サントリー ワイン スクエア

相次ぐ暴風雨

昨年9月より世界中が巻き込まれた経済危機の嵐が落ち着く間もなく、フランス南西部は1月末に、本物のすさまじい暴風雨に襲われました。1月23日未明より24日にかけてフランス南西部とスペイン北部を襲った暴風雨は、15人の犠牲者と、170万戸以上の家庭での停電を引き起こしました。まだ最終損害は確定していませんが、保険業界は1,600億円におよぶ保険金支払いを想定しているようです。バニエル農業・漁業相によれば、暴風雨の被害は、88人の死者を出した99年の暴風雨以来のものとの事ですが、ボルドーからスペインの国境まで広がるランド地方の林業被害は99年時を遥かに上回り、極端なところでは70%以上が薙ぎ倒された松林もあるようです。3日後に撮影された航空写真が地元紙に掲載されました。ご参考までにご覧ください。航空写真なので実感が伝わりにくいかと思いますが、薙ぎ倒されている松の木の高さは優に20mを越える立派な成木です。各地の電線が切断されたランド地方では、停電がすべて回復したのは、二週間後という凄まじさでした。

メドックは壊滅的被害を受けた99年に比べると、幾分ましとはいうものの、被害は相当なものです。ラグランジュでは樽熟庫の瓦が飛ばされたり、シャトーのエントランス上部の雨樋トタンが剥がされる被害が出ました。さらにシャトー北門に隣接していた推定樹齢200年の大木が倒れたのですが、運が良かったのは、倒れた方向が守衛塔の左へ5mほどズレた事です。直撃していれば、守衛塔は完全に倒壊していたでしょう。99年の暴風雨では、ラグランジュのシャトー西側にあった大木が倒れシャトーの館部分を直撃、2階の一部屋が倒壊した苦い経験があります。今回は運良く大被害は免れたものの、今回も自然の力に改めて畏敬の念を感じずにはいられませんでした。

嵐からの復旧が進む中、2月6日にラグランジュでは、小さな明るいイベントが行なわれました。昨年春に開始した新テイスティングルーム増築の竣工式です。これはビジター受け入れのフレキシビリティを高める目的で、既存のテイスティングルームを増築したものです。これまでは希望予約時間が重なった場合、残念ながら見学をお断りせざるを得ない場合も多々あったのですが、今後は柔軟な対応が可能になると期待しています。何よりも、ボルドーから更に50kmも離れた地まで足を延ばしてくださるラグランジュファンの方を、ひとりでも多く受け入れられるようになる事に喜びを感じます。

既存の伝統的様式のテイスティングルームは主にプロフェッショナル用に、そして伝統に近代的な雰囲気を融合させた新テイスティングルームは主に愛好家の方のご案内に使う予定です。ぜひご訪問の機会を作り、醸造設備の進化と併せ、新しいステージに入ったラグランジュを感じて頂ければと思います。
また、まだ模索段階でいつからとは公言できませんが、ご要望の多い収穫期の訪問受入れや、週末訪問に関しても現在検討を進めております。『収穫時期は品質の造り込みに専念する』という方針を妨げない範囲で、可能な受入れ体制を模索中です。近い将来、吉報をお届けできればと考えています。

防風雨で薙倒されたランド地方の松林(Sud Ouest紙掲載の航空写真)
防風雨で薙倒されたランド地方の松林(Sud Ouest紙掲載の航空写真)
あわや守衛塔直撃のシャトー北門横の倒木。
あわや守衛塔直撃のシャトー北門横の倒木。
シャトーより撮影したシャトー北門横の倒木。
シャトーより撮影したシャトー北門横の倒木。
新テイスティングルーム。
新テイスティングルーム。
ボルドーのエノツーリズム関係者を招待した竣工式。
ボルドーのエノツーリズム関係者を招待した竣工式。