今回のレシピは、塩豚とりんごのキッシュです。キッシュには、いろいろな名前のものがありますが、オリジナルはキッシュ ロレーヌだと言われています。フランスの地域圏は2016年再編の前には、22に分けられていました。ロレーヌ地域圏は、フランス本土の5角形をした国土の東肩に有りました。一番東肩の、東側のドイツとの国境部分に、アルザス地域圏があります。その西がロレーヌ地域圏、更に西にシャンパーニュ・アルデンヌ地域圏が並んでいました。2016年再編で、この3つは纏められ、グランデスト地域圏と名前を変えました。しかし、今でもワインの地方名の場合は、東の2つを纏めてアルザス・ロレーヌ地方と呼び、シャンパーニュ地方とは分ける事が一般的です。一般社団法人日本ソムリエ協会のソムリエ教本も、この呼び方を採用しています。アルザスのワインと、シャンパンを一括りには出来ないからでしょうね。かつて3つに分かれていた中央部分がキッシュ ロレーヌの故郷なのです。
アルザス・ロレーヌ地方は戦争の度に所属する国が変る地方でもありました。まず7世紀にアルザス公国が出来ました。
9世紀にアルザスはフランク王国に帰属します。
11世紀には南ドイツに中心を持つシュタウフェン家にアルザスは従いましたので、ドイツ領になりました。
1648年にヴェストファーレン条約で、アルザスが神聖ローマ帝国(ドイツ)からフランスに割譲されました。
1870年には普仏戦争がありました。普仏戦争は皆さんも世界史で勉強されたと思いますが、フランス帝国とプロイセン王国の間で行われた戦争で講和後、アルザスはロレーヌと併せフランスから離れます。
1945年第二次世界大戦でドイツが負け、以後フランス領として現在に至っています。なので、アルザスではフランスの地方でありながら、住民のかなり多くがドイツ語の方言であるアルザス語を使います。アルザスは建物もドイツ風で、ワインもドイツワインのような細長い瓶に詰められます。
キッシュは、フランス語でQuicheですが、これはドイツ語のケーキ=クーヘン(Kuchen)がアルザス語でクーシュ=Kuche、ロレーヌ語でシューシュ=Chuecheと変化し最後にフランス語のキッシュ=Quicheにたどり着いたと考えられています。
キッシュは、専用のキッシュ型に、パイ生地やタルト生地を敷いて、卵や生クリーム、チーズ、ベーコンにほうれん草などの野菜などを混ぜ合わせた卵液(アパレイユ)を流し入れてオーブンで焼いたものです。
今回は鈴木薫先生に塩豚とりんごバージョンを考案して頂きました。りんごは紅玉を使用しました。
塩豚のレシピですから、今日思いついても、今日は作れません。豚肉に塩をすりこみ、ラップで空気が入らないようにぴっちりと包み、更に冷凍バックに入れて冷蔵庫で塩を馴染ませます。3日目位から食べる事ができ、冷蔵だと8日目位まで美味しく使えます。3日目に冷凍すれば1ヶ月くらいは保存しても大丈夫です。長めの漬け込みの方が、味が浸み込んで味わいに深みが出る気がします。塩加減は豚の塊のサイズにもよりますが、目安は200gで小さじ半分3g位、500gで大さじ半分、9g位です。
この塩豚とりんごのキッシュに、テイスティングメンバーが選んだイチオシワインは、今年11月2日に限定発売されたばかりのタヴェルネッロ オルガニコ スプマンテでした。スパークリングワインを飲まれるお客様は、飲まれる量や頻度がバラバラです。少数ですが、毎日のようにスパークリングワインを飲まれる、通称「シュワリスト」と呼ばれる「ヘビーユーザー」や「ウルトラヘビーユーザー」のお客様がいらっしゃいます。人数は少ないのですが、消費量はかなり多いグループです。逆にスパークリングワインを飲むのは、誕生日とかクリスマスくらいで、せいぜい、年に1回くらいの「ライトユーザー」のお客様は人数が非常に多いです。この対称的な2つのグループの間に、2-3か月に1回位は飲むよ、と言う「ミドルユーザー」のお客様がいらっしゃって、近年その人数が増えてきています。その方々がスパークリングワインを空けたいなぁと思われるのは「そんなには特別でない、小ハレの時」や「家族でプチ贅沢を楽しむ時」などのようです。いずれにしても、スパークリングワインの伸長傾向はまだ続きそうです。また昨今の消費者意識の高まりから、オーガニックワイン市場も堅調に伸びています。ぶどう栽培自体、同じ畑で何十年にも渡って継続し栽培し続けるのが基本です。環境に優しく、持続可能である方が好ましい事は言うまでもありません。
今日、イチオシに選ばれたタヴェルネッロ オルガニコ スプマンテは、イタリアNo.1※ワインメーカーのカヴィロ社の新製品です。11/2から日本で発売されてますが、世界に先がけて、日本が最初の発売国なのですよ。ぶどうはトレッビアーノが70%とペコリーノが30%です。トレッビアーノはトレッビアーノ トスカーノ、トレッビアーノ アブルッツェーゼ、トレッビアーノ ロマニョーロやトレッビアーノ ジャッロなどを合わせると、白ぶどうとしてはイタリアでの栽培面積最高です。香りはそんなに強い品種ではありません。爽やかな柑橘や青りんごなどの香りを思わせる品種です。フルーティな味わいで、フレッシュな酸味が特徴です。ペコリーノは、チーズ好きの方なら、語源が直ぐにお判りになろうかと思いますが「羊」です。ペコリーノ種のぶどうは、皮が薄くて、羊が好んで食べるからとか、羊飼いが、この品種の苗を売り歩いていたから、とかいろいろ言い伝えられて、どれが正解か判りませんが、いずれにしても羊が絡んで命名されたようです。イタリアの地図のブーツのふくらはぎにあたるマルケ州や、アブルッツォ州で多く栽培される地場品種です。マルケ州のDOCGのオフィーダの白は、この品種で醸されます。アカシア・ジャスミンなどの花を思わせる香りが豊かで、香りの豊かな品種に、よくみられるほろ苦さがあります。グラスに注ぐと、若々しいグリーンがかった淡いレモンイエローで、きめ細かく軽やかな泡立ちです。心地よい柑橘や黄桃を連想させるほどよい香りがあります。口にいれると、ふんわりとした甘さと、まろやかな酸味のフレッシュで親しみやすい味わいのスパークリングワインです。
塩豚とりんごのキッシュをかじって、タヴェルネッロ オルガニコ スプマンテを飲むと、りんごの香りが、ぐぅっと強まるのが判ります。鼻からもリんご・・・・、口からのフレーヴァーとしても、りんごに一瞬支配され、その後に豚の旨みがじわっと上がってくる感じです。
「合いますね」
「トレッビアーノには、りんごのニュアンスがありますからね、共鳴するのでしょうね」
「豚の旨みが半端ないですね、塩豚って凄い調理法ですよね」
「合わせるワインで、キッシュのバターを強く感じたりするものも有りますが、オルガニコは爽やか、軽やか強調型です」
メインとして熱々を食べてもらうなら、樽の効いたリッチタイプのシャルドネなんかも美味しいでしょう。熱々で卵液(アパレイユ)を固める時には、掲載のレシピより卵の割合を高めにしないと、上手く固まりませんからご注意ください。今回のイチオシの塩豚とりんごのキッシュとタヴェルネッロ オルガニコ スプマンテの取り合わせは、キッシュを冷まして、冷たい前菜として楽しんで頂くと美味しい組合せです。
皆様も是非、塩豚とりんごのキッシュに挑戦してみてください。そして世界で真っ先に、ここ日本で発売になったタヴェルネッロ オルガニコ スプマンテとの抜群のマリアージュをお楽しみくださいませ。
※シンフォニーIRIグループ2020年12月報告データ(イタリア100㎡以上スーパーにおける)