サントリー ワイン スクエア

“ワンス アポン ア タイム”・・・か?

4月は平年を2.4℃上回り、晴天の多い好天に恵まれました。しかし30年振りの厳しい寒波となった今冬のインパクトは大きく、萌芽の遅れを取り戻すまでには至っていません。5月に入っても寒波が居座り、生育の遅れはむしろ進んでいるように見受けられます。巷では、4月下旬に空の便をパニックに陥れたアイスランドの噴火が今後も継続し、火山灰が日差しを遮る事で冷夏になる可能性が高いとの噂がまことしやかに囁かれています。

ぐずつく天候を横目に、ヴィンテージ2009のプリマーには一段と熱気がこもってきました。3月最終週に恒例のユニオン・デ・グランクリュ主催のプリマー試飲会が開催され、今年は前評判の高いヴィンテージということもあり、世界中からの業界人約5,000人が集い期待以上の盛況となりました。特に中国からの訪問者の急増には目を見張るものがあります。

そして、注目のパーカー・ノート(※1)が4月28日に公表され、一気にボルテージが上がりました。すなわち、一級、およびグランクリュ上位のシャトーは軒並みヴィンテージ2005と同等、もしくはそれを上回る評点となっています。メドックでは9シャトー、右岸では8シャトーが100点の可能性有との評価を得て、最終的には右岸の2シャトーのみが100点であった2005年よりもスケールの大きなヴィンテージと評価された事は間違いありません。パーカーは、総括のタイトルを ONCE UPON A TIME  (1899,1929,1949,1959,2009) と付けた上で、『2009年は2005年ほど均質な年ではないが、上位シャトーの品質は、自分がボルドーをカバーしてきた32年の経験の中で体験した事のないレベルと断言する。特にメドック、グラーヴのカベルネの出来は信じがたい高みにある。1982年以来のエポックメイキングな年となると予想される。』と述べています。

価格に関しても言及し、トップシャトーの価格は経済危機とは関係なく、とんでもない価格となる可能性に触れています。特に、アメリカがヴィンテージ1982を境にプリマー購入の主役になった過去と照らし合わせ、これまでプリマーを買っていない中国が2009を境に主要バイヤーと成り得る可能性に言及しているあたりは、なかなか鋭い視点と思います。
これによりヴィンテージ2009の価格の大幅上昇は確約されたと言っても過言ではないと思われますが、各シャトーは他シャトーの動きを見る傾向がますます強まり、プリマーの山場はVINEXPO香港が終了する6月以降に持ち越される可能性が高まりました。

さて今日は、ワインとは関係ありませんが、フランスらしいある出来事をひとつご披露したいと思います。それは先日の晩、夜の10時ごろの事でした。以前住んでいたアパートの契約期間が切れ、4月上旬に転居したばかりのボルドーの自宅リビングで寛いでいると、庭への出入り口でもある窓の外で、窓をカツカツ、カリカリと叩く異様な音が聞こえました。まさか、泥棒・・・? 転居先を探すにあたっては、ボルドーでは空き巣が多く治安に若干問題がある事を考慮し、一軒家でも庭の全面が高い塀で囲われた物件を見つけ、これならばと決めた物件でした。従って、よもや泥棒が来たとも思われず、何だろう?と怪訝に思っていると、真っ先に様子を見にいった長男が、『あっ! エリソンだー!!』と叫ぶではありませんか。エリソン(ハリネズミ)は欧州では比較的街中でも確認される事が多いと聞いていたものの、まさかボルドーの街中で、しかも自宅の庭で対面する事になろうとは思いもせず、びっくり。子供達が興奮して大騒ぎになったのはもちろんですが、エリソンが人間をまったく警戒してないことも驚きでした。
更なる驚きは、翌日に大胆にもまだ明るいうちからやって来て、子供たちが触っても涼しい顔。そして夜には再びガラスをノックしにやって来て、家内がチーズを置くとおいしそうに残さず食べてしまいました。辞典によると、通常ミミズなどを食べるとあったのですが・・・うーん、さすがフランスのエリソン! 今度はラグランジュの09年でもマリアージュさせて、ワインの出来でも聞いてみましょうか(笑)。

初訪問の夜に庭側の窓下で、靴の間にうずくまるエリソン。
初訪問の夜に庭側の窓下で、靴の間にうずくまるエリソン。
夜行性のくせに明るいうちに現れ、子供に触られても涼しい顔。
夜行性のくせに明るいうちに現れ、子供に触られても涼しい顔。
接写もOKです・・・
接写もOKです・・・

※1:多くのワイン愛好家に大きな影響を与えると言われているワイン評論家、ロバート・パーカー氏の評価のこと。