っていましたが、その体重の差も要因ではあるんですか?
僕の中では、それが怪我が減ったいちばんの理由だと思います。それと、大きな怪我をしたことによって、そこまでの過程で、小さな怪我をした時にそれを大きくしないためのリカバリーを、JP(ジョン・プライヤー/フィットネスアドバイザー)や若井さん(コンディショニングコーチ)、それに吉田さん(ヘッドトレーナー)や田代さん(アスレティックトレーナー)がやってくださっているので、大きな怪我に繋がらずにやってこられているんだと思います。
—— 体重に対する考え方は、いつ頃から変わったんですか?
純粋に体重を増やしている時も、動いていてしんどいなと思うことはありました。それがエディーさんに変わった時に、体重を減らした方が良いと言われました。体重を減らしたことによって、自分の動きも変わってきましたし、自分には今の方が向いていると感じました。しかも怪我も少なくなってきて、試合に出る上で体重を減らした方が良いと感じることが出来ました。僕も体重を増やしたくて増やしていたわけじゃないですけどね(笑)。
—— 昨シーズンよりも体重が減っているんですか?
昨シーズンからは2~3kgくらい減っていると思います。一昨年のシーズンが終わってから体重を落とし始めました。
—— スムーズに体重は落とせましたか?
無理やり食べて体重を増やしていたので、食事を普通に戻すだけで、ある程度は体重が落ちましたね。
—— 自分がプレーしやすい体重になると、怪我が減りますか?
自分で体のコントロールが出来るようになるんだと思います。あの時は3ヶ月で15~16kgと、急激に増やして、怪我をしてしまいました。体を上手く使えていなかったのかなと思いますね。
—— 体重が落ちてきて、自分の強みは重さじゃなくて、どこだと思いますか?
フィットネスに関しては、金井やハタケ(畠山)には劣りますけど、JPたちと話をしていると、瞬間的なスピードはすごく良いものを持っていると言われます。ボールをもらいに行く瞬間のスピードは良いと言われているので、そこが強みだと思います。それに、体重を増やしていた時と今を比べても、パワーに関しては今の方がベンチプレスやスクワットで数値が上がっています。
◆体は大丈夫?
—— 長い間試合に出ていないと気持ちがめげてしまいそうですが、その部分はどうでしたか?
めげそうになりました。去年の春に、親父がなくなったんですが、僕がプレーしている姿を生で見せてあげることが出来なかったんです。だから、1試合でもいいから、母親だけでも生で見せてあげたいという気持ちでいままでやってこられました。それがモチベーションになっていましたね。
—— お母さんは生で見ることが出来ましたか?
3年ぶりに出場した、第9節のNEC戦を見に来てくれました。しかも日帰りです(笑)。
—— 何か言っていましたか?
単純に喜んでくれました。その後はJ SPORTSで放送している時は、見てくれています。いつも試合が終わった後に、「体は大丈夫?」ってメールが来ます。
—— 今、気をつけていることは何ですか?
今、目の前にチャンスがある状況なので、そのチャンスを逃さないように、毎日の練習を必死にやって、またメンバーに選んで頂いたら、試合で一生懸命頑張るだけです。
—— 今の課題は何ですか?
サントリーの強みであるセットプレーのところで、僕がまだ1番としてのスクラムを組めていないので、そこを早くしっかり組めるようになって、3番の助けをしっかりしたいですね。そして、スクラムだけじゃなくて、チームの勝利のために貢献していきたいです。
—— 尾崎選手からはアドバイスはありますか?
尾崎さんは聞いたことにはしっかりと教えてくださいますし、山岡さんや坂田さん(チームディレクター)からもフッカーからの目線で教えてくださいます。聞いたことには、みなさん親切に細かく教えてくださるので、本当に有難く感じています。(インタビュー後、尾崎選手にコメントをもらうと...「今の小川はノリにノッています。まだまだ良くなります。」)
—— これからもいろいろと初挑戦が続いていきますが、その心構えはどうですか?
それは変わらないですね。その日その日の練習からしっかりやって、メンバーに選んで頂いたら、その試合を一生懸命頑張るだけです。だからプレーオフや日本選手権というよりは、毎回大事な試合だと思うので、目先にあるものをしっかり勝ち取れるように一生懸命やりたいと思います。
—— サントリーの中でも怪我で長く試合に出られない選手は他にもいると思いますが、その人たちにメッセージはありますか?
僕が上から目線で、そんな立場からものを言うのも違う感じがしますが(笑)、周りの人たちはしっかり見てくれているので、諦めずに本当に頑張れば、絶対に先が見えてくると思います。
(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]