このチーズに合うワイン

今回のテイスティング会では、入荷したてのフレッシュな「ペラルドン」を用意しました。真っ白で薄い表皮には皺が寄り、その切り口からはクリームが溶け出して、見るからにそそられます。
「わぁ~とろとろ!」と女性陣から歓声が上がりました。
「シェーヴルは酸がしっかりしているものだと思っていましたが、これはちょっと違いますね。口当たりはマイルドで、味わいはとても濃厚。」
そう、南仏産シェーヴルは一般的に酸がまろやかでクリーミーな生地が特徴です。一方、シェーヴルと言えばフランスのロワール川流域が有名で、若い熟成の、目が覚める様な酸味とホロっと崩れ易い組織に慣れていると、「ペラルドン」を食べて「これ本当にシェーヴル?!」と驚いてしまうのも無理はありません。

合わせるワインも酸味が控えめな、同郷ラングドック コルビエール地区のシャルドネ「オーシエール ブラン」が選ばれました。かの有名なボルドー メドック格付け一級「シャトー ラフィット ロートシルト」を所有するドメーヌ バロン ド ロートシルト社が南仏ラングドックで作るヴァンドペイ(地酒)です。

遥かローマ時代から続くこの「オーシエール」のブドウ畑は、長い歴史の中で様々な人の手に渡ってきました。中世は修道院の持ち物となり、修道院の自給自足を賄う「シトー派の農場」として機能。フランス革命後に教会の持ち物が没収され、ナポレオン皇帝の私有地を管理していたダリュ伯爵が競り落とし、ワイン造りは徐々に活気を取り戻します。しかし1950年代以降、ラングドックはブドウの集約栽培による量産重視の安価ワインが氾濫して評判を落とし多くの生産者が衰退していきました。その後、この地方は品質重視のワイン造りへと向かいます。「オーシエール」は、自然のままの活力溢れる土地の可能性を見込んだドメーヌ バロン ド ロートシルト社によって1999年に買い取られ、大規模な改修事業、品質改善を経てラングドック復旧の先駆けとなるほどに生まれ変わったのです。

この「オーシエール ブラン」に使用されるシャルドネは、オーシエールの畑の中で一番冷涼な、僅か数ヘクタールの区画で限定生産されています。鮮やかな黄色い色調の中にわずかな緑色の光沢が見て取れます。そしてトロピカルフルーツを思わせるやわらかな果実のようなアロマとドメーヌ バロン ド ロートシルト社らしい洗練された複雑味が感じられます。「ペラルドン」と合わせると、チーズの濃厚なコクも隠れてしまう事はなく、照りつける日差しをいっぱい浴びて育ったブドウの力強さを感じさせます。お互いの個性を潰さずに引き立て合うバランスの良さは、同郷ならでは。どんなシーンでも安心出来る組み合わせですが、青空を眺めながら楽しめば、気分は地中海に飛んで行けそうです。

白ワインだけでなく、どの赤ワインとも好相性を見せてくれたのですが、中でもお試し頂きたいのはスペイン原産テンプラニーリョ100%から作られる「フレシネ ミーア」。可愛らしい響きが印象的な「Miaミーア」とは、スペイン語で“わたしのもの”という意味。豊潤でありながら、甘やかなフルーティ ボディの親しみやすい美味しさで、飲む人すべてにとって「ミーア=わたしの定番」になってほしいという思いが込められています。

「Miaミーア」を手がけている女性醸造家グロリア コレルが目指すのは、ブドウ畑でブドウをかじったようなみずみずしいワイン。そのため樽熟成はあえて行わず、熟した果実の魅力そのままのふくよかで柔らかい口当たりに仕上がっています。
チーズのトロリとした口溶けに、チェリーやプラムを思わせるワインの甘い香りが広がると、もぎ立ての完熟ブドウのようなフレッシュな果実味が一層引き立ちます。後味に残るほんのりとした甘みが心地よくて、ついついもう一口、もう一口と進んでしまいます。雨音が聞こえる部屋の中でDVD鑑賞をしつつ、梅雨のお家デートにオススメのマリアージュです。

いつも似たようなワインを飲んでいるあなた、そして気まぐれな空模様に惑わされがちなあなた、たまには気分によって選ぶワインも変えてみて下さい。心躍る新発見が、あなたを待っているはずです。

1st

オーシエール ブラン

オーシエール
ブラン

フランス
ぶどう品種 シャルドネ

南仏コルビエール地区にドメーヌ バロン ド ロートシルトが所有する「シャトー オーシエール」からのヴァンドペイ。やわらかい果実アロマをもった洗練された味わいの白ワイン。5本の矢のロゴが目印です。

2nd

 

フレシネ ミーア
(赤)

スペイン
ぶどう品種 テンプラニーリョ

深みのあるチェリーやプラムを思わせる豊かな香りと濃厚な果実味が特長。テンプラニーリョ100%で、樽熟成をあえて使用せず、熟した果実の魅力そのままのふくよかで柔らかみのあるワインです。