今回のレシピは、南瓜とミニ帆立のココナッツグラタンです。タイ料理の大家である鈴木都先生のレシピですが、タイ料理ではありません。鈴木都先生が本を出版する時に編集者の方から「ナンプラーやココナッツミルクを使って、タイ料理だけではなく西洋料理や和や中華風の家庭で楽しめる料理にできないか?」と提案されて考案した料理の1つだそうです。オリエンタルな風味のグラタンで、牛乳アレルギーの方にも召し上がっていただけるレシピになっています。
南瓜(ナンキン)はカボチャの日本での呼び名の一つです。カボチャの別名はざっと数えても4つあります。南瓜=南京(ナンキン)、唐茄子(トウナス)、唐瓜(カラウリ)、ボウブラの4つです。カボチャが、日本に入ってきたのが、天文年間(1532年-1555年)で、ポルトガルの船がカンボジア経由で現在の大分県にあたる豊後の国にやってきて、国主である大友宗麟に献上した時だと言われています。4つ目の別名のボウブラは、ポルトガル語でカボチャを意味するAbóboraからきているそうですし、カボチャの名前自体が、そのポルトガル船の経由地であるカンボジアが語源のようです。大分には、いまだに、その時に伝えられたと言われる宗麟カボチャが育てられています。カボチャは、昔は東南アジア原生と言われた事がありましたが、メキシコやペルーの、今から7500年から9000年くらい前の地層からカボチャの種が多数発掘されて、アメリカ大陸の原産である事が、ほぼ確定しています。日本では、西洋カボチャと日本カボチャとペポカボチャの3種類が主に栽培、販売されています。数量が圧倒的に多いのが西洋カボチャです。西洋カボチャの歴史は比較的浅く、明治時代にアメリカから導入されました。スーパーなどで見かける、皮の色が深い緑で、表面のでこぼこが少ない、あのカボチャです。寒さに強いので北日本を中心に栽培されています。日本カボチャが、3つのカボチャの中では、一番古く日本に入りました。先ほど登場した宗麟カボチャが、最古の日本カボチャです。その他には、皮の色が深い緑で、表面に深い溝のある黒皮かぼちゃや、上から見ると菊の花のような形で、色もオレンジがかった菊南瓜、熊本県春日の伝統野菜である春日ぼうぶら、沖縄の島かぼちゃなどが主な品種です。3つ目のペポカボチャは、「そんな品種聞いたこと無いです!」とおっしゃる方が多いのですが、ズッキーニが、そのペポカボチャの仲間なんですよ♪。今回のレシピは、その南瓜が主役で、ミニ帆立が名脇役です。味の決め手は、ココナッツクリームとココナッツロングとナンプラーです。ココナッツロングはココナッツの果肉を1~2cmの細い紐状に切って乾燥させたものです。大型スーパーのお菓子用品売り場や最近全国に展開しているコーヒー屋さんが経営している食材店や、もちろんネットでも手に入ります。
さて、この南瓜とミニ帆立のココナッツグラタンに、テイスティングメンバーが選んだイチオシワインは、ウィリアムヒル ナパヴァレー シャルドネでした。
ウィリアムヒル ワイナリーの歴史は、ビル・ヒルが1976年にナパヴァレーの南東部のシルベラードに80haの土地を購入した事に始まります。この土地はワイン街道と呼ばれているカリフォルニア州道29号線のオークヴィルから5kmほど東に行ったヴァカ山脈の麓で、ワイン街道の畑よりは少し標高が高いです。ビル・ヒルは1980年には56haにカベルネ・ソーヴィニヨンとシャルドネを植えました。1991年には1987年ヴィンテージがワインスペクテーター誌による世界ベストワイン100のうちの、「トップ15」に選出されると言う快挙を達成しました。その後、所有者はアライドドメック、ビーム ワイン エステーツを経て現在はガログループです。クラシックとモダンを持ち合わせた、フルボディで表現豊かなワインを醸しています。シャルドネは表情豊かなワインにするために、ナパヴァレーのいくつかの異なる栽培地域からぶどうを選んでいます。 温かいセントヘレナAVAのぶどうはトロピカルな味と丸い口当たりをもたらします。 また、オークノールAVAとカルネロスの涼しく霧のかかったぶどう畑は、ワインに爽やかな柑橘類の香りと少しキレを感じさせる酸味を与えます。ぶどうは破砕後、新樽と1空樽、2空樽の組み合わせで発酵が行われます。主発酵の後、マロラクティック発酵、その後、毎週バトナージュする事で、酵母の体が主成分の澱の溶解を促して、味わい深く、柔らかみがあり、クリーミーな口当たりを実現しました。
完熟した黄桃のような核果を思わせる香りや洋梨のニュアンス、カラメルや甘苦系のスパイスのイメージと心地良いトースト香が口中に広がります。リッチで芳醇な味わいで、長い余韻が感じられるワインです。
南瓜とミニ帆立のココナッツグラタンと合わせると、熟した洋梨や桃のニュアンスとココナッツの風味とが良くマッチします。
「お、これは合いますね!」
「カボチャがグッと、濃く、甘く感じられます」
「樽から来るバニラの香りとココナッツが絶妙ですね」
「香りのマリアージュが、香りに広がりを生んで、それが味わいの奥行をもたらしている気がします」
「ウィリアムヒルのシャルドネは、カルフォルニアの豊かな光を浴びる事で、ぎゅっと濃縮した、ちょっと、とろっとしたテクスチュアがあります。その柔らかい肌触りとグラタンのソースの粘度とが、良く合っています」
「ワインと料理の濃さ感のバランスは、マリアージュを考える上で、とても重要です」
「ココナッツ味のソースの向こう側にある、帆立のしっかりと濃い旨みをシャルドネが引き立てていますね」
「白こしょうをもう一掛け、二掛けすると、ワインのスパイシーなタッチをぐっと引き出して、面白い変化がみられます」
皆さんも、一度グラタンをこのレシピで作って見てください。そしてウィリアムヒル ナパヴァレー シャルドネとの絶妙の相性をお楽しみくださいませ。