今回のレシピは、タルトフランベです。タルトフランベ(フラムキッシュ)はフランス語でタルトフランベ:Tarte Flambée、ドイツ語でフラムクーヘン:Flammkuchenアルザス語ではフラムクーヘ:Flammekuecheです。
フランス語のタルトフランベの名前には「フランベ」の部分があります。普通フランス料理でフランベというと、例えば、ステーキを焼く時に、フライパンの上の肉に、コニャックなどを注ぎかけて火をつける技法です。でもこのタルトフランベには、その燃やす工程はありません。どちらかと言うとアルザス語のフラムクーヘのフラム(炎)、クーヘ(パイ生地を焼いたもの)を直訳してフランス語に置き換えた感じなのだと思います。フラムキッシュの形なのですが、だいたい四角です。ピザやキッシュロレーヌなどは丸い形をしていますよね。アルザスのワイン生産者の方から「フラムキッシュが四角なのはこう言う訳なんだよ」、と教えてもらった事があります。「昔むかしのこのエリアのパン屋さんは毎日パンを焼く訳ではなかったんだ。限られたパンを焼く日の最後の生地を薄く延ばしてフラムキッシュを焼くのが、ご馳走だったんだよ。バケットなどを何本も一度に焼く大きな釜に、大きなへらの上に大きく伸ばしたフラムキッシュを載せて、釜に差し入れて焼いたんだよ。大きなフラムキッシュを縦横に切り分けられたので、フラムキッシュは四角い形をしているんだよ」
アルザスでは伝統的に、タルトフランベは指で丸めて食べるそうです。レシピには、乗せる具材としてパンチェッタ細切りと書かれております。パンチェッタ(pancetta)はイタリア語でバラ肉の事です。日本では、通常バラ肉の加工品である塩蔵のバラ肉の事をパンチェッタと呼んでいます。バラ肉を塩漬けした加工品にはパンチェッタとベーコンがありますが、ベーコンは燻蒸で仕上げますが、パンチェッタは燻蒸しません。燻蒸には殺菌効果もあるので、燻さないパンチェッタの保存性を高める為に、ベーコンよりも強めの塩で塩蔵してある事が多いです。豚バラ肉の塩蔵品をフランス語ではラルド(lard)と呼びますが、豚脂のラードと同じ言葉で呼ぶのですね。今回、生地は、強力粉と薄力粉を半々で使います。白ワインと水とオリーブオイル、塩少しで捏ねていきます。具材はシンプルにフロマージュブランとパンチェッタと玉ねぎの薄切りです。250℃に温めたオーブンかトースターで10~15分ほど焼けば出来上がりです。このタルトフランベにテイスティングメンバーが選んだイチオシワインは、ウィリアム フェーブル シャブリでした。ウィリアム フェーブルの前身であるワイナリーは、今から250年前に創業されました。1959年にウィリアム フェーブル氏が、家族経営のワイナリーを引き継ぎドメーヌ ウィリアム フェーブルが誕生しました。その、65年後の2024年1月からDBR ラフィット ファミリーの一員となりました。ドメーヌ ウィリアム フェーブルではいち早くサステナブル活動も行っています。2000年以来50haの敷地で有機農業に転換しました。2010年にはすべてのプルミエ クリュとグラン クリュでビオディナミのぶどう栽培を行っている先駆者なのです。2014年には、シャブリで初めてHVE認証を取得しました。
セラーマスターのディディエ セギエ氏がチームの指揮者とし徹底的な品質管理をしています。契約栽培農家の栽培方法にも深く関与し、広大な村名シャブリでは機械収穫が一般的なのですがウィリアム フェーブルでは小さなプラスチックの箱での手摘み収穫を徹底しています。
グラスに注ぐと淡いレモンイエローです。グラスからは清々しい柑橘類を思わせる香りと、土壌を感じさせるスモーキーな香り。くっきりと涼やかな酸。ミネラル感豊かで、繊細な辛口ながらうまみを感じる味わいです。余韻が長く、つい、もう1杯飲みたくなる深い味わいです。タルトフランベと合わせると、シャブリのミネラル感が一層くっきりと感じられました。
「安心のマリアージュですね」
「タルトフランベが素朴な味わいでピュアなので、繊細なシャブリと良く合っています」
「素直な味わいの生地が、シャブリでほどけて優しく広がりますよね」
「その麦の味わいにフロマージュブランの優しい乳的な旨みが味わいを広げます。そこにキレの有るシャブリの酸が後からやってきて丁度良い、素材の甘さと酸のバランスになる感じです」
「玉ねぎの甘さも良い仕事をしていますよね」
皆様もタルトフランベに挑戦してみてください。生地から作っても、そんなに難しくありません。そしてウィリアム フェーブル シャブリとの素敵なマリアージュを、お楽しみください。