今回のレシピは、豚とあさりのポルトガル(アレンテージョ)風です。アレンテージョ(Alentejo)は、ポルトガルの、7つに分かれている地方の一つです。中南部に位置する大きなエリアで、面積は26,000km2ですからポルトガル全土の約28%も占めています。四国よりちょっと大きく、九州よりは小さいくらいの大きさです。名前はalém=「超えた向こう側」tejo、が変じてAlentejoになりました。つまり、テージョ川(o Tejo)の向こうという意味です。テージョ川は1000kmを超える川で、イベリア半島で最も長い川です。スペインまで遡るとタホ川(el Tajo)と名前を変え、マドリッドを通って、アラゴン州のイベリコ山系が源流です。アレンテージョ地方は、穀物生産が盛んな豊かな土地で、「ポルトガルのパン籠」と呼ばれています。農業、牧畜や林業が主な産業でコルク樫が特に有名です。コルクは、なんと全世界の生産量の約52%(約31万トン)がポルトガルで作られていて、そのかなりの部分が、ここアレンテージョ地方で生産されています。ワイン用のコルクに至っては、ポルトガルのシェアは世界の70%にも及ぶのです。ポルトガルはコルク王国なのですね。畜産では豚が特に盛んで、イベリコ豚同様に、どんぐりを食べさせるために放牧して育てられる豚が沢山います。放牧されている場所は、もちろん広大なコルク樫の森です。コルク樫の森はポルトガル全土で約70万haもあるんですよ。
豚バラの塊を一口大に切って、ニンニクのみじん切りと、パプリカパウダーと白ワインで1時間程マリネします。パプリカはポルトガル料理では良く使われる食材です。フライパンで、色良く焼いたら、あさりを入れて蓋をして蒸し焼きにしたら出来上がりです。
さて、この豚とあさりのポルトガル(アレンテージョ)風にテイスティングメンバーが選んだイチオシワインは、ガゼラ、ポルトガルのヴィーニョ ヴェルデでした。ヴィーニョ ヴェルデとは、ポルトガル語でヴィーニョ=ワイン、ヴェルデ=緑という事で「緑のワイン」という意味なのです。若々しいワインを意味したもので、アルコール度数も低めの軽やかなワインです。ヴィーニョ ヴェルデの故郷は、ポルトガルの北西部です。ポートワインの熟成地として、また、積み出し港として有名な港町ポルトから、海岸沿いを北へ進み、ドウロ河の北からスペイン国境までの、海岸に近い丘陵地帯です。いわゆるミーニョ地方と呼ばれるエリアで、ワイン生産量で全国の10%を占める一大ワイン生産地なのです。「コスタ・ヴェルデ(緑の海岸)」とも呼ばれていて、大西洋の暖流が目の前を流れる、比較的雨量の多いエリアです。夏は涼しく冬は暖かい、ぶどうづくりに最適な場所なのです。ガゼラの品種は、ポルトガルの地場品種であるローレイロ40%、ペデルナン 30%、トラジャドゥーラー 15%と アザルが15%です。一番多く使われているローレイロはポルトガル語で月桂樹という意味ですが、ハーブで使われるローリエの香りが有る訳ではなく、ワインにしたときに、月桂樹の花を思わせる香りがするからだそうです。二番目のペデルナンはミーニョ地方以外ではアリントと呼ばれ、レモンやライムなどのフレッシュな柑橘を思わせる香りで、活き活きとした酸が特長の品種です。
グラスの注ぐと、色は淡いです。わずかに緑色があり、まさに「緑のワイン」です。香りはフレッシュな柑橘、レモンやライムの印象があります。青りんごのタッチもあります。口に含むと、辛口でキレのある酸味があります。軽やかで、瑞々しい爽やかなワインです。
豚とあさりのポルトガル(アレンテージョ)風と合わせると、抜群の相性です。
「豚バラと、ものすごく合いますね」
「ちょっと衝撃的な相性です」
「ヴィーニョ ヴェルデって魚に美味しいワインの印象でしたが、イメージ変わりましたね」
「あさりからの旨みが豚肉とガゼラとの相性を引き上げるのに一役買っているのだとは思いますが、本当に美味しいですね」
「あさりの旨味成分はコハク酸です。豚肉の旨味成分はイノシン酸で、この2つにはグルタミン酸とイノシン酸との間にみられるような相乗効果は無いとする実験結果も報告されています。ですが、なかなかどうして、大変美味しい組み合わせです」
アレンテージョの名物料理の豚とあさりのポルトガル(アレンテージョ)風、あさりと豚バラが、本当によくまとまっている感じで、ヴィーニョ ヴェルデのガゼラと抜群に合います。是非、読者の皆さんもトライしてみてください。