今回のレシピは、ゴーヤ肉詰めフライです。タイ料理の大家である鈴木都先生のオリジナルレシピです。タイ料理には、ゴーヤに挽肉を詰めて、スープで煮こんである、ゲーンジュー マラ スッサイという伝統的な料理があるのですが、そこから発想したフライだそうです。元の料理のゲーンジュー マラ スッサイのゲーンジューは澄んだスープ、マラはゴーヤです。スッサイは、中に入れるや、はいった、といった意味ですが料理用語としては、詰め物をしたというニュアンスで使われます。
ゴーヤは標準和名ではツルレイシ、漢字だと蔓荔枝です。苦瓜と呼ばれる事もありますが、ゴーヤと言われる方が、あのイボイボで緑色の姿が頭に浮かびやすいですよね。ウリ科、ツルレイシ属の植物で、一般的に食用にされる、イボイボで緑色のゴーヤは、完熟前の未熟果なのです。和名の通り、蔓が伸びる植物で、窓を覆うように這わせて、日よけにしたりもします。育てた事のある方ならお判りかと思いますが、イボイボで緑色のゴーヤは熟していくと、黄色からオレンジ色を帯びてきて、完熟するとぱっくりと裂けます。そして、中から赤いゼリーに包まれた種が顔をのぞかせます。このゼリー状のものは仮種皮と言われるもので、赤くて良く目立ちます。この仮種皮を目立たせる事はゴーヤの高等戦術なのですよ。ゼリー状の仮種皮は、大変甘いので、鳥の大好物です。中の堅い種は消化されずに糞として排泄されます。それで生息地域を拡大しようという戦術です。ゼリー状の仮種皮の食感がライチの果肉に似ているので標準和名に荔枝=ライチの名前が与えられています。仮種皮の種は、薄茶色で、種の表面は滑らかでは無くて、緑のゴーヤのイボイボを思わせるぶつぶつがあって可愛いです。ゴーヤが日本に伝わった時期は正確には判っていませんが、文献には400年近く前から記載されています。ただ、江戸でも栽培は、されてはいたようですが、あの苦味が受け入れ辛かったようで、あまり拡大しませんでした。一方沖縄から南九州では広く栽培されたようです。実際に食べてみると、沖縄のゴーヤは、東京の家庭菜園で育てたゴーヤよりも苦みが少ない気がします。ゴーヤが全国区になったのは、NHKの朝のドラマで沖縄が舞台になった頃からではないでしょうか?ゴーヤーマンという可愛らしいキャラクターも登場し、ゴーヤの認知拡大に一役買ったのは間違いありません。あのゴーヤーマンは、一時期消えかかったのですが、最近、人気が再燃しているようで、沖縄のお土産物屋さんに沢山並んでいます。
ゴーヤの都道府県別生産量は、農林水産省統計によると、2020年では沖縄県で40%、宮崎県で15%で鹿児島県、群馬県と続きます。沖縄では、ゴーヤーマンの様にゴーヤーと後ろを伸ばして発音する事が多いです。
今回は、そのゴーヤに豚挽肉を詰めてフライにします。スイートチリソースも簡単ですので、自家製で作りましょう。市販のものよりも、自分好みの甘さに調整できますので、使い勝手が良いですよ。ゴーヤは1センチ幅くらいの輪切りにして、中のわたと種を取り除きます。豚挽き肉の味付けには、ナンプラーとシーズニングソースを使います。スイートチリソースは鍋に酢、水、砂糖、塩、にんにくを入れ、中火にかけ、とろりとするまで煮詰めます。砂糖は、ご自分の好みで調整してください。
さて、このゴーヤ肉詰めフライ 自家製スイートチリソースにテイスティングメンバーが選んだイチオシは、フレシネ イタリアン ロゼでした。フレシネ イタリアン ロゼはとても素敵なボトルです。光が当たって煌めくダイヤモンドカットのボトルに、淡いサーモンピンクのロゼスパークリングワインが詰められていますから、うっとりするような美しさです。ぶどう品種はグレーラ(プロセッコに使われる品種)とピノ・ノワールです。グラスに注ぐと、輝くロゼカラーの中を、細かい泡が次々と昇っていきます。グラスからは赤い果実や白い花、熟したリンゴを思わせるエレガントな香りがふわりと広がります。口に含むと、フルーティな味わいが、軽やかな泡とともに溶け合い、余韻を楽しむことが出来ます。ぶどうのたっぷりとした果実味と軽やかな酸が調和した、爽やかな、やや辛口の味わいです。ゴーヤ肉詰めフライ 自家製スイートチリソースと合わせると、他のワインでは、際立ってしまう事もある苦みを上手く抑え込んでくれています。
「苦味を和らげてくれる感じとは違いますね。フレシネ イタリアン ロゼも完全な辛口では無くて、ほんのりとした甘さが潜んでいるのですが、スイートチリソースの甘さの援軍を得て、ゴーヤの苦みと拮抗できる絶妙な調和点になった感じです」
「うん、ゴーヤが、ほろ苦くて丁度良いですね。フレシネ イタリアン ロゼも甘くは感じないんだけれど、スイートチリソースで丁度良いバランスになります」
「ちょっと、大人な心地良いマリアージュですね」
ゴーヤはビタミンCもたっぷり含まれています。しかもゴーヤのビタミンCは熱に強い性質のビタミンCだそうです。しかも、葉酸やカリウムも沢山含まれています。これからの暑い夏を乗り切るためにも、皆様も、是非ゴーヤ肉詰めフライ 自家製スイートチリソースに挑戦してみてください。そしてフレシネ イタリアン ロゼとの素敵なマリアージュもお楽しみくださいませ。