今回のレシピは、そら豆とひよこ豆のファラフェルです。ファラフェルは中東で広く食べられてきた料理で、現在では世界中に広がっています。基本的には、ひよこ豆やそら豆で作るコロッケです。発祥には諸説あり、はっきりしないのですが、エジプト説が若干有力な気がします。豆の使い方が国々で違い、エジプトでは、皮を剥いたそら豆を乾燥したものを、一晩水で戻して使います。イエメンやパレスチナではひよこ豆だけのファラフェルが多く、シリアやイラク、レバノンではそら豆とひよこ豆を半分半分で使う事が多いようです。ファラフェルは、そのままでも食べますが、何かで巻いたり、パンに挟んだりして食べます。小さいUFOのようなピタパンに野菜と一緒に詰められたり、アラビックパンに巻かれたり、コッペパンに挟まれて、ホットドックの様に食べられたり、イラクではサンムーンというひし形のパンに詰められたりします。欧米のファストフード店ではトルティーヤで巻かれて提供されることも多いです。ソースはタヒニソース(英語表記ではTahini)と呼ばれる胡麻とヨーグルトのソースをかけます。実は、この原稿を書いている場所はボルドー市内です。毎年訪問している「ユニオン デ グランクリュ ボルドーテイスティング」で今回は2023年ヴィンテージのテイスティング会が開かれたので、その為に滞在しています。ボルドー在住の方に、ワインスクエアの料理とワインのページでファラフェルの記事を書く事になっている事を伝えると「正に、Le Falafelという店がありますよ」と教えてくださいましたので早速訪問しました。このお店のファラフェルは、今回のマリアージュ実験の時に作ったような真ん丸では無く、ひしゃげたUFOのような形をしていました。作っているところが見えたのですが、そら豆とひよこ豆を潰して作った緑色と黄色の中間の色をした生地を平らに広げて、ステンレス製のファラフェル成形器を押し当てて、太鼓焼きのような短い円柱形の物を沢山作ってから、少し角を取るように手で丸めて、次々に油に落としていました。お店の方にソースの発音を教えてもらうと、わたくしにはタヒナニに聞こえました。このお店ではアラビックパンにファラフェルを4個、それにバジルと紅で染めた蕪の酢漬け、胡瓜の酢漬けなどを添えて巻いてくれました。
今回のマリアージュ実験の為に鈴木薫先生が作ってくれたファラフェルは、シリアやイラク、レバノンで主流のそら豆とひよこ豆を半々で使うバージョンです。このそら豆とひよこ豆のファラフェルにテイスティングメンバーが選んだイチオシワインはタヴェルネッロ オルガニコ スプマンテでした。タヴェルネッロは1983年に発売され、40年余り愛され続けている「小さな居酒屋」を意味する国民的ワインブランドです。イタリア国内販売量 No.1※1、イタリアワインブランドで販売量世界No.1!※2、世界中で親しまれているイタリアワインです。このタヴェルネッロをつくっているカヴィロ社は「世界基準の循環型エコノミー」で「エクオリタス(サステナブル認証) ※3」を取得しています。タヴェルネッロ オルガニコ スプマンテは、そのタヴェルネッロブランドのオーガニックのスパークリングワインです。オルガニコ スプマンテのぶどう品種はトレッビアーノが70%とペコリーノ30%です。トレッビアーノは世界各地で栽培されている白ワイン用ぶどう品種で、イタリアではトレッビアーノですが、フランスではユニ・ブランやサンテミリオンと呼ばれ、コニャックやアルマニャック、スパークリングワインなどに使われます。イタリアでは14世紀頃から栽培されているようです。異名やクローン違いが多くあり、DOCで使用が許可されているトレッビアーノ 〇〇という名前だけで7つも確認できます。栽培面積が広いのはトレッビアーノ トスカーノやトレッビアーノ ロマニョーロです。イタリアでは現在の白ワイン用ぶどう品種で最も栽培面積が広いのは、グレーラというのが一般的認識ですが、トレッビアーノ トスカーノとトレッビアーノ ロマニョーロの栽培面積を足し合わせるだけで、グレーラよりも広いので、実質的にトレッビアーノが、白ワイン用ぶどう品種で最も栽培面積が広い品種になります。酸味が強くなる傾向があり、フルーティーで、柑橘系などのさわやかな風味があります。ただ、収量制限などをしても、凝縮感はそれほどあがらないで、超高級ワインになる事は少ないのですが、すっきりとした、飲み飽きしないタイプのワインとして愛されています。一方、ペコリーノはイタリアをブーツに例えた時のふくらはぎから足首にかけたアドリア海沿岸のマルケ州とアブルッツォ州で主に栽培されています。ペコリーノ(Pecorino)は羊から作るチーズの事です。イタリア語で羊を意味するペコラ(pecora)に由来していると言われます。ぶどう品種に、何故ペコリーノと名付けられたのかは諸説あるようですが、皮が薄い品種なので羊飼いが好んで食べていたからだ、とも言われています。ペコリーノは、2011年にDOCだったオフィーダ(Offida)がDOCGに昇格した頃から、有名になった品種です。酸が豊かで、洋梨やメロンのニュアンスを持つ事もあります。ハーブやスパイスを連想させる香りもある、リッチなワインになりうる品種です。グラスに注ぐと、淡いレモン色で僅かに金色を帯びています。泡立ちはきめ細かく、心地良い柑橘や洋梨を連想させる、程良い香りが立ち昇ります。口に含むと、辛口ながら、ふんわりとした甘やかさと、まろやかな酸味のバランスの良さが光ります。フレッシュで親しみやすい味わいのスパークリングワインです。
そら豆とひよこ豆のファラフェルと合わせると、カリッと揚がったファラフェルと、ぷちぷち弾けるスパークリングは抜群の相性です。
「泡と揚げ物は鉄板ですね」
「ファラフェルって、ひよこ豆だけで作るとぼそぼそとした口当たりになり易いですが、このファラフェルは、滑らかさがありますね」
「そら豆をいれると、滑らかさが出ます」
「様々なスパイスが効いていますね」
「コリアンダーやクミン、チリパウダーなどが入っていて、中東の雰囲気を醸しだしていますね」
「タヴェルネッロ オルガニコ スプマンテと合わせると、ワイン単体でテイスティングした時には余り明確には認識していないスパイシーさがくっきりと判ります」
「ペコリーノが隠し持っているスパイシーな要素がファラフェルに使われているスパイスと共鳴して、顔をのぞかせている感じですね」
「オルガニコの自然な酸味とも良く合っています」
皆様も、そら豆の出盛りの季節には、是非このそら豆とひよこ豆のファラフェルの事を思い出してください。そしてタヴェルネッロ オルガニコ スプマンテとの鉄板とも言えるマリアージュをお楽しみください。
※1 シンフォニーIRIグループ 2022年12月報告データ(イタリアスーパーマーケット 100平方M以上の規模における)
※2 The IMPACT DATABANK 2021 EDITION に基づく
※3 2020年サステナブル認証Equalitas取得