今回のレシピは、フィデウアです。パエリアのパスタバージョンですので、スペイン料理です。フィデウアの発祥には、記録がきちんとあります。パエリアの故郷であるバレンシア州の州都バレンシアから南に55km行ったガンディアという港町で生まれました。作ったのは、ガブリエル・ロドリゲス・パストールさんで、サンタ イザベルと言う名の漁船の料理人でした。雇い主であるサンタ イザベルの船長は、大のお米好きでした。パエリアを作ると、船長が大部分を食べてしまい、若い乗組員たちはいつもお腹を空かせていました。ガブリエルは一計を案じました。お米の替わりにパスタを折って入れたパエリアを作ったら、米好き船長が食べ残すのではないか?と思いついたのです。でもその料理はとても美味しく、船長はガツガツと食べ、ガブリエルの、はかりごとは失敗に終わったのでした。やがて、その料理の美味しさは乗組員から、町中に伝わり、パスタオラ ハウスというレストランでも提供されるまでになりました。スペインのYouTubeで、「ガンディア」 「フィデウア」をキーワードに検索すると、フィデウアを作っている映像が閲覧可能です。結構、太めのパスタを使っている事が多いです。その他にも、スパゲッティよりも太くて、マカロニの様な穴あきショートパスタを使っている映像もあります。なぜか日本では、予め折ってある極細麺のフィデオがフィデウア専用と伝わったようですが、フィデオを日本向けに輸出しているガロ社には、その名もずばり「フィデウア」と言う、スパゲッティよりも少し太い穴あきショートパスタが有るのです。フィデウアに入れる素材は魚介なら何でも良いのですが、海老が主役の事が多いです。今回は海老の味噌のコクを活かしたいので、通常の時期にでも有頭で売られる事が多いアルゼンチン赤海老を使いました。海老以外の魚介はあさりとやりいかを使いました。パスタは1.6mmのスパゲッティです。これを工程のように、大体2cmくらいで折って使います。
先にあさりに火を入れます。あさりをフライパンに入れ、火に掛けて、たっぷりの白ワインで口を開かせます。今回は2人前で150cc使いました。口が開いたらあさりは取りだし、スープはサフランを加えたお湯と合わせておきます。パエリアパンで海老を炒めます。炒める途中で頭を軽く潰して味噌を出しておきます。こうしておくと、全体に海老の味噌の旨味が行き渡ります。このフィデウアに、テイスティングメンバーが選んだイチオシワインはサントリー塩尻ワイナリー 塩尻メルロ ロゼでした。サントリー塩尻ワイナリー 塩尻メルロ ロゼは、ある意味、副産物です。塩尻ワイナリーの主役は赤ワインです。フラッグシップ岩垂原メルロは参考価格8,000円、塩尻メルロは3,600円です。その主役を、より豊かな香り、より濃い味わいにする為に、タンクに入れて発酵が始まる前に果汁の一部を引き抜くのです。ワインの香りや色素やタンニンの多くは果皮に含まれています。果汁の一部を引き抜く事によって、残った果汁に対しての果皮の割合が多くなりますので、より豊かな香り、より濃い味わいの赤ワインになるという訳です。一方、引き抜いた果汁は、そもそも高級ワインにする為に栽培されたぶどうからの果汁ですから、とても素性の良い果汁です。これを、白ワインを発酵するようにつくり上げたのが塩尻メルロ ロゼなのです。
色合いは、淡く美しいサーモンピンクで、キラキラと輝いています。香りを嗅ぐとさくらんぼの印象があります。アメリカンチェリー等の色の濃いさくらんぼでは無く、佐藤錦などの色の淡いさくらんぼのイメージです。小さな赤い花を思わせる香りも漂ってきます。甘く熟した果物の印象です。口に含むと、ボリュームがあり、辛口のロゼながら、完熟による自然な甘みが、やわらかい酸味とともに口中にひろがります。終盤に、わずかな収斂味が味わいを引き締めます。味わいが長く持続する、とても良いロゼワインだと思いました。
フィデウアに合わせると、海老の味噌のコクが、より強調されました。
「海老って白ワインのイメージですが、ロゼでも凄く旨いですね」
「ぷりぷりの身だけを食べると、白ワインに少し分がある気がしますが、味噌のコクが入ると赤ワインの方が楽しいマリアージュが多いと思います。この塩尻メルロ ロゼが美味しいのも赤の要素があるからでしょうね」
「アルゼンチン赤海老の味噌って、ブラックタイガーの味噌よりも少し苦渋味を感じますよね。このフィデウアも少し苦みが有るのですが、塩尻メルロ ロゼと合わせると、その苦みがプラスに変わる気がします」
「ある意味、マリアージュなんでしょうね」
皆様も有頭海老を見つけられたら、是非、このフィデウアに挑戦してみてください。そしてサントリー塩尻ワイナリー 塩尻メルロ ロゼとの絶妙な相性をお楽しみくださいませ。