今回のレシピは、いちじくポークロール バルサミコソースです。いちじくはバラ目、クワ科のイチジク属に属する被子植物です。クワ科の植物の実は、食用になるものが多いです。養蚕エリアでは桑の実は子供たちのおやつでした。桑の実は、若いうちは緑で、黄色を経て、熟していくと赤い色となり、更に完全に熟すと黒くなります。小さい丸い粒の集合体でブラックベリーのようには丸くならずに、ラグビーボールのように細長い実になります。登美の丘ワイナリーのすぐ近くにも桑の実狩りが出来る農園があります。例年ですと5月後半から6月上旬に収穫できます。いちじくは漢字では無花果です。いちじくの実を割ると、中に花が一杯ついているのですが、いちじくが伝わった頃にはこれが花だとは思わずに、実だと認識して「花が付かないのに実が成る」という事で無花果の文字を充てました。いちじくの名前は、清水桂一編の「たべもの語源辞典」によると、ペルシャ語のいちじくの音を中国語で映日(インリー)と充て、更に中国語表記する時に「果実の果」を付けくわえて映日果(インリークヮ)となり、それが日本に伝わっていちじくと呼ばれるようになった、との事です。漢字では無花果ですが、皆さんが食べている部分は花が集合した花嚢が果嚢になった物です。古くから食用として栽培されており、アダムとイブの禁断の食べ物はいちじくだと言われています。日本で流通しているいちじくの約8割が桝井ドーフィンという品種で、初夏と秋の2回、実を付けます。初夏の実の方が大きく100~200g位ありますが、秋の実は一回くらい小さいです。農林水産省作物統計によると、2020年には日本全国で11,000t生産され、都道府県別では和歌山、愛知、兵庫、大阪、福岡の順だそうです。FAO(国際連合食糧農業機関)によると2019年には世界では、130万t生産され、トルコ、エジプト、モロッコ、イラン、アルジェリアといった中近東からアフリカにかけての国々が上位を占めています。いちじくは世界で800種類ほどあるとされており、深くいちじくを愛する人たちがいるようで、いちじくの専門サイトの「Figs 4 Fun」と言うものまで存在しています。
今回は、そのいちじくを半分に切って、豚バラ肉で巻いてソテーします。付け合わせはクルミを乾煎りしたものとミックスリーフです。ソースは赤ワインとバルサミコ酢、塩、砂糖を煮詰めて、仕上げにバターモンテして作ります。
さて、このいちじくポークロール バルサミコソースにテイスティングメンバーが選んだイチオシは、カーニヴォ カベルネ・ソーヴィニヨンでした。ボトルを見ると存在感のある黒いラベルです。良く見ると、ラベルの真ん中あたりが、斜めに獣の爪で引き裂かれたかのように分断されています。「carnivor」を辞典で調べると「肉食動物」とあります。そうです、「カーニヴォ」は「肉を食べるのが大好きな人の為のワイン」なのです。カリフォルニアの完熟したぶどうを丁寧に醸しました。グラスに注ぐと黒々と濃く、向こうが見えない程です。グラスからは黒いベリーとバニラの様な香りが立ち昇ります。すこし焦げたニュアンスもあり、いかにも焼いた肉に合いそうな雰囲気が漂ってきます。口に含むと、とても良く熟したぶどうの充実した果実感があります、最初は甘いニュアンスが広がるのですが、すぐに穏やかな酸が感じられます。しっかりとした構造のある、フルボディのワインです。いちじくポークロール バルサミコソースと合わせると、ソテーされたいちじくの甘さとカーニヴォの豊かなコクとが見事にマリアージュしています。
「いちじくをソテーすると、こんなに甘く溶けるんですね」
「バルサミコと赤ワインのソースの濃厚さも加わってかなり甘い料理ですがカーニヴォは全く負けていませんね」
「徹底的に熟させて、濃厚なカベルネ・ソーヴィニヨンになるのを待って収穫していますから、カーニヴォは干した果物なんかにも良く合うんですよ」
「巻いている豚がバラ肉なので、脂がしっかりとありますよね」
「その脂が良い仕事していますよね」
「カーニヴォの豊かなタンニンと豚の脂が出会って甘さに転換しています」
「ワインと料理のマリアージュの鉄則のひとつ、若いタンニンと動物性脂肪のパターンですね」
「焦げ焦げのクルミの香りも、カーニヴォのスモーキーさと合っています」
これから、いちじくが出回ります。初夏のいちじくは、サイズは大きいのですが甘みが、やや少ないと言われています。でも、いちじくポークロール バルサミコソースなら、ソテーする事で甘みが強調されます。是非皆様も、このいちじくポークロール バルサミコソースに挑戦してみてください。そしてカーニヴォ カベルネ・ソーヴィニヨンとの素晴らしいマリアージュを体験してみてください。