今回のレシピは、ヤム ナムトック ムー(タイ風チャーシューの和え物)です。ちなみにタイ語でムーは豚、ナムトックは落ちる水で、滝のことです。豚の肩ロースの塊をローストすると、肉汁がポタポタ落ちますね。その様子を滝と言ってます。ヤムは混ぜる、和える、ミックスするのヤムで、「滝様肉汁チャーシューの和え物」です。豚肉は、シーズニングソースと白ワインに1時間以上漬けてから、200度に温めたオーブンで、大きさにもよりますが、300gの塊で30分程度焼きます。シーズニングソースは、ナンプラーと並ぶタイの代表的調味料です。日本のたまり醤油に、更にコクを付けた感じの癖になる味わいです。ネットでも購入出来ますし、コーヒー豆屋さんが、全都道府県で店舗展開する輸入食材屋さんなら1本200円ちょっとで買えます。駅ビルやショッピングモールに良く出店されているあの店です。シーズニングソースの原材料表示を見ると、大豆、コーンプロテイン、食塩、砂糖 で添加物に調味料(核酸)とあります。この核酸はイノシン酸やグアニル酸などの旨味成分で、シーズニングソースの旨みの源になっているようです。
食感のポイントは煎り米です。米を小鍋でキツネ色になるまで良く煎ります。工程の写真位の色合いになるまで深く煎ります。煎り上がった米はビニール袋に入れ、別の小鍋の底などで砕きます。ソースはナンプラーとライム絞り汁、レモングラスと砂糖です。
さて、このヤム ナムトック ムーにティスティングメンバーが選んだイチオシワインはレゾルム ド カンブラス ソーヴィニヨン・ブランでした。レゾルム ド カンブラスはフランスNo.1ワインメーカー※1カステル社が手掛けるフルーティな南フランスのワインです。カステル社は1949年創業で、ボルドーを本拠地としています。カステルファミリーによる家族経営で、創業者で会長のピエール・カステル、社長はアラン・カステル、品質責任者はフィリップ・カステルです。フランス全土に2500もの契約栽培農家があり、シャトー ベイシュヴェルを始めとする20のシャトーやワイナリーを所有しています。年間生産量は、なんと5億本です。レゾルム ド カンブラスは国際コンクール「ジルベール&ガイヤール」にて全ラインナップ金賞受賞獲得※2の快挙を達成しました。ジルベール&ガイヤールとは、1989年にフランスのパリで創刊されたワイン専門のガイド誌の名前で、その雑誌社が主催するワインのコンクールも同じ名前です。ソムリエを含むプロのテイスターが出品アイテムを試飲し採点を行って優秀賞を決めるコンクールなのです。
レゾルム ド カンブラスの「レゾルム」とは、楡の木を示す言葉です。英語ではelm treeで、昔から世界中に分布する樹です。ヨーロッパでは「楡の木とぶどうは、良い相性の象徴」とされます。古代ローマ時代のイタリアではぶどうを仕立てる支柱として楡の木を使ったそうです。まず畑に楡の木を植えて、樹高3m程度のところで、それ以上高くならないように、幹を切ると楡の木は横に枝を広げるそうです。その枝にぶどうの蔓を絡ませて栽培したそうです。また、楡の木の中には巨大になる品種もあり、中世では楡の木を材料にして大聖堂や船が造られ、その後は楽器や鉄道の枕木にも使用されました。ヨーロッパの人々にとって楡の木は、非常に馴染み深く、身近な存在なのです。また、「カンブラス」は、南仏の典型的な語感を持つ言葉ですが造語です。伝統的な建築様式の農家をイメージして造られました。「レゾルム ド カンブラス」の名前には、明るい南仏の空のもと、楡の木陰に集って、和気藹々と大きな木の食卓を囲んで談笑する・・・・そういった感じの楽しいシーンで、「気軽に高品質のワインを楽しんでもらいたい」というつくり手の思いが込められているのです。今回イチオシに選ばれたソーヴィニヨン・ブランは、甘く熟したグレープフルーツやゴールドキウイを思わせる果実系の香りが主体で、ハーブ系の香りは、やや控えめです。フレッシュでジューシーな果実味と、イキイキとした酸味が特長の、爽やかな辛口白ワインです。
チャーシューに玉ねぎとミント、煎り米とソースを乗せて口に運ぶと、豚肉の肉汁がジュワッと出てきます。そこに玉ねぎのシャキシャキにミントとレモングラスの爽やかさが広がります。
「噛むとチャーシューに閉じ込められた肉汁の濃厚な旨みが広がります」
「豚自体の旨みにシーズニングソースの旨みが加わっていますから濃厚ですね」
「でも、ミントやレモングラスで、清々しく、軽やかになっています」
「そのハーブの香りが、ソーヴィニヨン・ブランと出合うとぐっと強まりますよね」
「レゾルム ド カンブラス ソーヴィニヨン・ブラン自体は、ハーブ系の香りは、表面的には強く無いのですが、ソーヴィニヨン・ブランですから、その要素もしっかりと持っているのでしょうね。ハーブと出会う事でその香りが前面に出てくる感じです」
「特にミントのタッチが強まって爽やかです」
「煎り米のフュメな感じもソーヴィニヨン・ブランと良く合っています」
「ソーヴィニヨン・ブランはカリフォルニアでは、一時期フュメ・ブランと呼ばれていましたからね」
皆様も是非一度ヤム ナムトック ムーを作ってみてください。そしてレゾルム ド カンブラス ソーヴィニヨン・ブランとの素晴らしいマリアージュをお楽しみくださいませ。
※1 IMPACT DATABANK 2019, World’s Top 10 Wine Marketers
※2 ジルベール&ガイヤール2020にてカベルネ・ソーヴィニヨン、シャルドネ、メルロ、ソーヴィニヨン・ブラン、ロゼ、ピノ・ノワールが金賞受賞