この料理に合うワイン

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1st

ロバート ヴァイル ジュニア グラウブルグンダー 

ロバート ヴァイル ジュニア グラウブルグンダー

ドイツ
ぶどう品種 ピノ・グリ

今回のレシピは、ラープ トーフです。ラープは、タイを4つの地方に分けた時の一つである東北地方(イーサーン)に原点を持つ料理です。その4つの地方は、中部地方、南部地方、北部地方と東北地方の4つなのですが、イーサーンは地名の通りタイの東北部にあります。ほぼ、三方向をラオスに抱きかかえられように取り囲まれています。「イーサーン」の呼称は、古代に隆盛を誇った国である真臘(シンラフ)の首都「イシャーナプラ」(Isanapūra=今の サンボー・プレイ・クック遺跡周辺)に由来すると言われています。シンラフは6世紀ごろ、メコン川中流域で勃興し、8世紀に一旦は分裂しましたが、9世紀に再統一し大きな国となりました。皆さんも学校で習ったアンコールワットに代表されるクメール文化をつくって繁栄しました。国境を接するラオスと民族も文化も共通性があります。基本的に山あいの土地で、農業が主体です。なので、動物性蛋白質はそんなに豊かではありません。昆虫も大事な蛋白源なのですよ。イーサーン料理はバンコクの屋台を始めとして、タイ全土で食べる事が出来ます。イーサーン料理は、もともとイーサーンから出稼ぎに都市部に来ていた人たち用の屋台料理でした。手頃な価格で、しかも大変美味しかったので、それを食べた他の地方の人たちも自分達の定番メニューに取り入れて行った感じで、タイ全土に広がって行きました。イーサーン料理は、地産地消の最たるものとも言えます。「自然のものを余さず食す」という考え方が基本にあるからだと思います。農業が盛んな地域のため、畑の用水路で獲れる魚、イナゴやバッタといった昆虫類なども大事な食材で、農家の庭で飼っている鶏が、大ご馳走です。また、庭や近くの里山で採れるハーブをふんだんに使います。イーサーン地方に欠かせない調味料といえばプラーラーで魚醤です。イーサーン料理の味わいの特徴は他の地方の料理よりも辛味が強いことです。極辛の唐辛子であるプリッキーヌが味わいのアクセントになっています。多くの日本人がタイ料理に持っている「タイ料理=辛い」と言うイメージは、出稼ぎに来ていたイーサーンの人たちが食べていた辛い屋台料理が、他の地方に伝わって、タイ料理全体に影響を与えて行ったと思われます。なので、屋台料理の対極とも言える宮廷料理の殆どは辛くないのです。イーサーン料理の代表的なものは、タイ風焼き鳥のガイ ヤーンや青パパイヤのサラダであるソムタム、そして今回のレシピであるラープです。ラープは、簡単に言うと、主素材をミンチにしたサラダです。主素材は何でもありです。基本は肉系で、鶏、豚、牛、アヒルや七面鳥などを良く使います。素材は火を入れるものが多いですが、生のままで使う、ユッケサラダの様なラープもあります。魚のラープもありますし、今回のラープ トーフのような植物性のものもあります。

写真をご覧ください。今回鈴木都先生に試作いただいたラープ トーフは、一見するとカッテージチーズか、おからを使ったサラダに見えなくもないです。でも、ミントの香りが豊かで、食べ応えもある、なかなか素晴らしい一品です。

このラープ トーフにテイスティングメンバーが選んだイチオシワインは、ロバート ヴァイル ジュニアのグラウブルグンダーでした。ロバート ヴァイル醸造所は1868年にドクター ロバート ヴァイル氏がドイツのラインガウ地方キートリッヒ村に畑を購入し、1875年にワイナリーを設立したのが始まりです。ドイツの醸造所としては比較的歴史の浅い醸造所です。時のドイツ皇帝ヴィルヘルムⅡ世が、ロバート ヴァイルの造るグレーフェンベルガー アウスレーゼをこよなく愛し、皇帝主催の正餐会に提供したり、外遊の際に持参したことなどから名声を博しました。1988年、サントリーがこの醸造所の経営権を取得しました。現在の当主である4代目でのヴィルヘルム ヴァイル氏がそのまま指揮を執り、畑や醸造所の改善を行い、益々品質に磨きをかけています。また、この年から現在まで連続してトロッケンベーレンアウスレーゼの収穫に成功し、ラインガウのこれまでの記録を塗り替える快挙を成し遂げています。かつて、ドイツワインと言うと、黒猫のアイキャッチで有名なカッツのようにやや甘口ワインのイメージが強かったですが、現在のドイツで生産されるワインの半分以上は、既に辛口なのですよ。ロバート ヴァイル ジュニア シリーズは、その新しい潮流である辛口に加えて、地球温暖化により、これまでドイツで栽培が難しかったピノ系品種の栽培が可能になってきたのを活用しました。ピノ・ノワール、ピノ・ブランそしてピノ・グリは世界的にも人気のピノ系品種で、ドイツでもこれらの品種に取り組む生産者が増えているのです。

ロバート ヴァイル ジュニアのグラウブルグンダーはフランスではピノ・グリ、イタリアでピノ・グリージョと呼ばれる品種です。「グリ」の名前の通り完熟してくると皮が藤紫色に色づきます。

今回イチオシに選ばれたロバート ヴァイル ジュニア グラウブルグンダーのヴィンテージは2020年で、前のヴィンテージよりも、少しピンクがかって見えます。ピカピカの10円銅貨の色をさらに淡くしたくらいのほんのりとしたピンクです。

アロマティックな黄桃やリンゴのコンポートのニュアンスがあります。アカシアのハチミツのような甘い香りも感じられます。やわらかなアタックでボリューム感を感じます。まろやかで穏やかな酸と、グリ系品種らしい、ほろ苦さが心地よい辛口ワインです。ラープ トーフと合わせると、豆腐からの豊かな大豆の味わいとリッチなロバート ヴァイル ジュニアが良く合っています。

「豆腐がグラウブルグンダーと出会う事で味わいに奥行き広がりがでます」

「前菜料理ですが、けっこう食べ応えがありますね」

「ピーナッツの油脂が味わいを豊かにしてくれているんだと思います」

「豆腐とミントなので、ソーヴィニヨン・ブラン系の軽やかなワインが合うのかと思いきや、ボディのあるロバート ヴァイル ジュニア グラウブルグンダーがイチオシに選ばれましたね」

「煎り米がぱりぱりしていて、良いアクセントになっています」

「この煎り米はカオクアと言って、とても大事です。面倒くさがらず、丁寧に煎って頂くと、格段に美味しくなります」

「ヴァイルはライムのフレッシュさ、ミントの爽やかさが出過ぎない、丁度良いバランス感です。豆腐とナッツの豊かさを、ワインサイドの豊かな味わいが、きちんと受け止めています」

「ラープ トーフにミントをたっぷり使いますので、ミントをこれ以上強調しない、グラウブルグンダーの程良いバランス感がポイントなのでしょうね」

次第に暑く、湿度の高い季節になってまいります。皆様も是非、ラープ トーフの挑戦してみてください。そしてドイツのロバート ヴァイル ジュニア グラウブルグンダーとの素晴らしいマリアージュをお楽しみくださいませ。

2番手はチリアン ライオンのアイキャッチが可愛いサンタ バイ サンタ カロリーナ ソーヴィニヨン・ブランでした。チリの動物ワインは、コロナで家飲み需要が増えて以降、再び需要が伸びています。サンタ バイ サンタ カロリーナ ソーヴィニヨン・ブランは、熟したグレープフルーツや白桃を連想させる果実の香りに、白い花と爽やかな甘いハーブのニュアンスです。フレッシュな果実味と程よい酸味と、柑橘系のすっきりとした後口が特長の、爽やかな味わいの辛口白ワインです。ラープ トーフと合わせると、ミントの清々しい香りとライムの爽やかさが更に広がり、清涼感で一杯になりました。今の季節よりも、もっとじめじめと暑い夏本番に最も相応しいマリアージュかなぁと思いました。

2nd

サンタ バイ サンタ カロリーナ ソーヴィニヨン・ブラン 

サンタ バイ サンタ カロリーナ ソーヴィニヨン・ブラン

チリ
ぶどう品種 ソーヴィニヨン・ブラン、シャルドネ

3番手に選ばれたのは、サントリー登美の丘ワイナリーシリーズのビジュノワールでした。皆様はビジュノワールという品種をご存知でしょうか?「知っているよ!」と仰る方は、かなりのワイン通です。ビジュノワールは素敵な名前を頂いています。フランス語でBijou Noirは「黒い宝石」を意味します。山梨県果樹試験場が交配した品種です。母親は「山梨27号」で栽培し易い品種です。山梨27号も交配品種で母親は甲州三尺で父はメルロです。その山梨27号と「マルベック」を交雑して誕生したのが、本日3位のビジュノワールです。 色は日本ワインとしては濃い方です。プラム、ブルーベリーのような青紫色の果実の香りの奥に、スミレの花を思わせる香りがあります。口に入れると、たっぷりの果実味が感じられ、中盤からは豊かではあるが優しいタンニンが口中に広がるフルボディの赤ワインです。マリアージュ実験をする前には、ラープ トーフは、お肉系のはいっていない、言ってみれば軽い味わいの料理なのでフルボディの赤ワインは活きないのではないかなぁと思っていました。ところが、実際に合わせてみると吃驚、豆腐の豆の味わいがぐっと広がって、煎り米の香ばしさとバッチリ合っていました。ピーナッツの豊かな味わいにも応援されて、フルボディの赤ワインに一歩も引けを取らない素敵なマリアージュになっていました。

3rd

サントリー登美の丘ワイナリーシリーズ ビジュノワール 

サントリー登美の丘ワイナリーシリーズ ビジュノワール

日本
ぶどう品種 ビジュノワール

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