この料理に合うワイン

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1st

サントリーフロムファーム 塩尻メルロ 

サントリーフロムファーム 塩尻メルロ

日本
ぶどう品種 メルロ

今回のレシピは、丸鶏のタイハーブローストチキンです。もともとはガイヤーンと呼ばれる、タイの東北地方(イサーン地方)発祥の名物焼き鳥です。ガイが鶏でヤーンは炙り焼き、という意味です。鶏一羽を特製のハーブを効かせたたれに漬け込み、腹から開いて平らにして竹箸で挟み、遠火の炭火で焼いていきます。皮がパリパリになるまで香ばしく焼かれた丸鶏は普通にローストしたチキンとは一味違いますよ。漬け汁はナンプラーとシーズニングソースに刻んだレモングラスとニンニクです。食べる時のたれはタマリンドペーストとナンプラー、ライム搾り汁に砂糖と粗挽き唐辛子、こぶみかんの葉とパクチーをいれ混ぜ合わせ、最後に炒った米をいれます。タマリンド(Tamarindus indica)は、マメ科タマリンド属の高木で最大樹高25mにもなります。熱帯アフリカ原産で、アフリカ、インド、東南アジアで広く食用に使われます。タマリンドの実は、茶色のさやのような形で、長さ12cmから15cm、直径は2cmくらいです。中に甘くてピリッと酸の効いた果肉に包まれた果実があり、その果肉が世界各地の料理に使われています。日本の普通のスーパーの棚には並んでいませんが、アジアンスーパーかネットでしたら、タマリンドペーストやエムリと呼ばれるブロック状のタマリンドを買うことが出来ます。
 さて、この丸鶏のタイハーブローストチキンにテイスティングメンバーが選んだイチオシワインはサントリーフロムファーム 塩尻メルロでした。直前の掲載記事の山賊焼きでも塩尻メルロがイチオシに選ばれておりますが、マリアージュ実験日が全然違っております。また使用した塩尻メルロのヴィンテージも山賊焼きでは2018年、丸鶏のタイハーブローストチキンでは2019年で異なっております。塩尻エリアの2018年と2019年ですが、どちらも台風に悩まされたヴィンテージです。2018年は、8月の降水量は平年の半分以下と少なく晴天が長く続いたのですが、9月に入り3度もの大型台風の直撃と連日の降雨により9月の降雨量は平年の2.4倍の降水量となりました。でも10月に入ると一転して良い天気が続きましたので、じっくりと収穫を待てた畑のぶどうは完熟し素晴らしい出来になりました。2019年は、9月の降水量は平年の1/4程度と少なく、晴天が長く続きました。しかし10月に入り、大型台風の直撃と集中豪雨により平年の2.4倍もの降水量となりました。曇った日が多く、成熟が遅れていましたが、じっくり完熟を待つ間に夜温が急激に下がり、ポリフェノールの生成が促進されました。結果的に待つ事が出来た畑のぶどうは糖度も高く、種まで完熟した良いぶどうが取れました。2018年と2019年を並べて比較すると、色は2018年の方が黒みを帯びて、やや濃い印象です。香りは2018年の方が柘植やシダを思わせる植物的な要素を多く持っていて2019年がブルーベリーなどの熟した果実を連想させる香りが多いです。口に含むと2018年の方が少し大きな構造で、2019年は素直な果実味が豊かな感じです。前回も書きましたが塩尻ワイナリーが開業したのは今から88年も前の1936年の7月です。当時爆発的に売れていた赤玉の原料ぶどうの重要な供給基地として誕生しました。その後東京オリンピックや大阪万博を契機に日本人の食の洋風化が進み、塩尻エリアは、時間をかけてメルロやマスカット・ベーリーAの一大産地に生まれ変わりました。2019年の塩尻メルロをグラスに注ぐと赤みの強いラズベリーレッドです。ブルーベリーやアメリカンチェリーなどの色の濃い果実を思わせる香りと樽由来のバニラやスモーキーで心地良い香りがします。口に含むと自然な甘みが広がり、程よいボディ感があります。中盤から後半にかけて、再び樽由来の風味が口中に漂って、長い余韻が楽しめるワインです。丸鶏のタイハーブローストチキンをたれにつけて口に入れ塩尻メルロのグラスを鼻に近づけると、こぶみかんの香りが強調されるのが判ります。
「素直に、鶏の味わいがでますね」
「皮が香ばしくて鶏の味わいが立体的になる感じがします」
「このたれが美味しいですね。スイートチリソースの方がメジャーだと思いますが、全然違う味わいです」
「このたれは、イサーン地方の炭火で焼いた鶏や豚に合わせるタレですね。炒り米はヤムというあえものにも入れますが、ヤムの場合は洗わず炒ったものを砕いて加えます。イサーン地方のたれの場合は、さっと洗ってから炒ります」
「タマリンドの酸味と独特の甘みがアクセントになっているのでしょうね」
「レモングラスやこぶみかん、パクチーに引っ張られるのでしょうか、塩尻メルロの緑の印象が前に出てくる感じがしますね」
「2019年ヴィンテージの塩尻メルロ単体だと、あまり植物的な香りはしないなぁと思っていましたが、隠し持っていたのでしょうかね」
「ソムリエ協会の田崎会長も塩尻メルロの緑のタッチは気候風土から生まれる長所だと解説される事が多いですよね」
「わたしも涼やかで、心地良い香りだと思います」
一般のスーパーだと、丸鶏はなかなか並ばないかとは思いますが、これからのシーズンは比較的多く見かけると思います。皆様も丸鶏を見つけられましたら、是非丸鶏のタイハーブローストチキンに挑戦してみてください。そしてサントリーフロムファーム 塩尻メルロとの素晴らしいマリアージュをお楽しみくださいませ。

2位に選ばれたのは、ヤルンバ エデン ヴァレー ヴィオニエ <サミュエルズ コレクション>でした。ヤルンバはオーストラリア最古の家族経営ワイナリーのひとつと言われています。アデレードから北東に約80km離れたアンガストン南東の境界にあるワイナリーです。オーストラリアで最もワイン生産量の多い南オーストラリア州の中でも、古くからワインづくりが行われていたバロッサにあります。ヤルンバのワインを語るときに忘れてはいけない方がルイーザ・ローズ です。彼女はワインメーカー兼サステナビリティ責任者を務めています。また、世界的に有名なヴィオニエ生産者として高く評価されています。ヴィオニエはフランスのコート デュ ローヌ地方で古くから栽培されていて、コンドリューなどの銘酒を生み出すぶどう品種ですが、栽培が難しい品種で、一時期は絶滅寸前までになってしまいました。でも日当たりよい畑で完熟をしたぶどうは芳醇なアロマを醸し出し、華やかな香りが特長の素晴らしい品種なのです。ルイーザはエデンヴァレーにヴィオニエを徐々に増やしていったのです。
 <サミュエルズ コレクション>はヤルンバが創業170年を祝して創業者の名を冠したラインナップとして発売しました。ヴィオニエの果汁の60%は新樽ではないフレンチオーク樽で樽発酵し、残りはステンレスタンクで発酵が行われます。ワインは澱とともに保存され、10ヶ月の間、定期的なバトナージュを行うことで、酵母の自己分解を促進し、味わいの深みがさらに増します。白桃や白百合の花、蜂蜜などを連想させる華やかな甘い香りに、白胡椒のニュアンスがあります。とろけるようなまろやかな果実味と、穏やかな酸味が特長の、ゆったりとした味わいの白ワインです。丸鶏のタイハーブローストチキンと合わせると炒り米の香ばしい香りが際立ちました。ヴィオニエの豊かな果実味とタマリンドの甘酸っぱい果実味とが共鳴して広がる、とても心地良いマリアージュでした。

2nd

ヤルンバ エデン ヴァレー ヴィオニ エ サミュエルズ コレクション 

ヤルンバ エデン ヴァレー ヴィオニ エ サミュエルズ コレクション

オーストラリア
ぶどう品種 ヴィオニエ

3位に選ばれたのは、ローラン・ペリエ ブリュット ミレジメでした。ローラン・ペリエはあまり多くの年でヴィンテージシャンパンをつくる決断をしません。平均すると他メゾンに比べて約半分の年にしか出さないのです。それは、ヴィンテージシャンパンをつくると決断した年の原酒がフラッグシップのグラン・シエクルの原酒になるからです。「アッサンブラージュした時にローラン・ペリエが考えるグラン・シエクルの味わいになるうる最良の年」の、しかも「グランクリュ畑で採れたぶどう」のみが使われるのです。
 グラスに注ぐと、きめ細かな泡がネックレスのように連なって昇っていきます。ホワイトゴールドに僅かにシャンパンゴールドを帯びた美しい色合いです。柑橘系を思わせる爽やかな香りと白桃の甘い印象もあり、複雑さを感じさせる香りです。繊細さと豊かなミネラル感がありローラン・ペリエらしい絶妙なバランスです。丸鶏のタイハーブローストチキンと合わせると、軽やかなローラン・ペリエが、ぐっと厚みを増すように感じられました。また長い瓶内二次発酵の後の熟成により生まれたトースティな香りと炒り米の香ばしい香りとが共鳴し更に、香り豊かな風味になりました。

3rd

ローラン・ペリエ ブリュット ミレジメ 

ローラン・ペリエ ブリュット ミレジメ

フランス
ぶどう品種 シャルドネ、ピノ・ノワール

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