今回のレシピは、ラープ トートです。ラープ トートは、そんなに古くからある料理ではないようです。ワインスクエアで、タイ料理をメインにご担当していただいている、タイ料理の大家である鈴木都先生が、初めてラープ トートを食べたのは、今から7~8年前の事で、タイのリゾートホテルの、海辺にあるレストランでアペリティフとして出されたそうです。炒り米のカリカリ感、噛む度に立ち上るハーブの香りも、普通のラープよりも強調されていました。「辛みも心地良い!タイライムの酸味も効いた、なんて楽しい料理なんだ!!」とびっくりされたそうです。今では、バンコクのタイ料理のレストランでも、時々見かけるようになったそうです。ドーナツのような形やコロッケのような小判形や俵形で出している店もあるようです。このラープ トートの原点とも言える料理がラープです。ラープは日本のタイ料理の店には、大抵オンメニューされていて、特に辛いものが好きな方には人気の料理ですよね。一般的なラープは、茹でた挽肉に炒り米、玉ねぎ、万能ネギやタイハーブなど和えた、辛くて酸味も効いた和え物です。ラープ味は広く愛され、スナック菓子の味付けにも利用されています。プリッツにも「ラープ味」が有ってタイ旅行土産の定番なのです。ラープの発祥の地はタイの東北地方からラオスにかけてだと言われています。本来、動物を解体したときに出る細切れや軟骨、内臓などを美味しく食べるために考案された料理だそうで、タイの東北地方では、生肉を使って、もの凄く辛く味付けにするのが一般的です。でも、これは捌いたばかりの飛び切り新鮮な肉だから出来る技です。一般的なラープは加熱バージョンです。このワインスクエアのワインと合うレシピの連載でも「ラープ(挽肉と煎り米とミントのサラダ)」のレシピで既に掲載しています。2014年の8月の発信ですので、都先生がラープ トートと出会う前のタイミングですね。
今回のラープ トートに使ったお肉は、豚の挽肉です。混ぜ合わせるのはレモングラスとこぶみかんの葉とにんにく、ホムデンですが、ホムデンはエシャロットで代替可能です。それとラープ トートの肝とも言えるタイ米ですね。タイ米はカリカリになるように煎ります。工程の写真をご参考に色よく煎ってください。挽肉を捏ねて、片栗粉、ナンプラーと砂糖を入れて更に捏ねます。先ほども述べましたが、タイでは様々な形のラープ トートが売られていますが、都先生のお奨めは、直径3cmくらいの、小さめの団子状です。これが一番カリカリを楽しめるそうです。ライムの絞り汁を掛けたら完成です。
さて、この、ラープ トートにテイスティングメンバーが選んだイチオシワインはサントリーフロムファーム 信州シンフォニーでした。この連載のマリアージュ実験では、毎回16種類のワインを準備します。料理は、料理家の先生達に5種類を実際に作っていただき、みんなでワインと合わせて試食して評価をまとめていきます。連載5回分ですので、当然イチオシに選ばれるのは5アイテムしかありません。均等に選ばれたとして、イチオシに選ばれる確率は3割ちょっとです。信州シンフォニーは、今回の取材では、先日掲載したカレイのムニエル レモンとケイパーのバターソースと、このラープ トートの2品でイチオシに選ばれた優れものなんですよ。その回でも解説しましたが、この信州シンフォニーは今年の5月に長野県限定で発売されたワインなのです。長野県以外では、サントリー登美の丘のワイナリーショップやFROM FARM Onlineshopでも購入して頂く事ができます。信州シンフォニーは「~信州の3つの産地のぶどうの個性が奏でる旋律~」をテーマに試作を繰り返して完成しました。信州の3つの産地とは、長野市のほぼ真東に17kmくらい行った所に位置する長野県高山村、松本市の西に約10kmの所にある松本梓川と、松本市の東北東約30kmにある立科町の3つの産地です。標高が高く冷涼な信州(長野県)は、高品質なワインがつくられる日本の銘醸地として知られています。高山村で標高490mから730m、松本梓川で標高700m、立科町は更に高く780mです。3つの産地で育てたぶどうから出来たワインをアッサンブラージュして、信州ならではの、涼やかな酸味と彩り豊かな香りや味わいが何層にも重なり合うハーモニーを持つ味わいを達成する事が出来ました。品種は、シャルドネが主体で56.0%、ピノ・ブラン20.3%、ソーヴィニヨン・ブラン12.6%、トレッビアーノ7.4%、アルバリーニョ1.8%、ゲヴュルツトラミネール1.2%、リースリング0.5%、ピノ・グリが0.2%です。グラスに注ぐと淡いレモンイエローです。香りは、レモンなどの柑橘系果実やパイナップル、青リンゴ、白桃など酸のある果実を想起させる香りが多様で複雑に感じられます。口当たりに果実の甘さと伸びやかできれいな酸味を感じ、その後に程良い長さの余韻に繋がります。ラープ トートと合わせるとラープ トートに混ぜ合わされた様々な素材と、信州シンフォニーという交響楽団の色々な楽器とが、それぞれに良さを発揮して共鳴している感じです。煎り米の香ばしさが心地良く強まっています。
「爽やかなライムがより一層爽やかになって涼やかに感じられます」
「レモングラスも、まさにレモンを思わせる香り立ちで、良い役割を果たしている感じです」
「こぶみかんも良いアクセントですよ。こぶみかんの充実した風味も、良く効いていて、ラープ トート単体でも柑橘の複雑さを感じます。でも、信州シンフォニーを合わせると、柑橘が和音のように、重奏感を持って、更に広がって行きます。ソーヴィニヨン・ブランの働きですかね?」
「ラープ トートは揚げ物ですが、柑橘が満載なので油っぽく感じません。揚げられて焦げた皮部分だけでなく、あちらこちらに潜んでいる煎り米もパリパリで軽やかに楽しめます」
2位3位でも解説いたしますが、このラープ トートは白ワインだけではなく、赤ワインにもスパークリングワインにも良く合う、ある意味、万能で最強のワインのおつまみです。皆様も是非一度挑戦してみてください。