この料理に合うワイン

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1st

コステルス デル プリオール 

コステルス デル プリオール

スペイン
ぶどう品種 ガルナッチャ、カリニャン

今回のレシピは、オックステールの赤ワイン煮、煮込み料理です。煮込む為には鍋が必要です。日本で発掘された一番古い鍋は青森県外ヶ浜町にある大平山元 I 遺跡の物です。大平山元 I 遺跡は今から16,500年前の縄文時代早期の遺跡です。その鍋の底は平らで、後の弥生時代に主流になる底の尖った、土に突き刺すタイプの物とは異なっています。内側に炭水化物がこびりついており、煮炊きをしたと推測されています。世界最古の土器は中国・江西省の洞窟遺跡で発見され、約2万年前と推定されています。この土器の内側にも、炭水化物が付着しており、煮炊きした痕跡とされています。この土器の鍋の発明は食生活を一変させました。魚や動物は、生のままでも食べる事は可能ですし、加熱したければ、枝などに刺して直接火で炙れば焼けます。一方、ドングリや穀類は、生では消化しづらい物が多いです。また、火で炙れば燃えてしまいます。水と共に加熱する事の出来る鍋が出来た事で、穀類は飛躍的に消化しやすくなり、ドングリは灰汁を抜くことが出来るようになりました。また、動物も、長時間煮込む事が可能になれば、筋などの堅くて焼いただけでは食べられなかった部位も食べる事が出来るようになります。ただ、堅い部位が柔らかくなる位の時間、煮込み続けるのには、土器は不適で、青銅製の鍋が出来る青銅器文明時代、今から4000年くらい前まで待つ事になります。中国、エジプト、メソポタミアで同じような時期にコルドロン(Cauldron)と呼ばれる金属製の大鍋が出来ました。コルドロンはケトル(Kettle)と呼ばれる事もあります。日本語の鍋は「な」(菜や肴)を煮る「へ」(瓮)で「なへ」から「なべ」に転じました。瓮は粘土を焼いて作った甕の事です。平安時代から鉄製のものが作られるようになりました。江戸時代には、欠けたり割れたりしない金属製が主流になり金偏の鍋の字が充てられるようになりました。

今回は、オックステールの赤ワイン煮です。牛テールは塩、こしょうをしっかりと振り、小麦粉を全体にまぶし、しっかりと焼き色をつけます。玉ねぎ、にんじん、セロリを薄切りにして茶色になるまでしっかりと炒めます。あとは赤ワインをたっぷりと入れて、肉がほろりと煮崩れる寸前まで良く煮込めば完成です。

この、オックステールの赤ワイン煮にテイスティングメンバーが選んだイチオシワインはコステルス デル プリオール、D.O.Caプリオラートのワインでした。皆さんはD.O.Caプリオラートの名前は勿論ご存知だと思います。スペインの格付けで最高ランクのD.O.Caは僅か2エリアで、リオハと、このプリオラートだけが認定されているのです。しかし、実際にプリオラートのワインを飲んだ事のある方は、割と少ないと思います。ヒュー ジョンソンとジャンシス ロビンソンのワールド アトラス オブ ワインの第6版には、プリオラートの紹介の冒頭に「1990年に州政府が刊行したカタルーニャ・ワイン1000年史という大著があるが、この中でプリオラートは言及さえ、されていない。だが1990年代後半、この小さなワイン産地はスペインで最も有名で最も高価なワインを産出するようになった」と記述されています。僅か20数年で飛躍的な進化を遂げた事になります。ワールド アトラス オブ ワインの初版本(1977年発行)には、プリオラートの紹介は、たった一行「プリオラートは強い辛口赤の名前」と記されているだけです。ワールド アトラス オブ ワインの第6版には、先ほどの文章に続いて、プリオラートの大変革に関して、「ひとりの男によって引き起こされた」と記されている。その男の名はルネ バルビエ、プリオラート5人衆の1人です。彼がこの地の可能性に気が付いたのは1979年でした。フィロキセラがこの地を襲う前には5000haの畑がありましたが、1979年には、カリニャンが600ha残っているだけでした。彼は5人の仲間と5つのクロス(畑)のワインを売り出し、大成功を収めました。その後、彼はフレシネにボデガを売却しました。プリオラートの特徴はリコレリャ(スレート粘板岩)です、ごつごつしたスレート粘板岩の険しい斜面にスレートが砕けた土壌の畑がテラス状に切り拓かれています。プリオラートは夏暑く、42℃から44℃にもなり、冬は氷点下10℃という過酷な温度条件です。降水量も平年で300mmしか降りません。植えて3年も経過しても樹体は大きくならず、日本で植えて1年経ったぶどうと変わらない大きさにみえます。スレート粘板岩は、変成岩で泥岩や砂岩に強い圧力や熱がかかり続けたために、薄く剥離する性質を持った岩です。割れ目に沿って、水がしみこみ、根っこは下に下に伸びます。表土が乾いていっても、地下には水分があって、ぶどうは生きていけるのです。コステルス デル プリオールはガルナッチャ50%とカリニェナ50%で醸され、100%フレンチオーク樽で12ヶ月熟成されました。良く熟れたプラムやブラックチェリーのような香りや、樽由来のバニラ香が感じられます。口にいれると非常に濃厚な果実味、心地良い酸味、タンニン分も、しっかり感じられる力強いワインです。オックステールの赤ワイン煮と合わせると、コステルス デル プリオールのコクや奥深さに磨きがかかる感じです。

「煮込んだオックステールの、コラーゲンたっぷりで、濃厚でねっとりとしたテクスチュアに、凝縮感のあるコステルス デル プリオールが良く合います」

「力と力のせめぎ合いですね」

「コステルス デル プリオールって、ヨーロッパで良く売られている、黒い位に色の濃いチェリーを思わせる香りがありますよね。その香りとオックステールが合わさると、キルシュワッサーの様な香りに変化して楽しいです」

「牛テールも、和牛を使うと、脂に和牛独特の香りと旨みがあります。その香りと旨みがコステルス デル プリオールで更に持ち上げられる感じです」

ワインのスパイシーなニュアンスも煮込みを引き立てる抜群のマリアージュでした。牛テールも普通のスーパーでは取り扱いが無い所が多いですが、今はネットで簡単に手に入ります。じっくりと時間を掛けて作るオックステールの赤ワイン煮は格別の味わいです。是非是非挑戦してみてください。そして、コステルス デル プリオールとの抜群の相性をお楽しみください。

2位に選ばれたのはチェザーリ ジュスト ヴェネト IGTでした。チェザーリ ジュストの格付けはヴェネト IGTです。ヴェネト州のコルヴィーナ種、ロンディネッラ種やコルヴィノーネ種を手摘みで収穫しアパッシメント(陰干しでの乾燥)されますが、期間は2週間~1ヶ月程度と比較的短く行われます。その後、ステンレスタンクにて発酵を行い、ワインとなります。 陰干しワイン特有のジューシーさや、凝縮感を保ちながら、決して重くなりすぎない味わいが特長です。チェリー、さくらんぼのようなフルーツの凝縮感があります。しっかりとした構造力がありますが、フレッシュな果実のみずみずしさも残しており、バランスの取れた赤ワインです。オックステールの赤ワイン煮と合わせるとチェザーリ ジュストの、潜んでいた甘さが表に出てきます。滑らかなテクスチュア同士で、口の中に旨みが広がります。コステルス デル プリオールと合わせた時と同じような、料理もワインも双方が上がる、幸せなマリアージュでした。

2nd

チェザーリ ジュスト ヴェネト IGT ※終売しました。

チェザーリ ジュスト ヴェネト IGT
※終売しました。

イタリア
ぶどう品種 コルヴィナ、メルロ

3位に選ばれたのは、登美の丘ワイナリー 登美の丘 赤でした。登美の丘ワイナリー自園産ぶどう100%を使用し登美の丘ワイナリーで醸造したワインです。今回、マリアージュ実験に用意したヴィンテージは2017年です。2017年は1月~6月までの気温が高めに推移し、降水量は、梅雨明けが早かったことも幸いし、平年の約7割と少なかったです。9月に入ると好天が続き、9月上旬に最低気温が下がったことで、ぶどうはゆっくりとアロマを蓄えながら成熟し、適度に酸味が保持されました。登美の丘ワイナリーの自園産赤ワインとしては、やわらかい味わいのヴィンテージとなりました。メルロ48%、カベルネ・ソーヴィニヨン22%、プティ・ヴェルド15%、カベルネ・フラン15%で醸し、フレンチオーク樽100%で12ヶ月熟成しました。色は、やや紫を帯びたガーネットです。ダークチェリーやイチゴを思わせる赤系フルーツの香りと、バラやスミレなど花の香りが上品に調和しています。口当たりは柔らかく、熟した果実の自然な甘やかさが口中に心地良く拡がり、程良いタンニンで、余韻の長いワインです。オックステールの赤ワイン煮と合わせると、日本のワインですから、コステルス デル プリオールやチェザーリ ジュストのような濃密さは無いのですが、テールにそっと寄り添い、牛の旨みを上手に表現していました。繊細なワインならではのバランスの良さを感じました。

3rd

登美の丘ワイナリー 登美の丘 赤<br>※フロムファームにブランド名が変わりました。

登美の丘ワイナリー
登美の丘 赤
※フロムファームにブランド名が変わりました。

日本
ぶどう品種 メルロ、カベルネ・ソーヴィニョン、プティ・ヴェルド、カベルネ・フラン

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