この料理に合うワイン

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1st

ウィリアム ヒル ナパヴァレー シャルドネ 

ウィリアム ヒル ナパヴァレー シャルドネ

アメリカ
ぶどう品種 シャルドネ

今回のレシピは、鈴木鍋です。ワインスクエアの料理とワインのコーナーのレシピは、16年前から鈴木薫先生と鈴木都先生の姉妹に考えて頂いております。お姉さんがタイ料理の大家の都先生、妹さんが薫先生です。お二人の実家は小金井市の都立武蔵野公園に、程近い閑静な住宅街にあります。今回の鈴木鍋は、実に40年以上前から鈴木家で食べ続けられている伝統の鍋なのです。非常にシンプルで、具材は、メインの鍋の時には、なんと、しゃぶしゃぶ用牛肉とレタスだけです。つゆは醤油、みりん、出汁を1対1対2の割合で入れます。牛肉とレタスを、ふつふつ程度に沸かした鍋に投入し、普通のしゃぶしゃぶの要領でさっと火が通ったら食べるというものです。最近でこそ蕎麦つゆで作る鍋をやる飲食店があちらこちらに有りますが、それは最近の話です。大昔から、この究極にそぎ落とした鍋を考案して食べていた鈴木家は、相当なグルメだと思いました。定番の〆は、つゆにエノキを入れてから、卵を鍋に割り入れてポーチドエッグを作ります。ご飯に、そのエノキとポーチドエッグを掛けて食べると言うものです。工程の写真をご覧いただくと、その美味しさが伝わってきますよね。

この鈴木鍋にテイスティングメンバーが選んだイチオシワインは、ウィリアム ヒル ナパ ヴァレー シャルドネでした。ウィリアム ヒル エステート ワイナリーはナパの街の北側、アトラスピーク ロード沿いでナパ シルバラード リゾート & スパの広大なゴルフ場の向かいにあります。サンフランシスコからに向かうときは、普通、高速80号線を通る事になります。サンフランシスコ湾を横切るサンフランシスコ オークランド ベイブリッジを渡って、しばらく進むとサンパブロの街に入りますが、その奥まったあたりからサンフランシスコ湾はサンパブロ湾と呼ばれるようになります。高速80号線をヴァレーホで降りて、北上するとナパ ヴァレーの方向で、37号線を西に進むとソノマ方面です。どちらの方向に進んでも最初に近づくワイン産地はロス カーネロスです。ロス カーネロスはナパ ヴァレーとソノマ カウンティにまたがる生産地なのです。ソムリエの資格試験などで勉強された方は良くご存じだと思いますが、ナパ ヴァレーは南の方が冷涼で北に行くと暑くなるワイン産地です。それは寒流の影響で冷やされた海風がサンフランシスコ湾からサンパブロ湾を通って北上するからです。ナパ ヴァレーは、北側のヴァカ山脈と南側のマヤカマス山脈の間の谷が北西から南東に伸びているのでヴァレーと呼ばれます。流れている川はナパ川です。ナパ ヴァレーの一番南の産地であるロス カーネロスの北側にナパの街があり、その東側にクームズヴィルの産地が広がります。ワイン産地は、ナパの街から北西方向にオーク ノール ディスクリクト オブ ナパ ヴァレー、ヨーントヴィル、オークヴィル、ラザフォード、セントヘレナの順番で続きます。有名なフレンチレストランであるフレンチ ランドリーがあるヨーントヴィルあたりまでは海風の影響で涼しいのですが、オークヴィルあたりから温暖になります。セントヘレナあたりは、かなり積算温度も高くなります。ウィリアム ヒル エステート ワイナリーはヨーントヴィルより大分南のナパの街寄りですので、比較的涼しいエリアになります。ワイナリーはヴァカ山脈の麓の小高い丘になっています。標高は40mから60mくらいです。ナパ川の河原では標高15mくらいですから、少し高くなっています。土壌は明らかに違っていて、ヴァレーの底に支配的に堆積しているのは肥沃な砂ローム土壌ですが、ウィリアム ヒルの土壌は岩が多く、薄く、栄養が少ないです。なのでぶどうは土壌の奥深くに根を伸ばし、水や栄養を得ようとします。その結果、小粒の果実が出来るので、色が濃く、香り豊かで味わい深いワインになるのです。イチオシに選ばれたウィリアム ヒル ナパ ヴァレー シャルドネは、ワイナリー周辺のぶどうの他に、ナパ ヴァレーのいくつかの異なる産地からのぶどうも使っています。セントヘレナ AVAは温暖なので、ワインにトロピカルな風味とまろやかな口当たりを与えます。また、カーネロスの霧に覆われた畑がもたらす、さわやかな酸味も重要な役割を果たしているのです。
ウィリアム ヒル ナパ ヴァレー シャルドネをグラスに注ぐと、ほんのりと黄金を帯びたレモンイエローです。スワリングすると、グラスにはワインの液体の跡が見えます。蜜入りリンゴや洋梨のコンポートを思わせる香りがあります。黄色く熟したアンズや黄桃を連想させる香りもあります。バニラや甘苦系スパイスのニュアンスも感じられます。口に入れると、少しトロリとしたタッチがあります。爽やかさと完熟感が絶妙にバランスしていました。
和牛のロースの薄切りを鍋でしゃぶしゃぶして頂きます。和牛香が鰹出汁の香りと絡まり合って、とても良い香りです。ウィリアム ヒル ナパ ヴァレー シャルドネと合わせると、和牛の香りが更に引き立ちました。

「林檎や梨を思わせる香り立ちが和牛と合っていますね」
「動物性脂肪の多い和牛を醤油味の出汁で調理するのですから、てっきり赤ワインがイチオシに選ばれると思っていました」
「意外でした。サシの脂とシャルドネのまったり感が良く合っています。また、レタスのシャキシャキした感触とも上手く折り合っていて、衝撃的でさえありました」
「このシャルドネで合わせると、牛肉のナッティさ、というか、ココナッツのような良い香りが強調されました」
「今、世界的にも和牛の魅力が高く評価されています。キメ細かく、さしが入って、口の中で蕩ける様な味わいも勿論高く評価されているのですが、実は、和牛の香り高さも評価されているのです」
「明治大学農学部のグループと日本獣医畜産大学の研究で、牛肉からは、48の香り成分が同定されたのですが、このうちの、40成分は輸入牛肉より和牛に多く検出されました。特にラクトン類は和牛肉の方が著しく多かったのです。ラクトンのなかでも果実に多くふくまれるガンマラクトンは炭素数によって桃やココナッツを思わせる物や、桜餅の香り成分香り成分であるクマリンなどがあります」
「マリアージュ実験で使ったウィリアム ヒル ナパヴァレー シャルドネの2019年はアメリカンオークを30%使って樽発酵、樽熟成しています。なのでアメリカンオークで良く感じられるココナッツのニュアンスが感じられるのです」
「和牛の香り成分のラクトンと共鳴したという訳ですね」

皆様も、レタスが特売になっていたら、是非究極のシンプル鍋である鈴木鍋の事を思い出してください。そしてウィリアム ヒル ナパ ヴァレー シャルドネとの絶妙な相性をお楽しみくださいませ。

2位に選ばれたのは、登美の丘ワイナリーシリーズ ブラック・クイーン&マスカット・ベーリーAでした。使われている2つのぶどう品種であるブラック・クイーンとマスカット・ベーリーAは、ともに日本のワイン用ぶどうの父と呼ばれる「川上善兵衛」が交配した品種です。川上善兵衛は、越後高田の大地主の跡取り息子として生を受けました。越後高田は、小学校の社会科の教科書にも豪雪地帯として名前が挙げられるエリアです。冬場小作人たちが出稼ぎに出たまま帰って来ないのを見て、それは越後高田の地に冬の仕事が無いからだ・・・・と、冬場でも仕事のありそうなワインづくりを志しました。最初、欧州系品種に挑戦しましたが、上手く育たず、アメリカ系品種は育ったのですが、ワインに醸して美味しくありませんでした。善兵衛は、メンデルの法則を知り、日本の風土に合って、しかも美味しい品種を、自分で交配する事を決意しました。ブラック・クイーンもマスカット・ベーリーAも共に1927年の交配です。ブラック・クイーンは「ベーリー♀」×「ゴールデンクイーン♂」を掛け合わせました。果実は濃い黒紫色で、果肉は軟らかく、果皮は厚いです。豊かな酸味とアメリカンチェリーのような赤黒系果実を想わせる香りが特長のぶどう品種です。マスカット・ベーリーAは「ベーリー♀」×「マスカット・ハンブルグ♂」を交配したものです。病気に強く収量も多く、日本の赤ワイン用品種として一番の仕込量を誇ります。イチゴキャンディを連想させる華やかな香りで、渋みが少なく軽やかな味わいが特長です。マスカット・ベーリーAは2010年の甲州に続き、2013年OIV(国際ぶどう・ぶどう酒機構)に登録され、国際的に通用する品種の仲間入りを果たしました。

マリアージュ実験に使った2018年はブラック・クイーンが57.4%、マスカット・ベーリーAが42.6%です。2018年は、夏の暑さが厳しく、酸味が比較的少ない、良く熟したぶどうが収穫できた年でした。これまでよりマスカット・ベーリーAの配合を多くし、より香りのボリューム、口中の柔らかさを強調しました。ブラック・クイーン由来のアメリカンチェリーを思わせる香りが豊かで、牛皮革の印象もあります。マスカット・ベーリーA由来のイチゴキャンディのような甘い香りに樽由来のココナッツのような香りが調和しています。ブラック・クイーン由来のキレのある酸味で濃い旨みの鈴木鍋をすっきり、さっぱりと食べる事ができました。出汁で良く効いている鰹節の、ちょっと酸っぱい味わいとも良く調和していました。

2nd

登美の丘ワイナリーシリーズ ブラック・クイーン&マスカット・ベーリーA 

登美の丘ワイナリーシリーズ ブラック・クイーン&マスカット・ベーリーA

日本
ぶどう品種 ブラック・クイーン、マスカット・ベーリーA

3位に選ばれたのは、ウィリアム ヒル ナパ ヴァレー カベルネ・ソーヴィニヨンでした。ウィリアム ヒル エステート ワイナリーが設立されたのは1976年、パリスの審判と呼ばれる、カリフォルニアワインが世界に認められるきっかけとなったブラインドテイスティングが行われた年です。創業者のウィリアム ヒルは当時未開拓だったナパ ヴァレー南東部の、ヴァカ山脈のふもとのユニークな土壌に目を付けました。ウィリアム ヒルは80haの土地を購入し、1980年に56haにぶどうを植えました。1991年には早くもワインスペクテーター誌により世界ベストワイン100のうちの「トップ15」に選出される快挙を成し得ました。

ウィリアム ヒル ナパ ヴァレー カベルネ・ソーヴィニヨンは、カシスなどの色の濃い果実を連想させる凝縮した香りと、ちょっと大地のニュアンスもあります。ナツメグやクローブのような甘苦系スパイスや樽由来のバニラのニュアンスがあります。口に含むと熟した濃い果実感が感じられスケールの大きさがあります。タンニンがたっぷりとあり、ワインだけで飲むとちょっとタンニンフルな印象もあります。鈴木鍋の牛ロースと合わせると、牛肉の脂とウィリアム ヒルのタンニンとが出会って甘みに変わるのが感じられました。ワインの味わいの完成度が増し、お肉の美味しさも更に増す、素敵なマリアージュでした。

3rd

ウィリアム ヒル ナパヴァレー カベルネ・ソーヴィニヨン 

ウィリアム ヒル ナパヴァレー カベルネ・ソーヴィニヨン

アメリカ
ぶどう品種 カベルネ・ソーヴィニヨン

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