今回の料理はマコガレイのフリット 南仏風ソースです。マコガレイはカレイ目カレイ科マコガレイ属の魚で、漢字では真子鰈と表記します。カレイ目には14科134属あり、舌平目やヒラメもカレイ目に含まれる魚です。カレイの語源は「からえい」が「かれい」になったというのが通説です。形が「えい」に似ていて、色が枯れ葉を思わせる色だという説と唐の「えい」に似た魚との2説あるようです。マコガレイの学名はPseudopleuronectes yokohamae Gunther ,1877です。なんと横浜の名前が学名になっています。末尾の1877は登録年ですので、明治10年にGuntherさんが登録した、という事なのです。マコガレイの分布は、北海道南部から東シナ海の北部です。アメリカや西洋にはいない魚です。
漁獲量を調べたのですが、カレイ類でまとめられた統計が多く、なかなかマコガレイだけの統計が有りませんでした。色々と資料をあたるうちに、神奈川県だけマコガレイの長期にわたる統計を発表していたのを見つけました。流石、学名に名前を残した横浜を擁する神奈川県です。それを見ると1980年台は400tに達したことが3年もあったのが、統計がある最後の年であった2013年には13tにまで激減しています。なんと30年前の30分の1以下です。高度成長期に河川の汚染や東京湾の水質汚濁が進んだ事と、干潟が次々と埋め立てられ稚魚の揺り籠が失われてしまったことが大きな原因かと思われます。最近のテレビ番組で、東京湾の一角の石油コンビナートの直ぐ傍で、砂浜の環境改善に取り組んだらマコガレイが大量に戻ってきた、という番組がありました。近年は海も少しづつきれいになり、漁獲量も少し上向きになっているのかもしれません。砂地を好む魚で、棲んでいる場所で魚の美味しさが変わるそうです。特に地底から湧き水のある所のマコガレイは絶品で、大分県の城下ガレイは美味しさでその名を轟かす、マコガレイの超一級ブランド品です。
目と目が近く、その目がぴょこんと飛び出ていて、とっても可愛いです。口がおちょぼ口なのも特徴的です。同じく、平らな体で片側に目のあるヒラメは、西日本ではオオクチガレイと呼ばれるほど口が大きいです。それは捕食する食べ物が違うからです。ヒラメはフィッシュイーターで小魚などを大きな口で一飲みにします。一方、マコガレイは海底にいるゴカイなどの環形動物や小エビなどの甲殻類、マテ貝の水管などを好んで食べます。マコガレイは美味しい仲間揃いのカレイの中でも、「特に美味しい御三家」と呼ばれます。人によって御三家のメンバーは多少違ったりもするのですが、マコガレイ、マツカワガレイ、ホシガレイ辺りが定番メンバーです。マコガレイは、平らな体のカレイの中では身に厚みがあり、刺身にすると、むっちりと弾力があってとても美味です。旬は6月から8月にかけてで、豊洲市場でも6月からグッと値段が高くなり、8月にピークを迎えるのが普通です。今回は、そのマコガレイをフリットにします。ソースは初夏らしく南仏風ソースです。マコガレイは魚の大きさに合わせて適宜切り分け、塩こしょうをして小麦粉を振って、オリーブオイルでじっくりと揚げます。低温で時間を掛けて揚げると、小さいカレイなら骨ごと食べる事も出来たりします。今回のマコガレイは30cm近いサイズでしたので、流石に中骨までは無理でしたが、鰭や縁側の部分はパリパリと美味しく頂けました。
南仏風ソースですが、ポイントは黒オリーブとトマト、それにローズマリーなどの地中海沿岸地方で自生しているガリグー=低灌木と呼ばれるハーブです。
さて、マコガレイのフリット 南仏風ソースにテイスティングメンバーが選んだイチオシワインは、カザマッタ ビアンコでした。カザマッタは21世紀のシンデレラワインのつくり手「ビービー グラーツ」のワインです。ビービー グラーツ氏は、家族揃って芸術家の家庭に生まれました。グラーツ家では家族の飲むワインは自分たちで醸すのが伝統でした。ビービー グラーツ本人も芸術の道を歩み始めていたのですが、そのワインづくりの不思議さ、楽しさに気が付き、いつしか虜になって、ワインづくりを志すようになりました。最初に本格的にワインを醸したのが2000年です。そしてなんと2004年のヴィネスポではイタリアソムリエ協会が選ぶ「ベスト プロデューサー賞」の最終候補者の3人のうちの1人に選ばれました。2000年から2004年ですから、たった5年ですよ!たった4~5回のワインづくりで、ほとんど頂点とも言えるところまで行ったのです!!やはり天才なのでしょうね。
カザマッタ ビアンコのぶどう品種はヴェルメンティーノ60%、トレッビアーノ30%とモスカート10%です。グラスに注ぐと、生き生きとして、華やかな香り立ちです。フレッシュな果実や白い花の印象と、マスカット=モスカートの心惹かれる良い香りがあります。口に含むと軽やかで程よい酸味が心地よく感じられるワインです。
マコガレイのフリット 南仏風ソースと合わせると、マコガレイの淡白ながら素材そのものに含まれるしっかりとした旨みを、カザマッタ ビアンコが、より一層際立たせてくれました。
「めちゃめちゃ旨いですね!」
「マコガレイって刺身のイメージですが、揚げても旨いんですねぇ」
「淡白なだけでなく、旨みがしっかりしているし、身にほんのりとした甘みがありますからね」
「ソースを付けると、更にワインと良く合います」
「黒オリーブとトマトの味わいと、すんなりと馴染みますね」
「トマトとオリーブの国のワインですからね」
「ヴェルメンティーノの、品種としての厚みが、ソースの力ある味わいと上手くバランスとれるんですね」
これから益々美味しくなるマコガレイを使ってワインスクエア流フリット 南仏風ソースを作ってみませんか?そして、カザマッタ ビアンコとの抜群の相性をお楽しみくださいませ。