今回のレシピは、ウニのフランです。ウニはウニ綱に属する棘皮動物の総称です。棘皮動物は、その名前の通り、棘が生えていたり、ざらざらとした皮膚をしています。そして形は、ヒトデのように五放射相称の形をしているのが特長です。ウニには棘が沢山有って観察し難いですが、丸い外骨格は五放射相称にきちんとなっていて「アリストテレスの提灯」と呼ばれます。棘は丸い外骨格から生えていて筋肉で動かす事が出来て、口側の棘を上手に動かして移動します。また、棘の他に管足もあって歩行や捕食に使います。管足は細長いチューブ状に伸びていて、先っぽは、やや広くなっていて吸盤になっています。その吸盤で、岩や海藻にくっつく事ができます。口には5枚の歯があり、昆布やワカメや海藻類を齧って食べます。ウニは漢字では海胆や雲丹と書きます。雲丹の「雲」には「集まる物」と言う意味があり、丹は「あか=赤」で赤い色という事です。なので、雲丹は赤い物が集まった生き物と言ったところでしょうかね。市場では、丸のままの時は「海胆」と表記し、瓶詰や木の船にウニの食べる部分だけを乗せた物に「雲丹」と記して使い分ける事もあります。日本人はウニが大好きです。農林水産省の都道府県振興局別統計を見ると生産量1位は北海道で、全国の半分以上を占めています。続いて岩手県、宮城県で、全国で6,800tになります。世界の生産量は、FAO(Food and Agriculture Organization)によると、チリがトップで27,500t、中国、ロシアの順番で日本が4位、続いてカナダで、世界全体で73,000tです。日本のウニの輸入量は水産物パワーデータブック2021によると11,400tですので、日本は世界全体の1/4を消費しているウニ好き国なのです。この量を見る限り、消費国としては世界一だと思われます。日本で漁獲されるウニの種類ですが、エゾバフンウニとキタムラサキウニの2種類で、国内産ウニの3分の2以上を占めるそうです。エゾバフンウニの方が、色が濃く甘みも濃厚です。キタムラサキウニはエゾバフンウニより生殖巣の色が白っぽい為、シロと呼ばれることもあります。甘みはエゾバフンウニよりもあっさりとしていますが、奥深い複雑な旨みがあるので、キタムラサキウニの方を好む方も多いです。エゾバフンウニとキタムラサキウニはオオバフンウニ科です。アカウニは西日本、山口県から九州にかけてのエリアで重要なウニで、初夏から秋に旬を迎え高値です。ムラサキウニは淡路島から徳島にかけてのエリアで食べられていて、アカウニに対してクロウニと呼ばれる事もあります。他のウニより早く春に生殖巣が太ります。ムラサキウニはキタムラサキウニと違ってナガウニ科です。北陸から山陰にかけてのエリアで重要なウニがバフンウニです。日本三大珍味「越前の雲丹」は、塩漬けしたバフンウニを練って作ります。九州から南、特に島々で重要なのがシラヒゲウニです。棘が白いのでシラヒゲウニの名前が付いています。シラヒゲウニはラッパウニ科で夏に旬を迎えます。余りの美味しさに乱獲され一時期絶滅寸前まで減りました。その為10月1日から翌年6月30日までは禁漁です。
現時点で、世界で最も多く漁獲されるウニはチリウニです。一時期は5万tくらい漁獲されていたようですが、現在では資源量も減ってきており3万tに届かなくなってきています。人工的に稚ウニを増やして放流したり、完全養殖に挑戦するなどサステナブルな漁獲を目指しています。チリウニはホンウニ科で、日本のウニとは科が違います。
今回はウニでフランをつくります。フランとは、一般的には、卵や砂糖、牛乳を主な材料として作るお菓子のことを指しますが、フランス料理では、生クリームや卵を混ぜた生地を型に入れて焼き固めれば、お菓子だけでなく料理系のものもフランと呼びます。なので、フランの訳がフランス風茶碗蒸しになっている事もあります。一つ一つをプリンの様に型にいれて固めても可愛いのですが、今回は大きめの型で固めてザクっと掬って盛り付けます。
このウニのフランにテイスティングメンバーが選んだイチオシワインは、ローラン・ペリエ ブラン ド ブラン ブリュット ナチュールでした。シャンパンを色で分類すると、A.O.C.法では、白とロゼとが認められています。白のシャンパンは、通常は黒ぶどうであるピノ・ノワールとムニエと、白ぶどうであるシャルドネをアッサンブラージュして醸します。この黒ぶどうと白ぶどうを使うシャンパンが殆どを占めているのですが、僅かな量だけ、特殊な白いシャンパンがあるのです。それば、黒ぶどうだけでつくるブラン ド ノワールと、シャルドネだけでつくるブラン ド ブランなのです。ローラン・ペリエ ブラン ド ブラン は、そのシャルドネだけで醸したブラン ド ブランで、しかも、デゴルジュマン(澱抜き)をした時に補う糖分を加えていないブリュット ナチュールなのです。使用するぶどうは、シャルドネの銘醸地コート デ ブラン産のアヴィーズ、クラマン、オワリー、シュイイなどのグラン クリュ畑を中心に使っています。
クリアな色合いで、淡いレモンイエローです。きめ細かく持続性のある泡がつぎつぎと立ち昇ってきます。柑橘を思わせるアロマと、石灰的なミネラル感のある香りもあります。口に含むと、生き生きとしたバランスの取れた味わいで、ギュッとレモンを搾ったようなフレッシュな戻り香が口の中に広がり、心地良い余韻となっていきます。ウニのフランと合わせると、磯の香りが、辺り一面に立ち込める感じがしました。
「ローラン・ペリエ ブラン ド ブランと合わせるとウニが主張します。物凄く前面に出てくる感じです」
「ヨードの香りがはっきりと判ります」
「ウニってこんなに甘いんだ!!って感じです」
「今日のウニはエゾバフンウニですから、ウニそのものも、かなり甘みがあるのです」
「それもありますが、シャンパンがブリュット ナチュールですからね。素材その物の自然な甘さを万全に引き出し、強調してくれているからだと思います」
「ローラン・ペリエがウルトラ ブリュットを世に問うたのが1981年です。ウルトラ ブリュットは「素材の本当の美味しさを味わう為には、味の濃いソースは邪魔だ」という考え方のヌーヴェル キュイジーヌの料理人達に、拍手喝さいで受け入れられたのですよ。それから40年あまり経った今、シャルドネメゾンのローラン・ペリエがブラン ド ブランでブリュット ナチュールタイプを世に出すのは意味深い事だと思います」
「ローラン・ペリエ ブラン ド ブラン はシャルドネだけですから、酸は、かなりキレる感じです。でもフランの繊細な旨みが伸びやかに続きます」
「ウニの風味と美味しい余韻が永遠に続く感じがします・・・・」
みなさまも、特別な時に、是非エゾバフンウニで、ウニのフランを作ってみてください。そしてローラン・ペリエ ブラン ド ブラン ブリュット ナチュールとの超絶的なマリアージュを体験してみてください。