今回のレシピは、豚の低温ロースト トンナートソースです。低温ローストは、ぱさぱさになり易い素材をローストする時に便利な技です。ポイントは肉の中心が、たんぱく質の凝固温度である62℃以上になるように、きちんと加熱され、かつ、たんぱく質の分水作用開始温度の68℃未満に抑える事です。たんぱく質の分水作用開始温度とは、それ以上の温度に加熱すると、たんぱく質が水を放出し始める温度の事です。普通にフライパンで焼き過ぎたり、鍋で煮過ぎたりすると、温度がどんどん上がり、たんぱく質が水を放出してカチカチ、ぱさぱさになるのです。62℃以上で68℃未満に仕上げるのには、結構、技術が要ります。その条件を安定的に達成する為には、オーブンを低温にしてゆっくり火を通す事と、肉を十分室温に戻しておく事が大切です。出来れば、肉の塊に刺して使える串型の温度計を中心に刺して、アラームを62℃に設定して置くと失敗しません。トンナートソースとは、イタリア風ツナマヨソースのことを言います。元々はヴィテッロ トンナート(Vitello tonnato)というピエモンテの夏の郷土料理のソースでした。仔牛の塊肉をソテーしてから低温でローストし、冷ましたものを薄切りにしてトンナートソースを掛けて食べます。イタリア料理のコースでいうと前菜の一皿目か二皿目に出てくる感じです。トンナートソースの味わいのポイントはケイパーです。万能ソースで豚でも牛でも鶏でも魚でも野菜でも、何にでも美味しい魔法のソースですよ。
豚肉は室温に戻しておき、塩、こしょうを強めにすり込みます。フライパンにオリーブオイルを熱し、全体にしっかりと焼き色をつけます。
120℃に温めたオーブンに、バットに網をおいて、200ccほどの水を張ります。豚肉を乗せて、1時間焼きます。焼きあがったら、アルミホイルで包み、30分ほど保温すれば、豚の低温ローストは出来上がりです。トンナートソースは、レシピの分量は、作り易い分量を書いています。作り置きすると、冷蔵庫で5日ほど保存ができます。肉、魚、野菜のソースとして、またサンドイッチやディップとしても使えます。ツナ缶を1缶(約135g)、アンチョビ3~4枚、ケイパーを大さじ1杯とにんにくすりおろしを1かけ分、オリーブオイル、生クリーム、マヨネーズを大さじ2杯づつで、これをフードプロセッサーで滑らかになるまで攪拌したら出来上がりです。豚の低温ローストを薄切りにすると、低温加熱の特徴的な、美しいピンク色です。トンナートソースの黄色と色のバランスがとても良く、一皿がとても映えます。
この豚の低温ロースト トンナートソースに、テイスティングメンバーが選んだイチオシワインはサントリージャパンプレミアム かみのやま産メルロでした。サントリージャパンプレミアム かみのやま産メルロは、今年行われたフェミナリーズ世界ワインコンクール2021で金賞を受賞しました。フェミナリーズ世界ワインコンクールは今年で15回目になる世界中の女性ワイン専門家が選ぶワインコンクールなのです。
畑は、宮城県との県境から500m宮城県側にある、蔵王の御釜から西南西に12km行ったあたりの標高350mから390mの南向き斜面にあります。長辺150m短辺100mのほぼ長方形で、150mの長さで標高差が40mもありますから、かなりの傾斜です。畑に立つと、南から吹き上がってくる風が心地良いです。収穫後、ぶどうを冷蔵輸送し、低温で100%除梗します。タンクで発酵させて、そのままタンク中でマロラクティック発酵(ワイン中のリンゴ酸を乳酸菌の働きで乳酸に変える発酵)をします。樽熟成期間はフレンチオークで13ヶ月です。持ち味の果実味を活かす為に新樽は敢えて使いませんでした。グラスに注ぐと美しいルビー色です。赤ワインとしてはそんなに色の濃い方ではありません。グラスに鼻を近づけるとラズベリーやザクロ、そしてさくらんぼなどの赤いベリーを思わせる香りが華やかです。ブルーベリーの印象もあります。スパイシーさや、ちょっと森のニュアンスもあります。スワリング(ワインをグラスの中で回し空気と触れ合わせる)すると香りがグッと開いて力強く香り立ちます。口に含むと柔らかみのあるアタックです。ぶどうが完熟した甘やかさがあり、綺麗な酸と上手くバランスしています。タンニンは穏やかで、中盤の旨みのある心地良いワインです。
豚を齧ると、低温ローストで閉じ込められていた肉汁が口に溢れます。そこにかみのやま産メルロを口に含むと、濃い旨味の肉汁とワインの充実した果実がマリアージュするのが判ります。
「圧倒的なマリアージュですね」
「この組み合わせは凄いです」
「赤系のベリーのコンポートを乗せて食べている位に果実味を感じます」
「かみのやま産メルロの果実味はピュアで、凝縮感がありますからね」
「それに豚肉は、元々果実との相性が良いですよね」
「ワインと合わせると、豚の味わいがぐっと引き立つと言うか、前面に出てきて『どうだ!俺は極上の豚肉だ!!』と主張します」
「そうそう、豚肉もワンランク上がる感じですよね」
トンナートソースと合わせると、ソースのツナも、とても美味しく感じられます。
「かみのやま産メルロは柔軟性がありますから、魚とも、とても相性が良いのです」
「トンナートソースのケイパーが効いていますね」
「かみのやま産メルロの、スーボアと言うか、雨上がりの森に入った時の湿ったニュアンスがトンナートソースで心地良く広がります」
「トンナートソースは幅広い素材と相性が良いので、付け合わせはその日に有る物が何でも使えて便利ですね」
皆さまも是非、豚の低温ロースト トンナートソースに挑戦してみてください。そしてサントリージャパンプレミアム かみのやま産メルロとの素晴らしい相性をお楽しみください。