気候変動

考え方・方針

地球温暖化による水資源への影響は、飲料製品の安定供給にも影響を及ぼすと考えられます。また、資源の枯渇により、生産コストの増加も大きなリスクとなる可能性があることから、サントリーグループでは、気候変動を事業継続の上で重要な課題の一つと認識しています。このことから、地球温暖化の緩和を目指す政府や地方自治体の環境取り組みと連携するとともに、バリューチェーン全体での環境負荷低減を目指し、グループ一体となって気候変動対策に取り組んでいます。
サントリーグループは、金融安定理事会(FSB)により設置された「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」提言への賛同を2019年5月に表明しました。

推進体制

グローバルサステナビリティ委員会

水、GHG、原料、容器・包装、健康、人権、生活文化のサステナビリティに関する7つのテーマに対して、取締役会の諮問委員会であるグローバルサステナビリティ委員会(GSC)で、サステナビリティ経営推進のための戦略立案や取り組みの推進、進捗確認を行っています。

グローバルサステナビリティ委員会の詳細は「環境マネジメント」をご覧ください

目標と進捗

2030年
  • ※1
    2019年の排出量を基準とする
  • ※2
    (参考)2022年実績
    ・自社拠点でのGHG排出量 16.9%削減
    ・バリューチェーン全体におけるGHG排出量 3.5%削減

GHGに関する実績は「データ一覧」をご覧ください

「SBT イニシアチブ」への対応

サントリーグループは、国連グローバル・コンパクト、SBT (Science Based Targets) イニシアチブ※1、We Mean Business※2が主宰する温暖化による世界の気温上昇を1.5℃以内に抑える目標づくりを呼び掛ける「Business Ambition for1.5℃」に賛同し、署名しています。
環境目標2030において設定している温室効果ガス(Green House Gas(GHG))排出削減目標は、SBTイニシアチブの「1.5℃目標」の認定を取得しています。

「SBT イニシアチブ」への対応

1.5℃目標は、世界全体の平均気温の上昇を産業革命以前に比べて1.5℃に抑えるための科学的根拠に基づいた目標です。

  • ※1
    UNGC(国連グローバル・コンパクト)、CDP(気候変動対策に関する情報開示を推進する機関投資家の連合体)、WRI(世界資源研究所)、WWF(世界自然保護基金)が共同で設立した国際的なイニシアチブ。企業が、科学的根拠に基づいた温室効果ガス削減目標を設定するよう働きかけています
  • ※2
    企業や投資家の温暖化対策を推進している国際機関やシンクタンク、NGO等が構成機関となり運営しているプラットフォーム

SCIENCE BASED TARGETS

「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」提言への賛同表明

サントリーグループは、金融安定理事会(FSB)により設置された「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」提言への賛同を表明しています。
また、TCFDの提言に従い気候変動に対するシナリオ分析を行い、気候変動が事業に与えるリスクや機会を特定し、事業に対する影響額を試算しました。今後も関連する情報開示の拡充を進めていきます。

  • The Task Force on Climate-related Financial Disclosuresの略

詳細は「TCFD提言に基づく開示」をご覧ください

取り組み

インターナル・カーボン・プライシング(ICP)の運用

サントリーグループでは、内部炭素価格制度を2021年から導入し、運用を開始しました。主に気候変動対策に資する設備投資の投資判断に活用するなど、広く経営判断に活用し、2030年までに脱炭素を促進する1,000億円規模の投資を実施する予定です。これらの取り組みにより、2030年に想定されるGHG排出量を、約100万t削減できる見込みです。

生産・研究拠点における取り組み

再生可能なエネルギーの活用

サントリーグループでは、日本・米州・欧州の飲料・食品および酒類事業に関わるすべての自社生産研究拠点で購入する電力に、100%再生可能エネルギーを利用しています。これにより温室効果ガスの排出量を年間約23万t削減することに貢献しています。
また、購入電力だけでなく、自社自身でも再エネを創出するため、工場への太陽光発電パネルの設置やバイオマスボイラーの導入を随時進めています。

  • 2021年の購入電力量実績に基づく
  • サントリー天然水 南アルプス白州工場

  • サントリー天然水 北アルプス信濃の森工場

  • カルカヘンテ工場(スペイン)

  • バイオマスボイラー(サントリー知多蒸溜所)

  • バイオマスボイラー
    (サントリー天然水 北アルプス信濃の森工場)

  • Fred B. Noe Craft 蒸溜所
    (サントリーグローバルスピリッツ 北米)

グリーン水素を製造する国内最大16メガワット規模の「P2G」(Power to Gas)システムを自社工場に導入へ

サントリーホールディングス(株)では2022年9月5日、山梨県と環境調和型の持続可能な社会の実現に向けた基本合意書を締結しました。カーボンニュートラルの実現に向け、CO2を排出しない「グリーン水素」をつくることができる国内最大規模の「やまなしモデルP2Gシステム」を、2025年にサントリー天然水 南アルプス白州工場およびサントリー白州蒸溜所へ導入することを目指します。工場で使用する熱エネルギーの燃料をグリーン水素へ転換するだけでなく、周辺地域等でのグリーン水素活用についても山梨県とともに検討し取り組んでいく予定です。

山梨県の長崎知事(左)とサントリーホールディングスの小野真紀子常務(2022年当時)

省エネルギー化の推進

サントリー(株)<天然水のビール工場> 群馬では、ビール生産能力の増強工事を行ったことで、使用エネルギー効率を約20%向上させ、メキシコのテキーラサウザの工場では、熱回収率を向上させる取り組みや貫流ボイラーを導入することで、GHGの排出削減に寄与する「平成28年度二国間クレジット制度資金支援事業」にも採択されています。
また、自然エネルギーを積極的に活用するとともに、環境負荷低減を図る設備を導入した「サントリーワールドリサーチセンター」や、豪雪地域に立地する特徴を活かして、冬季の積雪を蓄える「雪室(ゆきむろ)」を利用しワインの発酵や貯蔵の温度をコントロールしている(株)岩の原葡萄園など、省エネルギー化に向けてさまざまな取り組みを行っています。

  • サントリー(株)<天然水のビール工場> 群馬

  • サントリーグローバルスピリッツ Sauza(メキシコ)工場 新設ボイラー

  • サントリー ワールドリサーチセンター

  • サントリープロダクツ(株)
    天然水奥大山ブナの森工場の雪室

サントリーとして日本国内初のCO2実質ゼロ工場

「サントリー天然水」第4の水源として、2021年5月から稼働を始めた「サントリー天然水 北アルプス信濃の森工場」(長野県大町市)では、太陽光発電設備やバイオマス燃料を用いたボイラーの導入、再生可能エネルギー由来電力の調達、オフセットの活用により、サントリーとして日本国内初のCO2排出実質ゼロ工場を実現しました。

また、2023年6月にはサントリー天然水 北アルプス信濃の森工場が、国内の食品工場で初めて、PAS2060※1の検証により、カーボンニュートラルな工場であることが保証されました。

  • ※1
    Publicly Available Specification 2060の略。BSIが発行する国際的な規格として、製品・サービス等から生じる温室効果ガス(GHG)排出量を定量化、削減し、カーボンオフセットした結果、ニュートラル(GHGの排出を実質的にゼロにする)状態であることを宣言するための仕様。

PAS2060適格説明書(1.8MB)

CO2排出実質ゼロ工場

物流に関する取り組み

サントリーグループでは、物流における輸配送業務と倉庫業務においても環境負荷の低減に努めています。
輸配送業務においては、地産地消などの推進により工場からお得意先様までの走行距離を短くする取り組みや大型車両の積載フル活用、従来のトラックより低GHG排出となる輸送手段・次世代燃料への転換を推進しています。
倉庫業務においては、倉庫稼働時間を短くする取り組みや使用電力の省エネ化を推進しています。
2022年は販売[KL]が前年比107%に対し、GHG排出量が9%増の15.0万[CO2-ton]、原単位は22.7[CO2-ton/販売千KL]となりました。

  • 猛暑により需給バランスが崩れ、輸送距離・移動回数が増えたため

従来のトラックより低GHG排出となる手段へ転換

モーダルシフト率を向上

サントリーグループでは、トラックに比べてGHG排出量が少ない鉄道・海上船舶輸送に転換するモーダルシフトを推進しています。2022年も前年を上回るモーダルシフト率を達成しました。

モーダルシフト率を向上
次世代燃料の活用を研究

従来の燃料に比べてGHG排出量が少ない次世代燃料を輸送協力会社に運用いただき、今後の活用拡大に向けた課題抽出と、関係会社との課題解決に向けた協議を行っています。2022年では4社様にリニューアブル燃料を活用いただきました。

詳細は「国内でのトラック輸送においてリニューアブル燃料(再生可能資源由来の燃料)の導入」をご覧ください

物流協力会社と協働して取り組みを推進

さらなる環境負荷低減を目指して、物流協力会社のうち201拠点(2021年度末現在)は、国土交通省が推進する「グリーン経営」をはじめISO14001(52拠点)や「エコステージ」(23拠点)などの認証を取得しています。またサントリーグループでは、物流協力会社の月別・車両別走行距離、燃料使用量、積載量などをもとにGHG排出データを算定し、物流協力会社との具体的な取り組みの策定につなげています。取り組みの策定にあたっては、活動事例共有などを通して意見交換を行う協議会を定期的に実施しています。

他社との共同取り組みを推進

環境負荷の少ない輸送手段として、共同配送やコンテナの共同利用など、他社と協力した物流を推進しています。

連携先 内容 開始時期 成果
日清食品(株) 北海道の帯広エリアにおける共同配送 2017年6月 年間約50tのGHG排出量削減(両社計の数字)
ビール4社 北海道一部エリア(釧路・根室地区)における共同配送 2017年9月 年間約330tのGHG排出量削減
(※ビール4社計の数字)
ビール4社 関西・中国-九州間における共同配送 2018年4月 年間約1,500tのGHG排出量削減
(※ビール4社計の数字)
ビール4社 ビールパレットの共同回収※1
※1 リリース記事
2018年11月 年間約4,778tのGHG排出量削減
(※ビール4社計の数字)
ユニ・チャーム(株) 静岡-福岡間の鉄道コンテナの共同利用 2021年2月 年間約2tのGHG排出削減量
(※両社計の数字)
ダイオーロジスティクス(株) 関東-関西間における共同配送 2022年8月 年間約115tのGHG排出量削減
(※両社計の数字)
ダイオーロジスティクス(株) 片道のみ積載の鉄道コンテナの復路を双方が活用※2
※2 リリース記事
2022年8月 年間約100tのGHG排出量削減
ダイオーロジスティクス(株) 関東-四国間における鉄道コンテナ往復活用 2023年6月 年間約31tのGHG排出量削減
日本フレートライナー(株) 海上40ftコンテナの復路活用 2023年7月 年間89tのGHG排出量削減

自動販売機の省エネ

サントリーグループでは、バリューチェーン全体でGHG排出量を削減にあたり、国内事業における自動販売機の省エネルギーに向けてさまざまな仕組みを導入しています。

サントリーの自動販売機の主な特長
サントリーの自動販売機の主な特長
ヒートポンプ式自動販売機とは?

ヒートポンプ式自動販売機とは、冷却庫室で発生した熱を回収し、加温庫室で活用するシステムを搭載した自動販売機です。自動販売機の中で熱を有効利用でき、さらに最新式の機材では外気との熱交換もできるなど、省エネに大きく寄与します。

  • ヒートポンプ式以前の
    自動販売機

  • ヒートポンプ式
    自動販売機

自動販売機廃棄処理の適正化

廃棄自動販売機を回収・リサイクルする「自動販売機廃棄処理システム」を業界に先駆けて構築し、1997年1月から全国に展開しています。また、2001年4月の「廃棄物処理法」の改正を受け、廃棄自動販売機の事前選別から最終処分に至るまで、厳密に管理しています。自動販売機の冷媒として使用されるフロンに関しても「フロン排出抑制法」に基づいて回収量を把握し、適正に破壊処理をしています。

オフィス等における取り組み

オフィス

主要なオフィスでは、購入電力を100%再生可能エネルギー由来にするとともに、各オフィスでは、日頃から全従業員が省エネルギーへの意識を強め、さまざまな取り組みを行っています。東京のお台場オフィスでは、再生水の利用、自動調光システム、トイレ照明やエスカレーターの人感センサーなどを導入しています。また、その他のオフィスでもクールビズやウォームビズの展開や、Web会議を積極的に活用することで、GHG排出量の削減を推進しています。

サントリーホール、サントリー美術館

サントリーホール、サントリー美術館では、購入電力はすべて再生可能エネルギー由来の電力を利用しています。
この取り組みによりCO2排出量を、従来に比べて両施設合計で年間約800t削減しています。

  • サントリーホール

  • サントリー美術館

営業車両

営業活動で使用する車両は、ほぼハイブリッド車に置き換わりつつあり、積極的に省エネを行っています。
また、走行距離や運転挙動、燃費などの走行データを取得できる車両運行管理システムやドライブレコーダーの搭載により、走行データの分析結果や走行中の危険挙動の確認を行い、エコドライブに加えて安全運転を推進する取り組みを進めています。

原料に関する取り組み

サントリーグループでは、緑茶やカシスなどの原材料について、気候変動による事業への影響緩和に向けた取り組みを進めております。

緑茶

サントリーグループは緑茶飲料の原料となる茶葉の調達におけるサステナビリティを推進するため、茶産地と連携した長期的な取り組みを開始しました。
球磨地域農業協同組合(JAくま)と協働し、JAくまの茶葉製造工程において環境に配慮したプロセスを導入することで、一般的な製造工程に比べてGHG排出量を30%以上削減することが可能になりました。
高品質なお茶づくりの追求をすることに加え、今後も茶産地における茶農業の継承、後継者の育成にも貢献したいと考えています。

  • 緑茶原料の製造における生葉から荒茶までの工程における製造重量あたりの排出量
緑茶

カシス

サントリー食品イギリス社は、気候変動に強い新種のカシスの研究などを進めており、2020年の7月に、農業研究施設であるジェームズ・ハットン研究所との長年にわたる研究の成果が実り、「ベン・ロウワーズ(Ben Lawers)」という気候変動に強い新種の収穫をすることができました。

カシス

ワイン用ぶどう

サントリー登美の丘ワイナリーでは、地元の山梨大学と共同でワイン用ぶどうの「副梢栽培」という新しい栽培技術を導入しています。7月中旬ごろから最低気温が下がることで寒暖差が大きくなり、ぶどうの糖度が上がり成熟が進みますが、近年の温暖化の進行により成熟が進みにくいという課題に直面するようになりました。副梢栽培では、4月ごろに芽吹く新梢の先端をあえて切除し、そのあとに芽吹く脇芽を育てることにより、ぶどうの成熟開始時期を7月中旬から気温の下がり始める9月上旬ごろまで遅らせて熟期をずらして、11月中旬ごろに収穫できるようにする栽培方法です。
このほかにも、ぶどう畑で使用する農薬や肥料を最小限にすることで、土壌に微生物や益虫が増え病害虫が減る好サイクルが生まれ、生物多様性に富む豊かな土質となる「草生栽培」や、剪定した枝を炭化して土壌に混ぜ込み炭素を貯留する「4パーミル・イニシアチブ」と呼ばれる取り組みなどを行っています。

  • ワイン用ぶどう
  • ワイン用ぶどう

原料の取り組みの詳細は「サステナブル調達」をご覧ください