今回のレシピは、揚げ鰈のレッドカレーソースがけです。もちろんタイ料理のスペシャリストの鈴木都先生のレシピです。タイ料理の定番と言えば、トムヤンクン、パッタイ、ガパオと並んでタイカレーの名前が挙がるかと思います。タイ語でカレーという表現は、カレー粉を使う料理の時だけです。「えっ?グリーンカレーやマッサマンカレーってカレー粉は入れないのでは?」と思われた方、正解です!グリーンカレーやマッサマンカレーにはカレー粉は入れません。逆に、グリーンカレーやマッサマンカレー、レッドカレーも含めてタイ語の料理名には、カレーの文字は無いのです。グリーンカレーのタイ語の料理名はゲーン キアオワーンでゲーン(煮物)、キアオ(緑)、ワーン(甘い)で、グリーンの甘い煮物と言う意味です。レッドカレーもゲーン ペット、ペット(辛い)な煮物、マッサマンカレーもゲーン マッサマンでムスリムの煮物と言う名前で、タイ語の料理名にはカレーの文字は無いのです。今回、カレーペーストの作り方を添えてはありますが、カレーペーストを自分で作る方は日本で味噌を自分で作る方と同じくらい少数派です。タイには、カレーペーストを各種作って、販売しているカレーペースト屋さんが、かなりの田舎に到るまで、沢山あるのです。昔の日本のお味噌屋さんの様に、カレーペースト屋さんの店頭には、樽が沢山並べられていて壮観です。それぞれの樽には、炒めて保存が効くように加工されたカレーペーストが入れられており、それを量り売りしてくれるのです。グリーンカレー、マッサマンカレーのペーストなどは、それぞれのカレーの専用で、定番の肉や魚介がほぼ決まっている事が多いです。しかしレッドカレーペーストだけは、レッドカレーとしてでも、他のカレーよりも幅広い食材、例えば豚肉や、鶏、家鴨や、更に海老や貝などにも合わせます。また、調味料として、様々なアレンジ料理にも使われます。タイのポピュラーなおつまみのトートマンプラーは、日本の薩摩揚げのような料理ですが、レッドカレーペーストを必ず入れます。食堂料理の定番おかずの豚肉とインゲンとピーナッツの炒めものにも、レッドカレーペーストは必ずと言って良いほど入ります。
今回紹介する揚げ魚のレッドカレーソースがけもタイでは定番の料理なのです。レッドカレーソースがけに使う魚は、白身魚が多いです。海の魚だったら、鱸や鰆、ハタが使われ、ハタはタイでも最高級に分類される魚です。淡水魚だったらティラピア、雷魚や鯰も良く食べられます。今回は鰈を使いました。カレイ科は世界中に113種程度確認されています。日本国内に40種あまりの種が生息していますが、比較的冷涼な地域に多いです。南シナ海、インド洋、オーストラリア沿岸で、鰈の名前で呼ばれる魚は、テンジクガレイ、トゲダルマガレイなどがいます。ただ、テンジクガレイはカレイの仲間ではなく、ヒラメの仲間ではありますが、白身で美味しい魚です。
さて、揚げ鰈のレッドカレーソースがけを作ります。市販のレッドカレーペーストを使う場合は、ソースづくりは簡単です。鍋にココナッツミルクを入れ中火にかけ、沸いてきたらみじん切りにした干し海老とレッドカレーペーストを加えます。とろみがつくまで煮詰めたら、ナンプラーと砂糖を加えて、味を整えたら出来上がりです。ご自分でレッドカレーペーストを作りたい場合は、以下の素材達が必要となります。
プリックチーファーヘン(タイ乾燥唐辛子大)、プリッキーヌヘン(タイ乾燥唐辛子小)、レモングラス、カー、ホムデン(タイの香りが良い赤エシャロット)、にんにく、カピ(小えびを塩漬けにして発酵させ、ペースト状にしたもの)、クミン、コリアンダーシードです。材料を揃えるのは、少し大変ですが、作り方は簡単です。唐辛子2種を、お湯で戻して、材料全部をフードプロセッサーにかけるだけですので左程手間ではありません。
鰈に片栗粉をはたいて、からりと揚げ、ソースを掛ければ出来上がりです。
さて、この揚げ鰈のレッドカレーソースがけにティスティングメンバーが選んだイチオシワインはサントリー 塩尻マスカット・ベーリーAでした。塩尻は、南北に長い、長野県の丁度中央部にあたります。北に位置する長野市から南に、約65kmほど下ったところです。長野県は今、注目を集めている日本ワインの産地の中でも、北海道と並んで、新しく設立されるワイナリーの多い、注目の産地なのです。塩尻の地にぶどう栽培が持ち込まれた歴史は古く、今から130年以上前の1890年豊島理喜治が桔梗ヶ原にアメリカ系や欧州系のぶどうを植え、川上善兵衛が技術指導を行ったのが始まりと言われています。サントリーは1936年に塩尻ワイナリーを開設しました。当初は、その頃、爆発的に人気のあった赤玉用のぶどう供給基地でしたが、徐々に欧州系品種の重要な生産地になって行きました。現在もサントリーにぶどうを供給してくださっているのは、山本博保組合長率いる「赤玉出荷組合」です。
サントリー 塩尻マスカット・ベーリーAの色は、日本ワインとしては濃い赤紫色です。香りは木いちごのような赤いベリーの果実香が豊かです。マスカット・ベーリーAらしい苺フレーヴァーを思わせるフラネオールの香りも感じられます。樽熟成由来と思われる丁子やシナモンのようなスパイスの香りもあり複雑です。味わいは、口に含んだ瞬間から心地よい酸を感じて、その後自然な甘味とやわらかいタンニンが広がる、複雑な厚みも感じられるバランスのよい味わいです。
揚げ鰈のレッドカレーソースがけと合わせるとソースのココナッツフレーヴァーが心地良く広がるのが判ります。
「鰈の白身の繊細な旨味が良くわかります」
「揚げ物とは言え、白身の鰈に赤ワインがイチオシに選ばれるとは思いもしませんでした。皆さんの評価を聞いて、少し意外だなぁ・・・と思いました」
「うん、レッドカレーのスパイシーさが赤ワインをグッと引き寄せているのは間違いないですね」
「マスカット・ベーリーAが赤ワインとしては、タンニンもそれほど強くなく、穏やかな味わいだからかも知れません」
「ソースのカー(タイの生姜)がマスカット・ベーリーAの風味と合っているんですね」
「マスカット・ベーリーAとココナッツのニュアンスは相性が良いのです。このヴィンテージのサントリー 塩尻マスカット・ベーリーA2017はフレンチオーク100%使用で熟成していますが、ココナッツフレーヴァーのタッチのあるアメリカンオークを選ぶ生産者も多いのです」
皆様も、一度、揚げ鰈のレッドカレーソースがけに挑戦してみてください。そしてサントリー 塩尻マスカット・ベーリーAとの素適なマリアージュをお楽しみくださいませ。
サントリーでは、今年の9月6日に、「日本ワインの魅力を伝える新ブランド」へ一新し、新発売いたします。新ブランドの名前は、「SUNTORY日本ワイン FROM FARM」です。「水と、土と、人と」「畑からぶどうづくりと向き合うサントリーの産地が見える、つくり手が見えるワイン」を目指しての完全リニューアルです。サントリー 塩尻マスカット・ベーリーAも9月以降新たに発売されるヴィンテージは、「SUNTORY日本ワイン FROM FARM」の産地の個性や魅力を愉しむ「テロワールシリーズ」としてお届けいたします。乞うご期待です!!