この料理に合うワイン

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1st

ジョルジュ デュブッフ ボジョレー ヌーヴォー 

ジョルジュ デュブッフ ボジョレー ヌーヴォー

フランス
ぶどう品種 ガメ

今回のレシピは、鴨の赤ワイン鍋です。鴨はカモ目カモ科の鳥類のうち、雁(カリ)に比べて体が小さく、首があまり長くないものを一般的に呼びならわしている名前です。大変美味しい鳥で、古来から食用にしてきました。貝塚から発掘される鳥の骨で最も多いのは鴨だそうです。奈良時代には上流階級も食べていたようですが、時代が下るにつれ、上流階級で最も高貴な鳥は雉、次いで鶴とされるようになり、鴨は庶民の食べ物の位置づけとなってしまいました。でも、鴨が美味しい鳥である事には変わりがありません。その美味故に、諺などに使用される事も多いです。麻雀などの賭博で、弱い人の事を「鴨」と呼んだり、従兄弟同志は鴨の味、隣の貧乏、鴨の味など、いくつもあります。鴨が葱背負ってやってくるは、鴨だけでも美味しいのに、相性抜群の葱まで背負って、向こうから来てくれる、と言った意味合いですよね。また、身近な鳥であったので、地名にも良くつかわれます。京都や千葉県の鴨川、鴨池、鴨前、鴨地、鴨居、鴨島、巣鴨など数多くあります。また、住宅用語にも鴨居がありますね。和室の引き戸・障子・ふすまなどをはめる部分の、上部に渡した溝のついた横木の事を鴨居と呼びます。また、イチョウは普通、銀杏か公孫樹と書き表しますが、鴨脚樹とも書きます。サントリーのあるお台場にも、冬になると様々な種類の鴨が渡ってやって来ます。マガモ、オナガガモ、スズガモ、コガモあたりです。カルガモやオシドリは、留鳥なので年中見かけます。

食べる鴨で飼育されたものは、大きく分けて2種類あります。マガモを飼いならした家鴨(アヒル)とマガモとカルガモを交配させた合鴨(アイガモ)です。猟で狩る方法は、散弾銃と網です。網は無双網猟と呼ばれる狩猟方法が全国にあります。おとりや、くず米などの餌で寄せた獲物を、網に絡め取る猟で、池や水を張った田んぼが猟場です。寝かせた長さ4から5メートルの竹竿2本の間に15メートル程度の長方形の網を張り、網のそばにおとりの鴨を泳がせ安心させ、網のそばに餌を撒いておいて、おびき寄せます。鴨達が餌を食べに集まったら、網を一気に引き起こして被せて一網打尽にすると言う訳です。網を使った別の伝統猟法が石川県の加賀市にあります。加賀温泉駅から西に3kmほど行った片野鴨池の手前には「蛇越え 坂網猟場」と呼ばれる場所があります。300年以上の伝統ある猟法なのですが、夕闇迫るなか、ねぐらに帰る鴨を小高くなった峠の稜線である蛇越え 坂網猟場に潜んで待ち受け、真上を飛び去ろうとする鴨に、三角形の網の付いた棒を空高く投げて、鴨をキャッチします。石川県民族文化財に指定された伝統猟法で熟練の猟師が、五感を研ぎ澄まして行う猟です。年間で200羽ほどが捕獲され、地元の高級料亭で提供されています。フランスでも鴨は高級食材です。天然物や半飼育の青首鴨はコルヴェールと呼ばれ、とても高価です。また、鴨のフォアグラである、フォア ド カナールを作るために肥育された鴨の胸肉はマグレ カナールと呼ばれ脂の乗りは最高です。

今回のレシピは鴨の赤ワイン鍋です。鈴木薫先生にワインスクエアらしいアレンジを考えていただきました。今回の鴨は岩手県産の合鴨でした。鴨肉は皮目に格子状に切り込みを入れ、皮目を下にして並べてしっかりと焼き色がつくまで焼いてスライスします。副素材は、古来より鴨と相性が良いとされるネギと、餅とクレソンです。ネギも餅も焼き色を付けておきます。出汁は昆布、それに赤ワインをたっぷりと注ぎ入れます。

この、鴨の赤ワイン鍋にテイスティングメンバーが選んだイチオシワインはジョルジュ デュブッフ ボジョレー ヌーヴォーでした。勿論、マリアージュ実験の時にはヌーヴォーは到着しておりませんので、通常のボジョレーで実験をしました。さて2020年は、ボジョレーにとってどんな年だったのでしょう?デュブッフのアドリアン氏によると、乾燥して非常に暑かった年、ある意味、極端な年だったそうです。その結果、ボジョレーは史上2番目に早い8月20日に収穫が解禁されました。冬は穏やかで暖か、萌芽は早めでした。4月から5月は日照量が多く気温が高く乾燥した日が続き、開花も早かった。6月は低温と雨、7月は、1940年以来3番目に乾燥した年で、8月も猛暑が続き早い収穫につながった。出来上がったワインは、凝縮感があり、非常にバランスが取れた爽やかさのある仕上がりだそうです。どんなヌーヴォーなのか今から、楽しみですね。

鴨の赤ワイン鍋とボジョレーを合わせると、鴨のコクがボジョレーと出会って柔らかに広がっていくのが判ります。旨味のある脂と鉄っぽさがボジョレーの果実味に包まれる感じです。

「鴨の深い味わいが、ボジョレーの赤い果実と出会う事で、更に奥行きを増しています」

「元々、鴨はローストした時に使うソースが、オレンジであったり、サクランボだったりフルーツを良く使います。果実との本質的な相性の良さを持っているのでしょうね」

「鴨鍋は何度か食べた事がありますが、こんなにワインが引き立つのは初めてです」

「鍋仕立てなので、ぎゅっと凝縮した濃さではなく、ある意味、さらりと美味しいのを楽しむ料理ですね」

2020年のヌーヴォーがどんな味わいに仕上がっているのか、今から楽しみです。そして、そのヌーヴォーを楽しむ食卓に、是非、鴨の赤ワイン鍋を選んでください。

2位に選ばれたのはローラン・ペリエ ラ キュベでした。ローラン・ペリエのメゾンのスタイルは「フレッシュさ」「エレガントさ」「バランスの良さ」です。ローラン・ペリエではメゾンの「名刺」とも言うべき、スタンダードクラスのブリュットタイプのキュベの品質の向上を長年取り組んできました。長い熟成期間を経ても、メゾンのスタイルである「エレガントさ」「フレッシュさ」を十分に楽しめるように、前オーナーである故ノナンクール氏がメゾンの経営を任された時から試行錯誤を繰り返してきました。黒ぶどうも使って白のシャンパンを醸すために、シャンパーニュ地方の法律では、ぶどうの絞り方に厳しい規制が課せられています。4トンのぶどうから、かつてこのエリアで使われていたピエスの樽(205L)10樽分のキュベと500Lのタイユのみがシャンパンに使用が許されています。ローラン・ペリエ ラ キュベは、高品質なシャンパンをつくるために、使用が許されているタイユは使わず、キュベのみでラ キュベを醸しています。またスタイルの骨格を担うシャルドネを、極めて高く使用することによってメゾンスタイルが生み出されています。ローラン・ペリエ ラ キュベが持つピュアさ、フレッシュさ、エレガントさはメゾンのスピリッツそのものを体現しているのです。鴨の赤ワイン鍋と合わせると、鴨とローラン・ペリエ ラ キュベとが、深い所で手を結びあっている様な合い方でした。流石に黒ぶどうも半分近く使っているからか、鴨の鉄っぽい味わいがグッと引き立つマリアージュでした。

2nd

ローラン・ペリエ ラ キュベ 

ローラン・ペリエ ラ キュベ

フランス
ぶどう品種 シャルドネ
ピノ・ノワール
ムニエ

3位に選ばれたのは、コステルス デル プリオールでした。スペインにたった2つしかない最上級格付けであるDOCa産地であるプリオラートのワインです。使用品種はガルナッチャが60%とカリニャンが40%です。樽熟成は100%フレンチオーク樽で12ヶ月間行われます。よく熟れたプラムのような香りや、樽由来のバニラ香が感じられます。口にいれると非常に濃厚な果実味、心地良い酸味、タンニン分もしっかり感じられる力強いワインです。今回のレシピである鴨の赤ワイン鍋の面白い所は、ボジョレーのような軽やかなタイプも美味しく、シャンパンも、この重厚なコステルス デル プリオールにも美味しかった事です。このコステルス デル プリオールとのマリアージュは、鴨の力強い味わいとワインの濃密な味わいとが、がちんこ勝負で高め合う、力と力のせめぎ合い的な相性でした。山椒オイルもアクセントに用意したのですが、鴨鍋のスープと山椒オイルとワインとで、無限に楽しみ続けれるのではないか?と思うほど、虜になってしまった素晴らしい組合せでした。

3rd

コステルス デル プリオール 

コステルス デル プリオール

スペイン
ぶどう品種 ガルナッチャ
カリニェナ

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