サントリー ワイン スクエア

つくり手とテイスティングして(塩尻編)

2024.05.20記事: 岩田渉(アンバサダー)

(写真左から、塩尻ワイナリー長 齋藤卓、登美の丘ワイナリー栽培技師長 大山弘平、筆者、登美の丘ワイナリー醸造技師長 宮井孝之)
皆様、こんにちは!サントリーワイン・ブランドアンバサダーのソムリエ 岩田です。
ゴールデンウィークも終わり、岩田が住んでいる京都の街も少しだけ観光客の数も減り、穏やかな日常が戻ってきました。実はまだまだ観光客の皆様で賑わう4月の上旬、数年ぶりにサントリー塩尻ワイナリーに訪問して参りました。今回の訪問の目的は、2022年9月よりサントリー日本ワインのブランドが再構築された後、改めて「FROM FARM」の取組みを自身で体験したく、畑やワイナリーを訪問、つくり手の皆様と話をし、そしてその取り組みからうまれたワインを一緒にテイスティングすることで、その魅力を再認識することでした。

 当日は小雨が降るまだ肌寒い時期でしたが、まずはワイナリーに到着するとともに、畑の方へ足を運びました。塩尻といえば、サントリー日本ワインのフラッグシップの1つである「岩垂原メルロ」がつくられる畑があります。ぶどう栽培農家のおひとりである山本さんの畑で2021年にぶどうを収穫した以来の畑見学でしたので、たくさんの変化や気づきが得られました。
 岩垂原、そして塩尻メルロともに、そのクオリティをいかに引き上げるか、そしてその土地の個性をどのようにワインに反映させるか、それらを体現させるためのアプローチを塩尻ワイナリーの齋藤所長と畑を回りながら、そしてワインをテイスティングしながら教えていただきました。

当日は大雨だったため、収穫時期の岩垂原メルロの写真を

例えば従来であれば棚の仕立てで栽培していたメルロを垣根仕立てでも栽培するようになり、どのような品質のぶどうが得られるのかのトライアルをしていました。実際その畑から収穫したぶどうでつくられたサンプルのワインもテイスティングさせていただきましたが、グリーンなニュアンスもなく、ジューシーな味わいが特徴的なワインでした。またもう一つ面白い取り組みが、畑での除葉の有無です。ぶどうの房の周りの葉っぱや副梢を除去するだけでなく、収穫の約1ヶ月前に雨よけトンネル内の葉を除去することで、太陽光の影響がどれくらいぶどうに影響するかを検証していました。除葉した方のぶどうからは、より甘く熟した黒系フルーツの香りが強く、凝縮したフルーツの力強いフレーバーが印象的でした。また将来病気に強いぶどう樹形成を目指した畑での有機物の投入・草生栽培の実施など、挙げればきりがないほど、以前訪れた時との大きな変化を少しの滞在の間でも知ることができました。 
 これらのアプローチはどれも栽培されているメルロの熟度向上のために行われており、岩垂原メルロも塩尻メルロも芳醇な香りと凝縮感ある味わいと共に、滑らかなメルロらしいテクスチャーが感じられるようなワインを目指すための取り組みですが、2023年のメルロのサンプルのワインをテイスティングしていると、そのアプローチがワインのスタイルにも反映されているように感じ、今後これらがより畑に浸透することで、さらなる産地、そして個々の畑の理解が進み、高い品質だけでなく、より岩垂原・塩尻らしいテロワールが詰まったワインが生まれるのではないかと思いました。

齊藤所長の解説を受けながら試飲

 この「FROM FARM」というコンセプトがワインの中にますます反映されていくのだろう、と今回の訪問で実感しました。その土地の恩恵を理解することで、ただ単純に高い品質のワインを生むだけでなく、その魅力をいかに引き出し、特別なものとしてお客様に届けていく。日本ワインのレベルも近年ますます上がってきております。美味しいワインが日本中でつくられていることは皆様もそれらのワインを飲んでいただくと実感されると思います。ただこの2023年の塩尻ワイナリーが手がけるメルロのサンプルをテイスティングした際に、ただ単純に良いワインということだけでなく、サントリーらしい「ものづくり」の精神が詰まっており、継続的な産地への理解と、緻密なワインメイキングが融合することで、より日本ワインらしい純粋さを持つともに、お客様の心も満たしてくれるような満足感の高いワインが生まれるのだと思いました。今回はその新しいコンセプトが畑にも、ものづくりにも、そしてそのワインの中にも見出すことができ、その魅力をアンバサダーとしてより多くの皆様にお届けしたいと感じた訪問となりました!
 メルロ以外に、サントリーの甲州とプティ・ヴェルドもたくさんテイスティングさせていただきましたので、それらについては次回また紹介させていただきます。

テイスティングの風景

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