今回のテイスティング会では、
「コクのあるチーズなので赤がよさそう」
「チーズの持つふくよかな風味に合わせてふくよかな白も良いのでは」
と思いを馳せながらテイスティングが始まりました。
テイスティングが進むにつれ
「チーズのミルクの甘さが、ワインの果実味にあうね」
「ばっちり!の一言以外何もない」
と即決した満場一致の赤ワインが「サンタ カロリーナ メルロ レセルヴァ」でした。
「サンタ カロリーナ」は1875年、ドン・ルイス・ペレイラ・コタポス氏により南米チリの首都サンティアゴ市に創設されました。唯一フィロキセラが侵入しなかった国で、傷ひとつなく完熟したブドウの良さを生かした、エレガントで気品あふれる味わいとチリならではの手頃な価格は、国際的にも高い人気を博しています。チリの銘醸地の中でも最良の土地に約1,000haのブドウ園をもち、近代的な醸造設備と、贅沢な小樽熟成により、クリーンでしかも深みある、見事な味わいのワインを生み出し続けています。特にメルロ種のワインを得意とするメーカーでもあります。
「サンタ カロリーナ メルロ レセルヴァ」は、深みのある濃いガーネット色をしています。香りはブルーベリー、ブラックチェリーのコンポートなど濃縮した果実のようです。また、甘苦いスパイス香、木樽熟成からくるヴァニラ香、ロースト香など複雑な香りがします。味わいは第一印象は濃縮感のある果実味に加えて、ややしっかりとしたタンニンを感じます。その後、酸味とのバランスの良さを楽しめます。
チーズと合わせると、羊のミルクの甘さがワインの持つ果実味により引き立ちます。まるでチーズにブラックチェリーのジャムを添えて食べているかのような心地よさです。実際にバスク地方ではブラックチェリーが名産で、ブラックチェリーのジャムと羊のセミハードチーズを合わせるのが地元流の食べ合わせなのです。
削ったチーズとの相性も抜群でしたが、
「削り器がない場合のために、削らない状態の相性も試してみよう」
とテイスティング会のメンバーからの意見により、少し厚めにカットした「プティ・アグール」とワインを合わせてみることにしました。
厚めにカットするとより羊の甘さやコクが強く感じられ、ワインのコクと合い、
「チーズとワインの強さ、ふくよかさの相性が良いね」
「カットの仕方、厚さが変わっても楽しめるね」
という声があがりました。
「プティ・アグール」は、どのような切り方でも「サンタ カロリーナ メルロ レセルヴァ」とは、おすすめのマリアージュとなりました。
もう1本、テイスティング会のメンバーが選んだおすすめのワインは「オーシエール ブラン」です。
このワインは、早くから世界中でワイン造りを行っていたフランスの名門「シャトーラフィット・ロートシルト」が、フランスでも新しい可能性を見つけようと、ボルドー以外のフランス国内としては初めて、南仏ラングドックに所有した「シャトー・オーシエール」で造られました。カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロなどをつかった赤ワインが中心の中、ごく少量だけ白ワインを造っており、その1つがシャルドネ種100%で造られるヴァン・ド・ペイ「オーシエール ブラン」なのです。ラベルに書かれた「A」の文字は、オーシエール(Aussieres)の頭文字であり、コンパスと定規で理想的な文字バランスを追求した16世紀の学者ジョフロワ・トリーの字体を用いています。シャトーにおける厳格さ、ワインのバランスとエレガンスを表現しているのです。
「オーシエール ブラン」の色合いは輝き透明感のあるグリーンがかった鮮やかな麦わら色。香りは瑞々しく、ライムおよび金柑などの柑橘果実を連想させ、華やかです。口当たりは微かに発泡があり活き活きとしています。その後、優しさとしなやかさを帯びていき、しっかりとしたバランスに支えられた粘度と酸味を感じます。
今回テイスティングしたビンテージは2010年です。ラフィットがオーシエールを買収した1999年から10年以上の月日が流れました。荒廃したブドウ畑にラフィットが厳選して植えたブドウの樹も、年を重ねながら成長しています。テイスティング会のメンバーからは
「2007年のビンテージでは、ブドウの樹も若く、発展途上の印象だったのが、さらに3年という月日を重ねたことで、厚みや複雑さが付け加わり味わいに奥行きが感じられるようになった。今後がますます楽しみな生産者ですね。」
という声があがりました。
「オーシエール ブラン」で削った「プティ・アグール」を合わせると、厚く切った時よりも全体の風味が優しくなったチーズの塩味や旨みが、ワインの優しくしなやかな風味と調和します。花びらのように薄いので、口のなかで、はらはらとほどけます。そしてワインの柔らか味と、ふくよかさと酸味とで、まるでチーズを包み込むような優しく心地良いマリアージュが楽しめました。
今回は、1つのチーズでカットや削り方により変わる印象の違いに合わせて、ワインを選ぶという今までにないテイスティング会になりました。
同じチーズを2度3度楽しみたい方にはおすすめのマリアージュです。是非お試しください。