今回のレシピは、空豆が透ける春の生春巻きです。生春巻きはベトナム料理ですが、実はタイでも、非常にポピュラーな料理だそうで、食堂や屋台でも普通に見かけるそうです。タイ流のアレンジもされており、一般のタイの方々は、生春巻きをベトナムの料理という認識なく、普通に作って食べているそうです。タイ語では、ポピアソッド、ポピアが春巻き、ソッドが生です。ただ、今回の空豆が透ける春の生春巻きはタイ料理の大家である鈴木都先生のレシピではありますが、スタンダードなタイの生春巻きとしての提案ではなく、アジアンテイストのワインに良く合うおつまみとして考案していただきました。
春巻きは中国発祥の料理です。「春卷」という名称が書物に登場するのは清代より後だそうですが、元の頃にも類似した料理があって「巻煎餅」というモンゴルの宮廷料理だったそうです。包む皮は薄い小麦粉の皮が主流ですが、各地に広がって行くうちに湯葉や薄焼き卵などいろいろな変化形が出来ました。ベトナムでは米粉の皮で包み、揚げない生春巻きGỏi cuốn(ゴイ クオン)になりました。ゴイ クオンのゴイは和えるで、クオンは巻くで、「包んだ(野菜や魚介の)和え物」という料理名です。英語では、春巻きはスプリングロールです。以前、春巻きを取り上げた時にも書きましたが、文字をそのまま直訳したものです。一方、生春巻きの方ですが、中国にとっては、ベトナムから出戻って来た形なので、越南春卷(ベトナムの春巻)や夏卷の名称で呼んでいます。なので、生春巻きの英語訳は夏巻きの直訳でサマーロールです。今回の空豆が透ける春の生春巻きは、アジアンテイストのおつまみで、具材にもはんぺんを使うなど、随所に都先生流のアレンジがされています。特にソースはタイ式でもベトナム式でもなく、完全オリジナルなソースです。荒く砕いたピーナッツとシーラチャーソース、ココナッツミルクとココナッツシュガーを混ぜてつくります。シーラチャーソースは、タイ・チョンブリー県の郡の1つであるシーラーチャーに由来を持つと言われているソースで、旨味と辛さと酸味をバランス良く持っているソースです。
この空豆が透ける春の生春巻きにテイスティングメンバーが選んだイチオシワインは、サントリーフロムファーム ワインのみらい 登美の丘ワイナリー 甲州 古木園育ちでした。サントリーでは、昨年の9月に日本ワインのブランドを一新いたしました。「畑からぶどうづくりと向き合うサントリーの、産地が見え、つくり手が見えるワイン」をメインテーマに「サントリーフロムファーム」ブランドとなりました。ラインナップは4つです。
日本の頂点を目指し、世界のトップ水準に伍していく意気込みの「シンボルシリーズ」
サントリーのワイナリーの伝統と品質のこだわりの「ワイナリーシリーズ」
産地の個性や魅力を愉しんで頂きたい「テロワールシリーズ」
「品種シリーズ」
の4つです。でも、実はもう1ライン、登美の丘ワイナリーのショップとネットショップであるフロムファームオンラインショップだけでしか購入できないものがあるのです。それがサントリーフロムファーム ワインのみらいシリーズなのです。ワインのみらいシリーズは、サントリーグループのずっと持ち続けている企業としての価値観である「やってみなはれ」を正に表しているようなシリーズです。
「お客さまにわくわくしてほしい!そのためには、自分たちつくり手自身がわくわくするワインをつくらなければいけない!!」という思いから始まったシリーズです。今回イチオシに選ばれたサントリーフロムファーム ワインのみらい 登美の丘ワイナリー 甲州 古木園育ち2020は、当時の登美の丘ワイナリーの栽培家であった和田弦己の「古木を中心とした、ぶどうからじわっとうまいワインは出来ないだろうか?」という思いから始まっています。実は古木園育ちに対になる製品があって、こちらはワインのみらい 登美の丘ワイナリー 甲州若木園育ち 2020です。こちらは「若木を中心としたぶどうから、イキイキとした味わいが魅力のワインが出来ないかなぁ」という思いから製品化されました。古木園育ちは、登美の丘ワイナリーの樹齢30~40年の古木中心に醸しました。和田の狙い通りに、八朔のような和の柑橘感が魅力のじわっとうまいワインに仕上がりました。今回のマリアージュ実験では、いつもの16種類のワインの中に、なんと甲州だけで4種類も準備しました。ワインのみらい 登美の丘ワイナリー 甲州の2種類と、同じくワインのみらいシリーズで長野県の立科で育てているワインのみらい 立科町甲州冷涼地育ち2021と通常の登美の丘 甲州2020の4種類を比較試飲をしました。立科町甲州冷涼地育ちが一番キレのある酸味でした。登美の丘ワイナリー 甲州若木園育ちは、キレのある酸と奥行きを感じ、通常の登美の丘甲州が穏やかな膨らみのある味わいです。古木園育ちは穏やかさのなかに、じわじわっと広がる旨味感が特長でした。空豆が透ける春の生春巻きと合わせると、4つの甲州の違いが、よりはっきりとしました。
「同じ甲州でも産地で個性が違いますね。立科町の甲州の透明感のある酸味は、いままで飲んできた甲州と全然違うのでびっくりしました」
「それよりも、同じ登美の丘の甲州で、樹齢でこんなに味わいや食べ物との相性が変わるんですね」
「古木園育ちは、個性的では無いのですが、食べ物の持ち味を上手に引き立てる感じです。ワインだけ飲んだ時は、大人し過ぎて、イチオシにはならないのでは?と思いましたが春巻きと合わせると全然印象が変わりました」
「空豆のほっこりした感じが古木園育ちと合わせると、よりくっきりと判ります」
「ピーナッツとも仲良しですし、玉子の甘いニュアンスとも良く合っています」
「空豆って、少しえぐみが有る所も美味しいのですが、その大人の味わいに甲州の渋みが加わって、複雑な美味しさ感を醸し出しています」
皆様も、是非、空豆が透ける春の生春巻きを作ってみてください。この生春巻きですが、通常の春巻きが、揚げて直ぐに食べないと、しなっとして美味しくないのと違って、食べる直前に作らなくても美味しく食べれます。なので、何品も並行して料理を作る時に、先に作ってしまえば楽です。早めに作った場合は乾かないように、湿らせたキッチンペーパーを被せた上からラップすると良いと思います。そしてサントリーフロムファーム ワインのみらい 登美の丘ワイナリー 甲州 古木園育ちとの素晴らしいマリアージュをお楽しみくださいませ。