今回のレシピは、鰹の刺身 グレープフルーツとマスカルポーネチーズソースです。カツオはスズキ亜目、サバ科、マグロ族、カツオ属の魚です。1属1種の魚なので、カツオ属にはカツオしか居ません。カツオの名前の付く魚は、他にはソウダガツオ属のマルソウダ、ヒラソウダ、スマガツオ属のスマガツオ、ハガツオ属のハガツオの4種がいます。カツオは、全世界の赤道から北緯45度、南緯40度あたりに広く生息しています。季節回遊魚で、日本近海だと、1歳から2歳の子供鰹が、新春頃から、赤道周辺を離れ、餌を追い北上します。太平洋側を中心とした日本沿岸を黒潮の流れに沿って、北へ北へと昇っていきます。小さい頃の主食はオキアミやシラスです。九州では、2月-3月から、鰹は獲れ始めます。初鰹は、山口素堂の句「目には青葉山ほととぎす初鰹」で一躍有名になりましたが、季語の月別一覧を調べると「初鰹」は5月の季語になっていました。江戸っ子達の口に届くのは5月、江戸の近海で鰹が獲れる青葉の頃だったんでしょうね。初鰹は魚体も小さく、脂は余り乗っていないのでさっぱりとした味わいです。その後、三陸海岸沿いを北上し、7月、8月には太平洋北部のベーリング海やオホーツク海周辺で餌を食べて、大きく育ち、8月中頃には南下を始めます。この南に向かう鰹を戻り鰹や下り鰹と呼びます。この頃の主食は鰯、鯵、秋刀魚、烏賊、甲殻類など口に入るサイズなら何でも食べます。戻り鰹は北の海でたらふく食べて脂が乗った味わい深い鰹です。三陸沖では8月~9月頃から漁獲され、高知沖や九州沖に戻ってくるのが10月~11月で更に南下し熱帯の海へと帰っていきます。一旦成熟した3歳以降は亜熱帯~熱帯域に留まり、それ以降は日本沿岸には訪れない事が分かっていました。鰹の成長は早く1歳の誕生日頃には体長40cmから45cmで体重は1kgから1.5kgくらい、2歳の誕生日頃には50cmを超えてきて体重は2.5kgから3kg、3歳頃には体長60cmで体重4kgから5kgを超えるサイズになります。これが日本の周辺の鰹の回遊と成長サイクルだ、と言われていましたが、この所、この季節感があてはまりません。皆様もニュースを目にされたかと思いますが、今年5月には「千葉県勝浦漁港と銚子漁港の5月のカツオ水揚げ量が、4月のおよそ35倍と驚異的に増加した」と報道されました。しかも獲れている鰹のサイズは大きく4kgから5kgくらいのものもいて、全般的に脂が乗っているのです。サイズや脂の乗りを見る限り通常の初鰹ではありません。近年、2歳の戻り鰹の時期に熱帯まで南下せず、日本の海の近くで過ごしている鰹の存在が確認されているのですが、今年はその群れが、とても多くいた事が、今年の大豊漁に繋がった可能性があるそうです。本格的に鰹の資源量が増加しての豊漁かどうかは、未だデータがありませんので何とも言えませんが、今の所、日本近海に大型の鰹が沢山いて、どうやらそれが南下する戻り鰹の時期までは豊漁が期待出来そうだ、という事です。何はともあれ、脂が乗った美味しい鰹が、低価格で買える事は大変喜ばしい事です。定番のお刺身やタタキも、もちろん良いのですが、アレンジレシピをいくつか持っていると、より一層美味しい鰹を楽しめます。今日は鈴木薫先生にワインスクエア流のワインに良く合うソースアレンジを考えていただきました。グレープフルーツとマスカルポーネチーズのソースです。鰹の重量の半分くらいを目安にマスカルポーネチーズを使いますので、チーズたっぷりのソースです。グレープフルーツは二人分で1/2個分と、こちらもたっぷりです。その他の材料は、グリーンオリーブと紫玉ねぎとディルで、味わいのポイントとなるのが、ニンニクみじんぎりです。マスカルポーネはイタリアのロンバルディア地方が原産で、元々は冬のチーズでした。ティラミスケーキの主原料で、ティラミスが大流行した時にイタリア全土で年中作られるようになりました。マスカルポーネは酸凝固型のチーズです。牛の生クリームをクエン酸や酢酸を加えて凝固させて作ります。一般的なクリームチーズは牛乳や生クリームを原料に、乳酸発酵をさせて生成された乳酸によって凝固させます。通常はマスカルポーネの方がクリームチーズより、塩分が少なく、酸も穏やかです。
さて、この鰹の刺身 グレープフルーツとマスカルポーネチーズソースにテイスティングメンバーが選んだイチオシワインはタヴェルネッロ オルガニコ テッレ シチリアーネ ロッソでした。タヴェルネッロ オルガニコ テッレ シチリアーネ ロッソは、世界No.1イタリアワイン※「タヴェルネッロ」ブランドの一つで、地中海・シチリア島の恵まれた気候で育てられたオーガニックワインなのです。タヴェルネッロを醸しているカヴィログループは50年以上にわたってサーキュラーエコノミー(循環型経済)取り組みへの継続投資の結果、「持続可能なワイナリー」として「3EEqualitas認証」を認められました。SDGs活動に注目が集まりだすよりもずっと早くから持続可能なワイナリーを目指している会社なのです。
タヴェルネッロ オルガニコ テッレ シチリアーネ ロッソのぶどう品種は、シチリア原産品種であるネロ・ダヴォラと国際品種であるシラーとメルロです。ネロ・ダヴォラはNero d'Avolaと原語では表記し、意味は「アヴォラの黒」です。シチリア島の南東部の海岸にあるアヴォラ村の名前が冠されています。ネロ・ダヴォラは色濃く、力強い味わいと豊かな果実味が得られるぶどう品種だ、と言われています。
タヴェルネッロ オルガニコ テッレ シチリアーネ ロッソは、ダークチェリーやプルーンなどの黒い果実を連想させる香りとスミレの花のタッチ、黒胡椒やクローブなどのスパイスの印象もあります。熟した甘い果実味と穏やかな酸味、程よいタンニンの果実味溢れる飲み応えが魅力の赤ワインです。
鰹の刺身 グレープフルーツとマスカルポーネチーズソースを頂きます。写真をご覧ください!刺身のひと切れ一切れが大きく、身に脂を纏い、赤くてらてらと光っています。
「鰹そのもののレベルが、とても高いですね」
「初鰹の味では、到底ありません」
「宮城県の気仙沼で水揚げされた鰹です。仲卸の方からは4㎏あったと聞かされています」
「ソースが、コクがあるのにさっぱりとしていて鰹の味わいを引き立てますね」
鰹とタヴェルネッロを合わせると、鰹の鉄っぽさがタヴェルネッロ オルガニコによって、より一層強調されるのが判ります。
「ワインと合わせた方が、鰹の味わいに、深みが出ますね」
「マスカルポーネは、そんなに主張しませんね。ワインと合わせた時に奥行きが出る感じでしょうか...」
「さっぱりと瑞々しいソースです」
「みじん切りのニンニクを噛んだ瞬間に鰹の味わいが際立ちます」
「そうそう、ニンニクの風味でマスクされるのでは無くて、逆に真っすぐに鰹の風味が伝わってくる感じです」
「高知で鰹の塩タタキを食べる時のニンニクは、擦り下ろしではなく、スライスですよね。その方が遥かに旨いです」
「ニンニクのアクセントが効いている時の方が、タヴェルネッロの味わいが美味しく感じられます」
皆様も、鰹の当たり年に鰹の刺身 グレープフルーツとマスカルポーネチーズソースに挑戦してみてください。そしてタヴェルネッロ オルガニコ テッレ シチリアーネ ロッソとの素晴らしいマリアージュをお楽しみくださいませ。
※Shanken's IMPACT databank Review and Forecast 2019 (The GLOBAL WINE MARKET, World's TOP 20 Wine Brands)