今回のレシピは、牛しゃぶしゃぶとたけのこの木の芽あえです。しゃぶしゃぶの名前は、大阪の北新地にあって、棟方志功の版画が多数飾られている永楽町スエヒロの三宅忠一氏が1952年に名付けました。三宅氏は、当時、大阪で流行りだした牛肉を鍋にくぐらせる料理と、女中さんがおしぼりをたらいで濯ぐときの音を掛け合わせて、しゃぶしゃぶと命名しました。1958年には、早くも「スエヒロのしゃぶしゃぶ」と「肉のしゃぶしゃぶ」で商標登録をされた先見の明の持ち主です。しゃぶしゃぶの原型は涮羊肉(シュワンヤンロウ)というモンゴルの料理です。日本のしゃぶしゃぶ屋さんで使われているしゃぶしゃぶ鍋は、ドーナッツ型の所にスープが入り、真ん中が煙突状になっていますが、これは涮羊肉の鍋が基です。涮羊肉の鍋は煙突状の部分の膨らんだ所に炭や石炭を入れて温める仕組みになっています。煙突のてっぺんで空気の量を調節出来るようになっていて、そこを開け閉めする事で温度調節する事が出来ます。
日本の飲食店で単にしゃぶしゃぶと言った場合の主素材は、基本、牛肉ですが、家庭料理では登場する頻度が一番多いのは豚肉だそうです。その外には、蟹、鰤、鯛、海老などです。北海道ではラム肉もしゃぶしゃぶにします。今回のレシピでは、牛肉を使いました。もう一つの主役はたけのこです。たけのこは竹の子で、漢字では筍、笋や荺と書きます。筍の文字は、たけのこの成長が早く、10日もあれば、筍から竹になるので上旬、中旬の「旬」の文字をあてています。荺の文字は筍が皮に均等に包まれている様から「均」の文字があてられたと言われています。
最もポピュラーなたけのこは孟宗竹のたけのこで、他には真竹(マダケ)、淡竹(ハチク)、根曲竹などがあります。根曲竹はチシマザサのたけのこなので、笹の子ですね。竹はイネ目イネ科タケ亜科に属する植物のうち、大型で茎が木質化するものを言います。小型で茎が木質化するものは笹になります。竹は温暖なエリアを好み、笹は適応力が強く冷涼なエリアにも生息域を広げています。今、日本で見られる竹の殆どは中国から持ってこられました。日本原産が確定しているのは中部地方の山岳部から東北地方に残っている篶竹(スズタケ)くらいです。竹は今や西日本の林野の至る所で見られますが、日本に持ってこられたのは意外に新しく、例えば孟宗竹だと徳川吉宗の時代に、琉球から薩摩に2本運ばれたのが、最初だそうです。竹は筍で増える無性生殖と、種を付ける有性生殖の両方で増えます。有性生殖はめったに起こらず、1つの竹で120年に一度の周期で、種を付けると枯れてしまうと言われています。たけのこの都道府県別の生産量は、農林水産省の統計によると、福岡県、鹿児島県、熊本県、京都府の順です。トップ3の九州勢だけで6割以上を生産しています。同じ孟宗竹のたけのこでも、鹿児島産は11月から出始め、京都が2月くらいから、徐々に北上していき3月から4月が出盛りです。淡竹は4月中旬以降、真竹は5月から出てくる感じです。どのたけのこも掘って時間が経つとアクが強くなります。
木の芽は、一般的には山椒の若芽の事を指します。新潟の魚沼のエリアではアケビの新芽を木の芽と呼び、お浸しにして食べます。今回のレシピでは一般的な山椒のほうです。
さて、この牛しゃぶしゃぶとたけのこの木の芽あえにテイスティングメンバーが選んだイチオシワインはフレシネ セミセコ ロゼでした。フレシネ社は、シャンパンと同じ瓶内二次発酵でつくられるスペイン産スパークリングワイン「カヴァ」の世界No.1※ブランドとして、150カ国以上で愛される、生産者です。フレシネ社では、自分たちが醸すカヴァの品質に徹底的にこだわります。ぶどうはカタルーニャに1200軒ある契約農家さんに育ててもらっています。高品質なぶどうは短期間にはつくれません。ずっとフレシネ社の契約農家を遣っている所が多く、古い農家だと、4世代にわたってフレシネと取引を続けている農家さえあります。ぶどうは全て手摘みで丁寧に収穫します。収穫したぶどうが積み重なりすぎると重みで潰れて、腐敗が始まってしまうので、背負い籠には入れず、小型のプラスチックの箱を使って収穫します。その高品質なぶどうを空気圧搾方式のプレスでやさしく絞ります。シャンパンでも使用が認められている2番絞り果汁は、フレシネではカヴァの原料には、使用しないというこだわりぶりです。発酵に使う酵母は、ベストな味わいを求めて自社培養酵母を開発しました。そして、キメ細かな泡と深い旨みを求めて、瓶内発酵後の、瓶内熟成期間にもこだわりがあります。カヴァの法律では9ヶ月瓶内熟成すればカヴァを名乗れることになっているのですが、フレシネでカヴァとして製品化するための自主基準は最低でも12ヶ月という厳しいルールになっています。フレシネ セミセコ ロゼのぶどう品種は、トレパット70%、ガルナッチャ30%の2つの黒ぶどうを使います。
グラスに注ぐと、淡いサーモンピンクが美しいです。キメの細かな泡が、次から次へと立ち昇り、まるで真珠のネックレスのようです。赤いベリーと爽やかな柑橘を思わせる香り立ちです。少し香ばしいイーストのタッチもあります。牛しゃぶしゃぶとフレシネ セミセコ ロゼを合わせると、白味噌の甘みと、セミセコ ロゼの甘さのレベルが一致していて、抜群の居心地の良さです。
「昔のフレシネ セミセコ ロゼよりも、色が淡くなりましたね」
「色の淡い、プロヴァンスの直接圧搾法のロゼが人気を集めているので、ロゼは、全般的に色が淡めになってきていますね」
「たけのこの、ほんのりとした苦みをフレシネが包み込んでくれますね」
「丁度、心地良い甘さと、泡のお布団でしょうかね」
「山椒の、口の中が涼しくなるようなスパイシーさを、冷たいセミセコ ロゼが一層強めます」
「牛肉も美味しく感じます。ロゼですが黒ぶどう100%なので、肉と良く合いますね」
「一体感というか、まとまりが素晴らしいです。和の世界観のような気がする料理ですがこの居心地の良さはなんなのでしょうね?」
「ソースを伸ばすのに、オリーブオイルを使っているからかもしれません。スペインはオリーブ大国ですからね」
皆様も是非、牛しゃぶしゃぶとたけのこの木の芽あえに挑戦してみてください。そしてフレシネ セミセコ ロゼとの抜群の相性をお楽しみくださいませ。
※IWSR2020 スペインスパークリングワイン販売数量