この料理に合うワイン

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1st

ビオンタ アルバリーニョ 

ビオンタ アルバリーニョ

スペイン
ぶどう品種 アルバリーニョ

今回のレシピは、カオモック プー、タイ料理です。プーは蟹で、カオモックのカオはご飯、カオモックでタイ式ビリヤニの事です。なので、カオモック プーで蟹のタイ式ビリヤニです。カオモックはタイ南部のイスラムの方々から広まり、タイ全土で食べられている料理です。様々なスパイスが使われます。クミン、コリアンダーシード、シナモンスティック、クローブ、カルダモン、カー(タイの生姜)などです。本場では、タイの石臼であるクロックで叩いてパウダー状にします。一般的な日本の家庭では、クロックは無いでしょうから、フードプロセッサーや、すり鉢でパウダー状にしましょう。さて、蟹です。本場のタイでは渡り蟹系が使われることが多いと思いますが、今回は、昨年北海道の襟裳岬の西側から噴火湾にかけてのエリアで大発生し話題になったオオズワイガニが市場に、未だ有りましたので、それを使いました。あまり馴染のない名前であるオオズワイガニですが、実は1983年ころから苫小牧沖で漁獲され始め1986年と1987年にはかなりの大漁で、築地市場でも見かけた事がありました。でも1988年には、ほとんど漁獲されなくなってしまい、市場からは姿を消しました。でも、実は、皆さまは知らず知らずにオオズワイガニを召し上がっています。ロシア産やアメリカ産の大きなサイズの冷凍ズワイガニで、箱にバルダイ種と書かれている物がオオズワイガニなのです。ズワイガニは、日本近海に棲息するものだと、ケセンガニ科のズワイガニ属に属する3つの種、ズワイガニ(Chionoecetes opilioシノエセテス オピリオ)とベニズワイガニ(Chionoecetes japonicusシノエセテス ジャポニクス)とオオズワイガニ(Chionoecetes bairdiシノエセテス バイルディ なぜか市場ではバルダイ種の名前で呼ばれます)の総称です。ズワイガニの雄は、いろんな名前で呼ばれます。越前蟹や松葉蟹、間人蟹、加能ガニなどです。雌も、せいこがに、香箱蟹など、水揚げ漁港で名称が変わりますが、いずれも超高級な蟹です。他のズワイガニとわける為に本ズワイガニと呼ばれたりもします。ベニズワイガニは日本海周辺にしか生息していない蟹で富山湾が主戦場です。さて、今回使ったオオズワイガニですが、昨年から流通したものは甲幅7cmほどで小さかったですが、これは未だ幼体です。ベーリング海などで漁獲されるオオズワイガニの成体の雄は甲幅15cmくらいになります。ズワイガニの成体の雄の甲幅が10cmくらいなので、ズワイガニより大きな蟹がオオズワイガニなのです。甲羅があれば、オオズワイガニとズワイガニの見分け方は簡単です。オオズワイガニの顔を正面から見ると、眼の下にある、上唇に当たる部分がM字になっていますが、ズワイガニは一直線です。あと、オオズワイガニは甲幅が広く甲幅:甲長の比率が11:10くらいですが、ズワイガニは8:10くらいで甲長の方が長いです。でも、冷凍もののオオズワイガニは甲羅が無い事が多いですよね。慣れれば脚だけでも判別が付きます。ズワイガニの脚はすらりと長く伸びていますが、オオズワイガニは、ズワイガニの脚よりも太短い感じがします。さて、このカオモック プー(蟹のタイ式ビリヤニ)にテイスティングメンバーが選んだイチオシワインはビオンタ アルバリーニョでした。ビオンタ アルバリーニョはスペインの北西部、大西洋に面したDOリアスバイシャスで育てられたアルバリーニョ100%で醸されたワインです。DOリアスバイシャスは暑いイメージのあるスペインでは珍しく冷涼で、しかも雨の多いエリアです。リアスバイシャスの大きな町であるビーゴの年間降水量を見ると、東京よりも多いのです。しかも収穫期にしとしとと長雨が続く事も多いのです。このエリアで栽培されるアルバリーニョは、果皮が分厚く、他の欧州系品種よりも、雨による病害に比較的強いのです。果皮が分厚い分、果皮に含まれる成分が豊かで、香りも豊かになる傾向があります。リアスバイシャスのぶどう畑を歩くと、懐かしい感じがします。このエリアは雨が多いので、欧州で主流の垣根栽培ではなく棚栽培なのです。エンパラード アルタ仕立と地元で呼ぶ、この地方特産の花崗岩などを支柱にしてそこにぶどうの樹を這わせ2方向に葉を伸ばさせるやり方で栽培しています。

ビオンタ アルバリーニョをグラスに注ぐと、色は辛口の白ワインとしては、少し濃いめで、黄色に緑が少し含まれています。香りはリンゴ、それも青リンゴから黄色いリンゴ系をイメージさせる爽やかな香りと、ほんの少し、熟したピーチやマンゴーを思わせる甘い香りがあります。スワリング(グラスを回しワインと空気とを触れ合わせる動作)すると、蜜を思わせる甘いタッチが強まります。白い花を連想させる香りと少しスパイシーなタッチもあります。口に含むと辛口で、キレのある酸が豊かです。温度が上がると、柔らかみも出てきます。カオモック プー(蟹のタイ式ビリヤニ)と合わせると蟹のコクが際立ちました。

「めっちゃ、美味しいですね、それもスパイスと良くあっています」

「いままでのビオンタの合い方と違いますね。ビオンタは、もともと甲殻類とは抜群の相性でした。カオモック プーと合わせると甲殻類との絶対的な美味しさが基礎となって、その上にスパイスとの新たな調和の世界が広がっている感じです」

「異次元のマリアージュとでも言うのでしょうかね」

「ビオンタが、こんなにスパイシーな料理と上手くマリアージュするとは思ってもみませんでした」

「スパイシーな料理とだと、白ワインだとヴィオニエやゲヴュルツトラミネールなどの、もっと厚みがあって、スパイシーな要素をワインサイドに持っているワインを選びがちですが、アルバリーニョがこんなにスパイスと良くマッチするのは、わたくしにも驚きでした」

「10年以上前に、全日本最優秀ソムリエコンクールの優勝者である佐藤陽一夫妻とビオンタを訪問した時に、醸造長のロジャー・フェルナンデス氏が近所のレストランでランチをご馳走してくださいました。その時は手長海老、芝海老の半分くらいのサイズの真っ赤な海老や地元でpercebesと呼ばれるカメノテがずらりとテーブルに並び、甲殻類祭り状態でした。なかでもカメノテとビオンタが抜群に合った事を思い出しました」

「カメノテは節足動物で甲殻類、つまり海老や蟹の仲間ですからね」

「オオズワイガニも、良い出汁が出ていますね」

「もともと味噌は、たっぷりはいった蟹です。北海道で突然獲れだして、市場に出しても馴染の無い蟹ですから大安売りでしたよね。一時期は3杯で500円とかでしたよ」

「それは安い!味噌汁とかでも良いですよね」

2023年に獲れたのは幼体です。同じ群れが生き残っていれば、今年はもう少し大きなオオズワイガニが出回るかもしれません。見つけられたら是非、このカオモック プー(蟹のタイ式ビリヤニ)の事を思い出してください。そしてビオンタ アルバリーニョとの抜群の相性をお楽しみください。

2位に選ばれたのは、メゾン カステル ロゼ ダンジュでした。メゾン カステルはフランス全土のワインを手掛ける、フランスNo.1ワインメーカー※、カステル社の最新ブランドです。厳選したぶどうを、伝統的な手法をメインに用いる事で産地の魅力を引き出しつつ、カステル社のノウハウを結集し現代のトレンドに合わせたモダンな味わいに仕上げています。筆者がワインの仕事についた1980年代では、フランスのロゼと言えばローヌのタヴェル ロゼかロワールのアンジュ ロゼでした。プロヴァンスがロゼで脚光を浴びるのはそれよりも後の事です。アンジュ地区のロゼであるロゼ ダンジュは、豊かなアロマを抽出するマセラシオン法で作ります。発酵中のワインに果皮を漬け込むやり方です。そこにカステルの培った技術で、現代のトレンドに合わせて味わいの方向性を調整します。そうする事によって、キュートでアロマティックなロゼが完成しました。

綺麗なピンク色の外観です。いちごやラズベリーのコンポートを連想させる甘い赤の果実の香りに、ピンクの花やはちみつのタッチがあります。フレッシュな果実感と、ハリのある酸味が特長の、軽やかな味わいのロゼワインです。カオモック プーと合わせると、僅かに感じていたワインの甘さが消えて、ワインが、より辛口に感じられました。蟹の旨味が伸びやかに広がり、スパイシーさが織り重ねられた複雑な香りとじんわりとした辛さで囃し立てる・・・・・それをロゼ ダンジュのしみじみとした美味しさが下支えしています。先月のみそだまり焼き豚の時にもこのロゼ ダンジュはベスト3に選ばれていましたが、合い方が全く違っていました。焼き豚の時には甘さの共鳴のような感じでロゼ ダンジュの甘さ感も前面に出てきていましたが、カオモック プーの時には甘さ感は隠れて、でも、とっても美味しいマリアージュでした。同じワインでも、料理によって魅力の出方や、美味しさの表情が違うのはとっても面白い事だと思いました。


※フランス企業で2021年売上数量が最大(IWSR2022)

2nd

メゾン カステル ロゼ ダンジュ 

メゾン カステル ロゼ ダンジュ

フランス
ぶどう品種 グロロー

3位に選ばれたのはラ マンチャ デ ビエント (赤)でした。ラ マンチャ デ ビエント (赤)はフレシネグループがスペインの中央部であるラマンチャで醸しているスティルワインです。スペイン固有品種であるモナストレルをメインに、シラーをブレンドした果実の風味豊かなバランスの良い味わいのワインです。ビエントはスペイン語で風車です。ラベルをご覧頂くとお分かり頂けると思いますが、スペインの小説「ドン キホーテ」の1シーンをイメージしたワインなのです。ドン キホーテはラマンチャを舞台にした、ロバに乗って風車に戦いを挑むなど冒険の旅に出かける物語なのです。

木イチゴやラズベリーなどを思わせるまろやかな果実味です。スパイシーでありながら、口に含むと優しい舌触りとタンニンのキメ細かさが感じられるバランスのよい味わいです。蟹の味噌の風味とラ マンチャ デ ビエントの果実味が良くマッチしていました。ラ マンチャ デ ビエントに、明らかに感じられるスパイシーさがカオモック プーの様々なスパイスと強調しあって、より一層スパイシーな料理に感じられました。イベリア半島はレコンキスタの前はイスラム教徒に支配されていました。イベリア半島の食文化にはイスラムの影響が勿論色濃く残っています。また、ビリヤニもムスリムに起源を持つ料理です。タイとスペインは、遠く離れていますが同じ文化の影響を感じたマリアージュでした。

3rd

ラ マンチャ デ ビエント 赤 

ラ マンチャ デ ビエント 赤

スペイン
ぶどう品種 シラー、モナストレル

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