この料理に合うワイン

レシピに戻る

1st

メゾン カステル マルゴー 

メゾン カステル マルゴー

フランス
ぶどう品種 カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロ

今回のレシピは、ラムロースト ミントソースです。今から37年前、東京でワインの営業として得意先を訪問するようになった時に、先輩から「フランス料理で最も格の高い肉は羊、それも子羊だ」と聞いて驚きました。それまでは牛肉こそが最も品格の高い肉であると盲信していたからです。肉の生産量では、世界で豚肉、鶏肉、牛肉に続く第4位ではありますが、フランス料理では、やはり最も格式の高い肉の地位を占め続けています。豚や牛と違い、宗教的な禁忌や神聖として食べない、などが無い事もあり羊は世界で幅広く食べられています。FAO(Food and Agriculture Organization)世界食糧機関の2019年データによると羊肉は世界で年間1000万トン生産されています。その1/4が中国で生産されダントツのトップです。2位がオーストラリア、3位ニュージーランドで以下トルコ、アルジェリア、イギリスと続きます。ポーイヤックの乳飲み羊で有名なフランスは、30位と、意外に上位ではありません。日本でも、最近はテレビの特集などで日本産の羊の美味しさが報道されるようになりましたが、大体何位くらいだと思われますか?実は142位で年間約200トン、トップの中国の千分の一以下の生産量なのです。日本は羊肉に関税がかからない事もあり、国産の羊肉は、まだまだ少数派なのです。

ヒツジは鯨偶蹄目(くじらぐうていもく)ウシ科ヒツジ属に属する動物です。ムフロンやアルガリなどの、角が大きな複数の原種を飼い馴らして家畜にしたようです。家畜としては、実は古株です。最初の家畜はイヌであると言うのが定説で、約1万年前オオカミを飼い馴らしてイヌにしました。ヒツジは第二グループで、今から約1万年前にヤギやブタと同じ位の時期に家畜化されました。ちなみにウシは、第二グループから約2000年後に家畜化されたと言われています。

日本で羊をたくさん食べる都道府県は、皆さんもご存じの北海道です。道内あちこちに、ジンギスカンのお店が沢山ありますし、これからの暖かくなる季節には屋外での羊のバーベキューが良く行われます。総務省統計局の家計調査(二人以上の世帯) 品目別都道府県庁所在市及び政令指定都市(※)ランキングの(2018年~2020年平均)に面白いデータがあります。「他の生鮮肉」という名前で集計されているのですが、これは「牛や豚、鶏以外の動物肉」という意味です。金額、消費量とも1位は札幌市で、この原動力は、鹿や熊の影響も、多少はあるかとは思いますが、主力は勿論羊です。金額の2位は熊本市で、これは馬刺しですね。消費量の3位が那覇なのですが、これは多分山羊だと思われます。

日本でも、数年前から、何度となく羊肉ブームがやってきています。鉄分やビタミンB12が多く含まれ、貧血に良いというのは昔から知られていました。羊にはカルニチンが非常に多く含まれるのですが、厚生労働省(eJIM:イージム)『「統合医療」に係る情報発信等推進事業』のHPによると、カルニチンは長鎖脂肪酸をミトコンドリア内に運びこみ、燃焼する効果があるそうです。羊肉は一見すると脂が沢山付いていますが、それにも増して、脂を燃やす効果も大きいのです。中国やモンゴルでは「女性のための肉」と呼ばれているのですが、その理由は、羊肉は体を温める効果があると信じられています。また、薬膳においては、「すべての食べ物には、それぞれ健康効果がある」と考え、それを上手く組み合わせる事で「医食同源」が達成できると考えます。そして、食材を「熱性・温性・平性・涼性・寒性」の「五性」に分類しています。羊肉はその中の熱性=体を温める食べ物に分類されているのです。羊がモンゴルや中国でも寒いエリア、そして日本でも北海道で愛されるのは、道理に適っているのです。そういった健康効果も、有りはしますが、羊の良い所は何と言っても美味しい事です。東京では、数年前から世界中の羊肉料理が食べられる「羊フェスタ」が中野セントラルパーク(なかのアンテナストリート)で開催されています。去年はコロナの影響で中止になったようですが、今年は11月に開催する予定だそうです。

今回は、その羊をワインスクエア流のワインに良く合うソースで頂きます。マリアージュ実験では、オーストラリア産の骨付のアバラ部分を切り分けたものを使用しました。強めに塩、こしょうをし、にんにく薄切り、オリーブオイルと一緒に保存用ポリ袋に入れて半日ほどマリネします。焼くのはフライパンで、マリネした時に使ったオイル、にんにくごと羊を並べて、焼き色をしっかりとつけます。ミントは葉をちぎり、粗みじん切りにして、ボウルに入れて、工程の写真のように熱湯をかけて一旦水切りをします。ビネガー、はちみつ、塩を加え混ぜ、オリーブオイルも加えさらに混ぜ合わせたら、ミントソースの出来上がりです。

このラムロースト ミントソースにテイスティングメンバーが選んだイチオシワインは、メゾン カステル マルゴーでした。メゾン カステル マルゴーは、フランス全土のワインを手掛ける、フランスNo.1ワインメーカー、カステル社の最新ブランドで「伝統×トレンド」をキーワードに製品開発が行われました。創業以来、カステル社が長く信頼を置くマルゴー村の契約農家から、最もその土地の個性を表現する畑・区画のぶどうを厳選しました。ボルドー左岸としての力強さは持ちながら、マルゴーらしいナイーブな柔らかさを併せ持つという魅力を最大限に引き出しました。フランスワインを知り尽くしたカステル社の持つノウハウの結集体とも言えるワインです。産地の味わいの個性は大事にしながらも、現代の嗜好のトレンドに合わせて、渋みや重さを抑えたやさしい飲み口のモダンな味わいに仕上がっています。ダークチェリーやカシスのような果実の香り、スミレの花や針葉樹、スパイスを思わせる複雑さに加えて、この産地特有の繊細で円みのある果実味と、キメ細かいタンニンが魅力の、上品でしなやかな味わいの赤ワインです。

ラムロースト ミントソースと合わせると、グラスを鼻に近づけただけで羊の草食動物に共通の、少し癖のある香りとメゾン カステル マルゴーの香りとが、もう既にマリアージュしています。

「ボルドー左岸の上物と子羊は、『美食の王道』とか『鉄板の組み合わせ』とか言われますが、やはり素晴らしい相性ですね」

「子羊を噛んで出てくる肉汁の旨みと鉄っぽさが、マルゴーのしなやかで強靭な酒質とぴったりです」

「ソースのミントが、カベルネ・ソーヴィニヨンの品種香とも言われる青草のニュアンスと良く合っていますね」

「そうそう、ワイン単体でテイスティングすると、青草のニュアンスが目立っている訳ではないのですが、ミントソースと出会う事で、潜在的にある香りが出てきています」

「今のつくり手達は、青草のニュアンスをもたらすと言われるメトキシピラジンが表に出ないように注意を払っていますね」

濃厚な旨みの子羊を、爽やかに食べさせてくれるミントソースで仕上げた逸品です。皆様も是非試してみてください。そしてメゾン カステル マルゴーとの鉄板とも言われるマリアージュをお楽しみください。

※ フランス企業で2019年売上数量が最大(IWSR2020)

2位に選ばれたのは、同じメゾン カステル AOCシリーズのボルドー右岸代表であるメゾン カステル サンテミリオンです。ぶどう品種はメルロ、カベルネ・フランです。グラスに注ぐとブラックチェリーやプルーンを思わせる強い果実の香りと、オーク樽由来の甘くて香ばしいカフェラテのような香りがバランス良く調和しています。厚みのある果実味と、まろやかな酸味が特長の、コクのある味わいの赤ワインです。マルゴーよりも果実の完熟由来の甘やかさ、リッチさのあるワインです。子羊の脂とメゾン カステル サンテミリオンの若々しいタンニンとがマリアージュして甘さに転換します。
「力強いタンニンと動物性脂肪とのマリアージュの典型的なパターンですね」
こってりとした、脂肪が甘さに変わるので子羊が軽やかになります。タンニンが甘さに変わるのでワインも軽やかになって、両方が美味しくなるWin-Winの関係を是非、実感してみてください。

2nd

メゾン カステル サンテミリオン 

メゾン カステル サンテミリオン

フランス
ぶどう品種 メルロ、カベルネ・フラン

第3位に選ばれたのは、サンタ バイ サンタ カロリーナ カルメネール/プティ・ヴェルド、通称サンタ ブラックでした。チリのお手軽ワインながら、その素直な凝縮感と濃厚な味わいで人気です。ラムロースト ミントソースと合わせると、香りが広がるのが判ります。羊の、少し癖はあるけれども心惹かれる香り、ミントの爽やかで涼やかな香り、カルメネールからの赤系のベリーのニュアンスやコーヒーを思わせる香り、プティ・ヴェルドからのスパイシーさ、それらが合わさって複雑で重層的な香りを織り上げています。充実した果実感も、濃密な羊の肉汁の旨みと良く合っていました。

3rd

サンタ バイ サンタ カロリーナ カルメネール/プティ・ヴェルド 

サンタ バイ サンタ カロリーナ カルメネール/プティ・ヴェルド

チリ
ぶどう品種 カルメネール、プティ・ヴェルド

レシピに戻る