今回のレシピは、鶏肉と栗の白ワイン煮です。栗はブナ目ブナ科クリ属の木の実です。ブナ目は7科に37属もある大きなグループで、広葉樹と呼ばれるものが沢山含まれています。ブナ科には10属、1,100種程度が属していると言われ、ワインなどの熟成につかうフレンチオークやアメリカンオーク、コルクガシの属するコナラ属や、ブナ属、シイ属などとならんでクリ属があります。ブナ科はかつて殻斗科と呼ばれていました。殻斗の斗は枡を意味しています。枡のように、花びらを包む苞の部分を指しており、そこが殻のように硬くなる、つまりドングリを作る科という意味なのです。栗は野生種である山栗と栽培種がありますが、栽培種のほうが、実が大きいです。味は、逆に天津甘栗に代表される山栗の方が、甘味が強く濃い傾向があります。日本の栗はクレナータ種(crenata)種で、北海道の石狩より南の日本列島から、朝鮮半島、中国東部、台湾にかけて分布しています。樹高15mになる大きな木で、6月ごろ30cmくらいの稲穂に似た形状の花が咲き、独特の香りを放ちます。雌花には3個の子房があります。3つとも受精すると、イガの中に3つの実が出来ます。英語のチェストナッツ(Chestnut)は、この3つに分かれた様が、部屋(Chest)に見えるから呼ばれるようになったそうです。秋に熟すとハリネズミの様な、イガのある殻斗が4分割に裂開して栗色の実が姿を見せます。栗の実は堅いですが、種子ではなく果実だそうです。イガに3つの実が出来た場合、両端の実は丸い部分と平らな部分とがある形になります。真ん中の実は両側が平らです。一方、フランスなどでマロングラッセになるマロンは、マロングラッセの形をみると判りますが、全体が丸みを帯びていて、平らな所がありません。そうです。1つのイガに1つの実しか付かなかったものだけをマロンと呼ぶのです。同じクリ属の木であるのですが、日本の栗とは種が違い、シャテニエ種で、ヨーロッパグリと呼ばれます。ちなみに、1つのイガに2つか3つの実ついたものはマロンとは呼ばれずにシャテーニュと呼ばれるそうです。今回はその栗を鶏肉と白ワイン煮にします。鶏肉は腿のぶつ切りを使いました。
この、鶏肉と栗の白ワイン煮にテイスティングメンバーが選んだイチオシワインはサントリージャパンプレミアム かみのやま産シャルドネでした。かみのやま産シャルドネは山形県の上山市の契約農家の木村さんのぶどうから醸されています。上山市は東に奥羽山脈の名山である蔵王があり、西には出羽山地がある盆地です。山形県はサクランボの名産地として有名ですが、夜の温度が下がり易い盆地で有る事はぶどう栽培においても有利なのです。木村園は、西日が最後まで当たり続ける西向きの斜面0.2haに棚一文字短梢でシャルドネが栽培されています。樹齢約30年で木村園のシャルドネ全てをサントリーが購入しています。木村さんは腕利きの栽培者で、ぶどうの他にも各種の果樹を栽培されています。なかでもラ・フランスは、東京の超高級果物屋さんで、高値で販売されています。マリアージュ実験に使用した2019ヴィンテージは、一部(11%)を樽醗酵し、そのまま樽熟成をしています。醗酵終了後はシュール・リーにより2月まで熟成しました。熟したりんごや洋ナシのニュアンスがあります。少し蜜を含んだアカシアを連想させる香りもあります。辛口でキレのある酸で、軽やかながら芯のしっかりとしたシャルドネです。
鶏肉と栗の白ワイン煮と合わせると、栗が抜群に美味しく感じられました。栗を噛んだ時に、ほくほくっとほぐれる澱粉質の隙間にシャルドネの果実味が隅々にまで広がって潤していく感じです。
「栗が大地の恵みだ、としみじみ判るマリアージュです。アーシーと表現するのでしょうかね。土のニュアンスがとても好もしいです」
「鶏も美味いですよ。鶏の肉汁の、ある意味シンプルな美味しさが、かみのやま産シャルドネに出会うと、旨みに奥行きがでて立体的な味わいになります」
「料理もワインも両方が上がる組み合わせです。自然体で、非常にしっくりくるマリアージュです。文句のないイチオシですね」
いろいろな食品に旬が感じられ難くなる昨今で、生の栗は季節感のある食材です。是非、鶏肉と栗の白ワイン煮を作ってみてください。そしてサントリージャパンプレミアム かみのやま産シャルドネとの素晴らしいマリアージュをお楽しみください。