この料理に合うワイン

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1st

フロムファーム マスカット・ベーリーA 

フロムファーム マスカット・ベーリーA

日本
ぶどう品種 マスカット・ベーリーA

今回のレシピは、ゆり根とれんこんと甘栗のアヒージョです。ゆり根を食べる習慣があるのは日本と中国くらいらしいです。英語でLily bulb、フランス語ではbulbe de lysです。食用にするゆり根はコオニユリ、オニユリ、ヤマユリ、カノコユリの4種類のユリの球根です。その他の種類のユリの球根は、苦みが強かったり有毒だったりするようです。4種類のユリのなかでもコオニユリが圧倒的に栽培されています。コオニユリの花の色は代赭色で赤黒い突起状の斑点があって、かなり主張の強い、目立つ花です。北海道から九州に広く自生していますが、食用にされるのは、殆ど栽培された物だそうです。ゆり根は、「根」の文字を与えられてはいますが、葉っぱが変形した鱗片の集合体です。

農林水産省の令和2年産地域特産野菜生産状況調査結果を見ると、ゆり根の2020年の生産量は全国合計1,060tで、トップは北海道の1,060tです。栃木県、千葉県、長野県、大阪府でも栽培されているようなのですが、四捨五入で0tになるのか、統計表には0と言う数字が掲載されています。

ゆり根を比較的多く食べるのは、主に西のエリアです。京料理でもしばしば登場し、お店の方から丹波産と伺う事が多いのですが、農林水産省のデータには京都府産は出てこないです。北海道では、羊蹄山の麓から寿都湾にかけてのJAようていのエリアが主産地で、シェア70%程度はあるそうです。このエリアではコオニユリの白銀という品種がメインで、最近、月光や白玲といった品種も見る事もあります。JAようていでは、白銀を育てるのに、茎頂点培養施設で、試験管栽培で作ったウィルスフリー種子を3年もかけて苗にしています。その苗を植え替えてから収穫までに更に3年かかります。しかも連作障害が強く出る作物なので、一度使った畑は7年間休ませないと次の栽培が出来ないという、とてもとても手間と時間がかかるのがゆり根なのです。コオニユリの開花時期は7月から8月で、花の色は先ほど申し上げたように、かなり目立つ代赭色です。私は、この時期の羊蹄山の麓辺りを何度か通っているのですが、代赭色に染まった畑を見た記憶が全くありません。農家の方に聞くと、ゆり根を太らせる為に、つぼみの時に全部摘み取ってしまうからだそうです。ゆり根は生に近いとシャキシャキした食感を楽しめ、加熱するとホクホクとした食感と甘さが特徴です。収穫時期は10月中旬から11月上旬ですので、年末にかけて出盛りを迎えます。中には冷蔵で長期熟成させて糖度を上げた熟成ゆり根も販売されています。品種にもよりますが、糖度が26度を超える物もあるそうです。皆様も見かけられたら是非試してください。

ゆり根は、栄養が豊かです。カリウムの含有量では、野菜や果物の中でもトップクラスで、葉酸もとても豊富に含まれます。漢方でも百合(ビャクゴウ)として用いられ、辛夷清肺湯、百合固金湯、百合知母湯などの漢方薬にも使われ、咳を鎮めたり、心を穏やかにしたりすると言われています。今回は、今回は鈴木薫先生にゆり根とれんこんと甘栗のアヒージョを作っていただきました。アヒージョ(ajillo)はスペイン語で、にんにくの事です。スペインの市場で「アヒージョを探している」と聞いたらにんにくを手渡されます。日本人が思っている料理名のアヒージョは素材名+ al ajilloで、例えば海老のアヒージョならGambas al ajilloです。アヒージョの伝統的な素材は海老ときのこでした。Gambas al ajilloは土鍋にオリーブオイルで煮た海老とにんにくとトウガラシを入れパセリを添えるだけのシンプルな料理です。アヒージョはマドリッドで生まれたと言われていますが、作り始められた時期は不明です。現在では、スペイン全土はおろか、世界中で食べる事が出来ます。スペイン南部ではガンバス アル ピルピル(Gambas al "pil pil")とも呼ばれます。このピルピルは熱した土鍋に海老を入れる時のオノマトペだそうです。アヒージョは熱々が美味しい料理なのです。

このゆり根とれんこんと甘栗のアヒージョにテイスティングメンバーが選んだイチオシワインは、サントリー フロムファーム マスカット・ベーリーAでした。サントリーでは昨年秋に日本ワインのブランドをフロムファームに一新しました。

SUNTORY日本ワイン FROM FARM 水と、土と、人と、・・・・

畑からぶどうづくりと向き合うサントリーの、産地が見える、つくり手が見えるワインを合言葉に、4つのラインナップに変更しました。シンボルシリーズ、ワイナリーシリーズ、テロワールシリーズと品種シリーズの4つです。今回イチオシに選ばれたサントリー フロムファーム マスカット・ベーリーAは品種シリーズです。マスカット・ベーリーAは日本のワインぶどうの父と呼ばれる岩の原葡萄園創業者「川上善兵衛」が交配して作り上げた品種です。川上善兵衛は雪深い越後高田の大地主の長男としてこの世に生を受けました。冬場に出稼ぎに都会に出た小作人が帰って来ないのをみて、「それは、この越後高田の地に冬の仕事が無いからだ。ワインづくりだったら冬の仕事もあるに違いない」とワインづくりを志しました。1890年(明治23年)、岩の原葡萄園を開園し、最初欧州系品種を育てましたが、雪深い越後高田の地では上手く育ちません。次にアメリカ系品種を育てました。上手く育ったのですが、ワインにしてみると美味しくありませんでした。善兵衛はメンデルの法則を知り、自分で、越後高田の地で上手く育つ美味しいぶどう品種をつくり上げようと決意しました。そして、生涯に1万311回の品種交配を繰り返しました。品種交配は時間も手間も、そしてお金もかかります。越後高田の駅まで他人の土地を踏まなくても行けた位に広かった田畑を、少しづつ切り売りして、お金を注ぎ込んで交配を繰り返しました。そして1927年に出来た最高傑作がマスカット・ベーリーAなのです。「ベーリー♀」×「マスカット・ハンブルグ♂」の掛け合わせです。日本の気候風土にマッチし、病気にも強い品種なのです。現在の日本ワインの赤の品種で、最も多く使用されている品種なのです。ただ、母親のベーリーは純粋のヴィティス・ヴィニフェラではなく、アメリカ系のヴィティス・ラブラスカの血が入っているのです。その為、イチゴキャンディを思わせる甘い香りが有るのです。

グラスに注ぐと、鮮やかなラズベリーレッドです。イチゴキャンディや赤系果実のような華やかな香りが豊かです。タンニンは穏やかで、親しみやすい口当たりでありながら、果実味がしっかりとあって、味わいの充実感、飲みごたえもあるワインです。

ゆり根とれんこんと甘栗のアヒージョと合わせると、ゆり根の大地を思わせるニュアンスと良く合っていました。

「甘い、イチゴを連想させる香りが料理の邪魔になるかと、ちょっと心配しましたが、全然そんな事はないですね」
「れんこんやにんにくとも良く合っています。れんこんの独特な香り立ちがマスカット・ベーリーAで広がります」
「マスカット・ベーリーAって、アーシーと言いうか、土のニュアンスがあるのですよ。そこが根菜類と良く合う原動力になっていると思います」
「10年位前ですが、マスターオブワインのフィリッパ カールさんが登美の丘ワイナリーにテイスティングにいらした事がありました。ワイナリーでのテイスティングの時にカベルネ・ソーヴィニヨンやメルロのワインは大変褒めて頂けたのですが、マスカット・ベーリーAは『オリエンタルな品種かな・・・この香りが馴染めない』と不評でした。ヨーロッパのテイスターはヴィティス・ラブラスカの香りには否定的な方が多いので当然予想していました。テイスティングの後の食事の時に、通常メニューに無い筑前煮を、予め、特別に準備してもらっていました。食事の時に再びマスカット・ベーリーAを出したら、露骨に嫌な顔をされましたが、『筑前煮を召し上がってからマスカット・ベーリーAを飲んでください』とお願いした所『このペアリングは素晴らしい。これなら有りだわ!!』とお褒め頂いた事がありました。マスカット・ベーリーAは本質的に根菜類と良く合う品種なのです」
「甘栗の甘い香りとマスカット・ベーリーAの香りも自然にマッチしています」

皆様も野菜だけで作るゆり根とれんこんと甘栗のアヒージョに是非挑戦してみてください。そしてサントリー フロムファーム マスカット・ベーリーAとの素晴らしいマリアージュをお楽しみくださいませ。

2位に選ばれたのは、タヴェルネッロ オルガニコ スプマンテ、世界No.1イタリアワインブランド・タヴェルネッロ※の、気軽にお洒落に楽しめるオーガニック スパークリングワインでした。ぶどう品種はトレッビアーノ70% ペコリーノ30%です。トレッビアーノの爽やかな柑橘系のニュアンスにペコリーノの熟した果物の華やかさが付け加わる感じです。やわらかく軽やかな泡立ちで、心地よい柑橘や黄桃を連想させるほどよい香りです。ふんわりとした優しい口当たりで、まろやかな酸味の親しみやすいスパークリングワインです。ゆり根とれんこんと甘栗のアヒージョと合わせると、アヒージョの油っぽさをオルガニコの爽やかな泡が綺麗に洗い流してくれます。ゆり根のホクホク感がグッと増して、ゆり根の甘さも強まる気がします。出来立ての熱々のアヒージョと良く冷えたタヴェルネッロ オルガニコ スプマンテのコントラストが楽しいマリアージュ実験でした。

※IMPACT DATABANK 2020 " World's TOP 20 WINE BRANDS

2nd

タヴェルネッロ オルガニコ スプマンテ 

タヴェルネッロ オルガニコ スプマンテ

イタリア
ぶどう品種 トレッビアーノ70%、ペコリーノ30%

3位に選ばれたのは、登美の丘 ビジュノワールでした。ビジュノワールは山梨県果樹試験場が開発した新しい品種です。温暖化の進行した甲府でも色づきが良好、しかもフードフレンドリーな品種という事で、注目を集めています。

色は、日本ワインとしては濃いめです。グラスからは華やかな香りが立ち昇ります。赤いベリーやブルーベリーのような青紫色の果実の香りがあります。そしてその奥に、スミレの花を思わせる香りもあります。味わいの前半はたっぷりの果実味が感じられ、中盤からは豊かなタンニンが口中に広がります。ゆり根とれんこんと甘栗のアヒージョと合わせると、にんにくオイルの力のある旨味とビジュノワールのボリューム感が丁度良いバランスでした。ビジュノワールのたっぷりとした果実感がゆり根の甘さを更に広げてくれる素敵なマリアージュでした。

3rd

サントリー登美の丘ワイナリー ビジュノワール 

サントリー登美の丘ワイナリー ビジュノワール

日本
ぶどう品種 ビジュノワール

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