サントリー ワイン スクエア
3、4月の異常な好天により平年を2週間以上上回る早いペースで進んだ生育も、メルロが開花を始めた5月中旬よりの低温・多雨により、足踏みを始めました。その後6月に入っても冷涼で雨の多い気候が続いたことから、徐々に平年並みに近付いてきている感じがします。開花期の低温で、特にメルロで花ぶるい(※1)が懸念されましたが、心配されたほどのダメージにはなってないようです。むしろ多雨による高湿度が現在の心配の種で、摘葉、適時の薬剤散布など、きめ細かい畑の管理が要求されています。温暖化の影響が声高に言われるようになったここ数年は、特に6月の熱波が話題となってきたのですが、今年は身体にとっては楽な6月となりました。ただ、ぶどうにとっては暑い夏の日差しが待ち望まれるところです。
天候同様、今一つはっきりしなかったのが、今年のプリマーキャンペーンでした。世紀のミレジム2005のキャンペーンとなった昨年ほどの熱気がないのは当然として、どのシャトーも今年の落とし所を見つけあぐねていたというのが的を射た表現かもしれません。通常VINEXPOの開催される年には、ネゴシアンが動きにくくなるVINEXPOの時期にかからないよう、早目にオファー開始となるのですが、今年の一級、スーパー二級のシャトーは、なんとVINEXPOを過ぎ、6月末にようやくオファーを開始しました
注目の価格は、パーカー評点などにより差はあるものの、最終的には前年比で10~30%減のレンジに落ちつきました。ネゴシアン、インポーターサイドには若干物足りなさを残したキャンペーンとなったものの、現在のグランクリュものの引きの強さを考慮すれば、無難な着地だったようにも思えます。とは言え一級シャトーものの価格はとてもワイン愛好家が気軽に手を出せるレベルでないことは確かで、実際の消費者レベルでの反応がどのようなものになるのかは、2年後が気にかかるところです。
もうひとつの大きなイベントのVINEXPO 2007は、対照的に熱気に溢れたものとなりました。特筆すべきは、約5万人の参加者(前回比3%増)の3分の1が海外からの参加者となった事で、特にアジアからの増加が目立ちました。中国400人(前回比3倍)、香港150人(前回比2倍)以外にも、韓国350人、ロシア500人などが大きな伸びを牽引しました。日本からは350人で、これはほぼ前回と同じレベルでした。今回のもう一つの話題の中心となったマーケティング・コンファレンス会場は、前回の6,000人を大きく上回る8,000人を集めることに成功しました。VINEXPO本会場前の湖対岸に位置する会場まで、特設した湖上歩道を歩いてアクセスできるようにしたことも、話題作りとして成功したように思います。
私も2つのコンファレンスに参加しました。ひとつは、ワインのネット販売サイトのランキングに関するもので、もうひとつはボルドーワインの新興市場での現状に関するものです。質疑で盛り上がるというほどではありませんでしたが、様々な国からの参加者が、熱心に聞き入っている姿勢が印象的でした。
次回のボルドーでのVINEXPOは2年後ですが、来年5月には香港でのVINEXPOが計画されており、アジアでの盛り上がりを更に後押しすることが期待されています。
椎名敬一
ぶどう栽培研究室、ガイゼンハイム大学留学、ロバート・ヴァイル醸造所勤務、ワイン研究室、原料部、ワイン生産部課長を経て、2004年6月よりシャトー ラグランジュ副社長。2005年3月より同シャトー副会長。