この料理に合うワイン

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1st

サントリー 登美の丘ワイナリー 登美の丘 甲州 ※フロムファームにブランド名が変わりました。

サントリー 登美の丘ワイナリー 登美の丘 甲州
※フロムファームにブランド名が変わりました。

日本
ぶどう品種 甲州

今回のレシピは、鯛の昆布締めです。皆さんは、海に生える植物である「カイソウ」が2つ有るのをご存じでしょうか?それは海草と海藻です。鋭い方なら、もうお判りかと思いますが、海草は海中で花を咲かせ種で増える種子植物で、海中で一生を過ごすアマモなどの海産種子植物の事を言います。比較的浅いところに多く、海底深くに生育することはありません。海藻は海で生活する藻類のことで、胞子によって繁殖します。海藻の根は栄養吸収の為ではなく、岩に固着する為のものです。葉の色によって緑藻・褐藻・紅藻の3種類に分けられます。水産庁によると、世界に約2万種の海藻類があるといわれ、食用にされるのは今回の主役のひとつである昆布に代表される褐藻に多く、全部で約50種程度だそうです。昆布は、不等毛植物門褐藻綱コンブ目コンブ科に属する数種類の海藻の、一般的な名称です。鯛と同じく、昆布の名前が付いていてもコンブ科に属していないものもいますし、ジャイアントケルプのようにコンブ科に属していても昆布の名前を貰っていないものもあります。国内で食用として流通している昆布類は真昆布、三石昆布(日高昆布)、羅臼昆布(鬼昆布)、利尻昆布、長昆布、籠目(ガゴメ)昆布の6種類だと言われていますが、細布(ホソメ))昆布や猫足昆布、厚葉昆布(ガッガラコンブ)も一部の地域では流通しています。最も高価な昆布は利尻昆布で利尻島礼文島周辺から宗谷岬を経てサロマ湖辺りまで分布しています。透明で上品な風味の良い出汁が取れるのが特徴で、ほとんどが関西系の高級料理屋で使われます。利尻と、ほぼ同価格なのが羅臼昆布で、香りが良く濃厚でコクのある出汁が取れるのですが、出汁が黄色味を帯びますので関西系の高級料理屋ではあまり使われないようです。知床半島の根室側(国後島側)沿岸に分布しています。次いで高価なのが真昆布です。出汁は、癖の無い上品な甘みがあり、透明で澄んでいます。昆布自体にも甘味があり、塩昆布、おぼろ・とろろ昆布、佃煮など昆布その物を食べる料理にも良く使われます。利尻昆布や羅臼昆布は、この真昆布の変種です。函館から室蘭にかけて分布しており、噴火湾に面した旧南茅部から砂原(さわら)に至る沿岸は「白口浜」と呼ばれ、特に高価です。三石昆布は日高昆布の名前で流通しています。比較的生産量が多く、関東のスーパーでも良く見かける昆布です。長昆布は、細長い昆布で、日本で最も生産量が多く、大衆的な昆布です。その名の通り長く、15mから時には20mにもなります。釧路から納沙布岬の太平洋岸に分布しています。籠目昆布は表面に籠の目のような凹凸があるのでこの名が付けられました。かつては誰も獲らないと言われた昆布ですが、近年、籠目昆布に多く含まれるフコダインの健康効果から注目されるようになりました。

昆布は、お出汁の材料の筆頭格です。この旨みの根源はグルタミン酸です。そもそも最初の旨味物質は、東京帝国大学の池田菊苗教授によって、1908年に出汁昆布の中から発見されたグルタミン酸だったのです。その後、旨味成分としてイノシン酸やグアニル酸の働きを証明したのも日本人です。日本は旨味研究の先陣を切っていたのですね。旨味は、2000年頃に5番目の味覚として世界中に正式に認知されるようになりました。フランスの料理人達が、昆布や鰹節などの旨味成分に着目しだしたのも2000年台の初頭からです。その頃、シャンパーニュ地方のレストランを訪れた際に魚料理のメニューにUMAMI DU KOMBUとあって驚いた記憶があります。

さて、日本で昆布を一番沢山食べているのはどこの方々でしょう?
総務省家計調査の1世帯当たり品目別年間支出金額及び購入数量(2017年~2019年)を見ると、昆布の消費量第1位は青森市、続いて山形市、盛岡市、富山市になります。金額では富山市、京都市、福井市、金沢市の順になります。この統計が取られ始めた1980年の消費量第1位は那覇市でした。那覇市は1988年までは何度か1位になっています。それぞれの昆布の説明の所で分布エリアを話しましたが、ほとんどが北海道です。実際、都道府県別の漁獲量でも、2018年実績で北海道が95%を占め2位が青森で4%です。かつて1位だった沖縄では、昆布は全く獲れないのです。その昔、北海道から昆布を日本全国に運び出したのは北前船です。時期は江戸時代の中ごろから明治30年代にかけてです。北海道から日本海沿岸を通って、下関を回り瀬戸内海から大阪まで運びました。昆布は富山や福井で殆どが一旦陸揚げされたようです。その頃の名残が現在の昆布の消費金額上位に残っていますよね。沖縄(当時の琉球)に昆布を運んだ原動力は富山の薬売りだと言われています。越中の富山藩には「薩摩組」と呼ばれる薩摩藩を担当する部署がありました。富山藩は中国から漢方薬の材料を輸入したかったのですが中国との交易は許可されていなかったのです。一方薩摩藩は配下の琉球国を通じて中国との輸出入のチャンネルをもっていました。富山の薬売りは昆布を薩摩の輸出品として販売し、漢方薬の材料を手に入れていたのです。琉球に大量の昆布が運び込まれると、豚肉との相性の良さや、暑い沖縄でも保存性が良い事から瞬く間に庶民にも広がったのです。沖縄県中東部のうるま市に「昆布」とうい地名があります。昆布の獲れない沖縄に、昆布は深く浸透したのですね。

この、鯛の昆布締めにテイスティングメンバーが選んだイチオシワインはサントリー登美の丘ワイナリー 登美の丘 甲州でした。甲州は日本で醸造用に使われるぶどうで最も多い品種です※。起源は諸説ありますが、1000年くらい前に、コーカサス地方、今のジョージア辺りのぶどうがシルクロードを渡って日本にやってきたと言われています。中国を通ってくるあいだに、棘ぶどうであるヴィティス ダヴィディと自然交配しました。なので甲州の枝にも、小さな棘があるんですよ。熟すと果皮がピンク色になるグリ系の品種です。2010年にはOIV(国際ぶどう・ぶどう酒機構)に、日本のぶどうとしては初めて登録され、この事により、日本からヨーロッパに輸出する時に、ラベルに甲州と品種名を名乗る事が出来るようになりました。

マリアージュ実験に使ったのは2019年ヴィンテージです。登美の丘ワイナリーでは、長らく甲州を棚栽培で育ててきましたが、取り組んできた垣根栽培のぶどうが徐々に大人になって、2019年ヴィンテージは初めて製品となった記念すべきヴィンテージなのです。2019年ヴィンテージでの垣根と棚区のぶどうの割合は、おおよそ半々です。ぶどうは優しく圧搾するためにホールバンチプレスを使い、トップノートの華やかさを引き出しました。84%をタンク醗酵、そのままシュール・リーで熟成しました。残りの16%を樽醗酵し、樽のままシュール・リーで5ヶ月熟成しました。樽は、樽の香りを付けたい訳ではなく、複雑さを出したいだけなので、新樽は使いませんでした。

柑橘の香り、それも和のイメージのポンカンや蜜柑を思わせる、爽やかな香りがあります。白桃のような甘い果実を想起させる香りや、イタリアンパセリのような心地良いグリーンな香りもあります。味わいはピュアで、フレッシュでのびやかな酸味が印象的です。程良いボディで、余韻まで香りが上品に続くワインです。

鯛の昆布締めと合わせると、鯛の素材としての良さがはっきりと出ました。淡泊な味わいの中に、ほんのりとした甘みがあるのですが、それが甲州によって、より強く引き出される気がしました。

「繊細な料理と、繊細なワインのマリアージュですが、合わせる事で味わいが、より鮮明になります」

「そうそう、中盤から後ろで、旨味がぐっと、盛り上がる感じがします」

「旨味の相乗効果ですね。科学的にも証明されているのですが、グルタミン酸と、鯛なんかに含まれているイノシン酸は、単体で味わうより、一緒に味わった時の方が何倍も旨味を強く感じるのです」

「その強い旨味と甲州が、また、良くマッチするのですね」

「甲州自体の、控えめな性質が、そもそも魚料理に良く合います。また、甲州をシュール・リーする事によって、酵母の蛋白質が分解してアミノ酸になりますので、ワインサイドにも旨味が生まれるのです」

2019年は酸のキレもあり、余韻の長さと味わいが、層を成す感じで、とても美味しく感じられました。
皆様も是非、鯛の昆布締めに挑戦してみてください。そして、サントリー登美の丘ワイナリー 登美の丘 甲州との素晴らしいマリアージュをお楽しみくださいませ。

※ 国税庁 国内製造ワインの概況 2018

2位に選ばれたのはサントリージャパンプレミアム 津軽産ソーヴィニヨン・ブランでした。津軽でサントリーの為にソーヴィニヨン・ブランを栽培してくださっている農家さんは2軒、太田さんと木村さんです。サントリージャパンプレミアム 津軽産ソーヴィニヨン・ブランは2015年ヴィンテージから3年連続で、日本ワインコンクールで金賞を受賞し、津軽のソーヴィニヨン・ブランの産地としての可能性を強くアピールしました。そういった事もあって2020年9月末には、弘前市とJAつがる弘前とサントリーワインインターナショナルの3者は10年協定を結び、りんごの名産地津軽から世界級のワインを生み出す事を目指す、と宣言しました。 サントリージャパンプレミアム 津軽産ソーヴィニヨン・ブランをグラスに注ぐと、華やかな香りが立ち昇ってきます。グレープフルーツを思わせる香りの奥に、津軽だからでしょうか、不思議と青りんごのニュアンスが感じられます。口に含むと辛口でキレのある酸が爽やかさを際立たせます。鯛の昆布締めと合わせると、柑橘の香りと昆布締めの香りとが良く調和していました。鯛の、デリケートながら、しっかりと有る脂をソーヴィニヨン・ブランの酸が、爽やかに洗い流し、リフレッシュしてくれる素晴らしいマリアージュでした。

2nd

サントリージャパンプレミアム 津軽産ソーヴィニヨン・ブラン ※フロムファームにブランド名が変わりました。

サントリージャパンプレミアム 津軽産ソーヴィニヨン・ブラン
※フロムファームにブランド名が変わりました。

日本
ぶどう品種 ソーヴィニョン・ブラン

3位に選ばれたのは、サントリー塩尻ワイナリー 塩尻メルロ ロゼでした。今回、マリアージュ実験に用意したワイン16本のうち、8本が日本ワインだったという事もあるのですが、鯛の昆布締めに選ばれた3本は総て日本ワインでした。やはり、和食には、日本ワインが良く合うのでしょうかね? サントリー塩尻ワイナリー 塩尻メルロ ロゼは他の白の日本ワインとは全く違う合い方をしました。昆布の香りと本質的な所で手を結んでいる感じでした。サントリー塩尻ワイナリー 塩尻メルロ ロゼはヴィンテージによっては、海苔の佃煮を思わせる香りが出る事があります。同じメルロを赤に仕立てた塩尻メルロや岩垂原メルロでは、海苔の佃煮を思わせる香りが出る事は、まずありません。赤に仕上げると、赤系の果物、特にサクランボの印象が素直に出る事が多いのです。実は、このサクランボの香りと海苔の佃煮を思わせる香りは密接な関係があるようなのです。フランスのオードヴィーに詳しい方ならご存じだと思いますが、アルザスなどのサクランボの蒸留酒であるオードヴィー ド セリーズには海苔の佃煮を思わせる香りが良く出るのです。マリアージュ実験に使った塩尻メルロ ロゼは、海苔の佃煮を思わせる香りは左程強く感じられませんでしたが、潜在的には持っていたのでしょうね。その潜在的な海苔を思わせる香りと、昆布とが海藻つながりで、相性の良さを示したのだと思います。また、海藻が共鳴する事で、締められた鯛の味わいが前面に出てきて、美味しさを更に増している、そんな感じのマリアージュでした。

3rd

サントリー塩尻ワイナリー 塩尻メルロ ロゼ ※フロムファームにブランド名が変わりました。

サントリー塩尻ワイナリー 塩尻メルロ ロゼ
※フロムファームにブランド名が変わりました。

日本
ぶどう品種 メルロ

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