今回のレシピは、タイ料理のマンゴーと海老の揚げ春巻きです。マンダリン・オリエンタル・バンコクのアフタヌーンティーの超人気アイテムを鈴木都先生流にアレンジ頂きました。マンゴーはウルシ科マンゴー属の常緑樹で、種類がとても多く、一説には何千種もあるとされ、栽培品種だけで500種類を超えています。とても美味しい果物で、世界3大美果と呼ばれる事があるのですが、「世界3大美果」自体は、日本ではあまり馴染みがないのでしょうかね、ちなみに残りの2つはマンゴスチンとチェリモヤです。マンゴーを漢字で表記する時は芒果と書きます。中国語でも芒果ですので、その表記がそのまま日本に入ってきたと考えられます。マンゴーの原産地はまだ、確定しておらず、「インドである」としている説が多いようなのですが、もう少し広いインドからインドシナ半島周辺である事は間違いなさそうです。インドでは、栽培が4000年以上も前から始まっているそうです。大変背が高くなる木で40m以上にもなる事もあります。
日本で流通しているマンゴーは形で分けると、丸っこいものと細長いものがあります。丸い形といっても、種はひしゃげた、勾玉のような形をしていますので、真ん丸ではありません。日本では丸くて色が赤くなる種類をアップルマンゴーと呼ぶことがあるのですが、これはいくつかの違う種類の集合体です。日本で育てられるマンゴーの90%以上を占めるアーウィン種も丸くて色が赤くなる種類です。とても甘くて美味しいですよね。そのほかケント種やヘイデン種はメキシコやブラジルから輸入され、やはりアップルマンゴーと呼ばれて流通していますが、甘さなどが大分違うようです。細長く先がちょっと尖っていて、鳥の嘴を思わせるマンゴーもあります。アルフォンソ種は生産量世界一の国であるインドで、マンゴーの最高級品として扱われます。黄色いマンゴーで「マンゴーの王様」と呼ばれる事もあり、甘さもさることながら、華やかで優美な香りが特徴です。ペリカンマンゴーと呼ばれることもあるガラパオ種はフィリピンで多く栽培されます。タイでもマンゴーは多く生産されています。ペリカンマンゴーに似た形で、ペリカンマンゴーより一回り大きいのが特徴です。ナムドクマイ種、マハチャノ種の2種類を日本で多く見かける気がします。5月から7月の頭にかけて東京のスーパーでも並んでいます。先日近所のスーパーでナムドクマイ種、マハチャノ種の両方が並んでいて驚きました。ナムドクマイ種は黄色いマンゴーで、ゴールデンマンゴーとも呼ばれています。マハチャノ種は、ほんの少し赤みを帯びた黄色です。甘み酸味とも豊かで、濃厚な味わいが楽しめます。
今回のレシピの春巻きは至ってシンプルです。工程の写真のように、切ったマンゴーを並べ、ナムプラーをまぶして強めに粗挽き白こしょうを振って海老を並べて巻いていきます。マンゴーから水分が出ますので、巻いたら直ぐに揚げるのが美味しく作るポイントです。
さて、このマンゴーと海老の揚げ春巻きにティスティングメンバーが選んだイチオシワインはオーシエール シャルドネでした。ドメーヌ ド オーシエールはボルドーの1級シャトーであるシャトー ラフィットを擁するドメーヌ バロン ド ロートシルト(以降、DBRとする)が南仏で経営するワイナリーですが、その始まりはローマ時代にさかのぼります。ぶどう畑は、ナルボンヌ近くのコルビエール地区にあり、中世にはシトー派修道院が農場として運営していました。フランス革命を経て競売にかけられ、その後オーナーがかわる度に荒廃し、すっかり荒れていました。1999年DBRがこの畑のポテンシャルにほれ込み、広大な畑を購入し、まさに一からの再建をしました。DBRにとって、フランス内では、ボルドー地方以外のぶどう畑は初めてで、まさにエリック男爵の新たなる挑戦でした。オーシエールの所有面積560haのうち、ぶどう畑は約170haです。荒廃したぶどう畑を立て直すためにラングドックで土壌コンサルタントとして活動していたオリヴィエ・トレゴア氏が招聘されました。彼は土壌を分析し、土壌毎に最適のぶどうを植えていきました。土壌は、斜面では様々な母岩が砕けた砂利質や砂岩質、平野部は砂質でした。3分の2の畑がAOPコルビエール(シラー、ムールヴェードル、グルナッシュ、カリニャン、サンソー)、残りの3分の1がIGPペイドック(シャルドネ、メルロ、カベルネ・ソーヴィニヨン、カベルネ・フラン、プティ・ヴェルド)に属します。シャルドネはフォンフロワド山の麓の最も冷涼な区画の、それも強い日差しを避ける為に敢えて北向きの斜面で育てられています。初代の醸造長のエリック・コレール氏は、現在はシャトー ラフィットを中心とするボルドーのシャトーの醸造長に就任をしました。その後任として、オーシエールの再建の立役者であったオリヴィエ・トレゴア氏が再び招聘され、DBRのボルドー以外の醸造長として就任しました。
グラスに注ぐと、やや濃いめのレモンイエローです。黄色いリンゴや洋梨を思わせる心地良い香りが立ち昇り、アカシアや少し黄色い花の印象もあります。口に含むと、辛口で、完熟した果実の充実感と爽やかさが感じられるワインです。
マンゴーと海老の揚げ春巻きに合わせると、マンゴーの味わいがよりくっきりとするのが良く判ります。
「マンゴーのコクが更に広がる感じです」
「マンゴーの苦みが、少し強調される所があるのですが、それが大人の味わいに感じられました」
「デザートではなく、お料理として完成された味わいで驚きました」
「皮がパリパリで、それがまたシャルドネと良く合うんですよね」
「巻いて直ぐに揚げないとマンゴーの水分でべちゃっとします。巻いたらすぐ揚げる。これが最大のポイントです」
「強めに振ってある粗挽き白こしょうが味わいを引き締めていますね」
「シャルドネの厚みが、マンゴーと海老の強い旨みとぴったりと合っています」
「海老の味わいも、より一層深みが出て美味しくなりました」
都先生からは「このレシピはオリエンタルホテルのアフタヌーンティーでは殆ど全員が頼む人気の一品です。もともとは中華なので、海老は海老マヨにして巻いているのですが、そのままの方がワインとの相性が良くなると思い変更しました」との情報もいただきました。皆様も、丁度出盛りのマンゴーで、マンゴーと海老の揚げ春巻きに挑戦してみてください。生のマンゴーが手に入らないときには、コンビニの冷凍マンゴーでも美味しく出来ます。そして、オーシエール シャルドネとの絶妙な組み合わせをお楽しみくださいませ。