今回のレシピは、プラムク クルアイ、イカのタイ風詰め物です。「プラムク」は「イカ」、「クルアイ」は「バナナ」ですので、直訳すると「バナナイカ」ですが、バナナのように見えるイカの詰め物という意味です。イカは大きく2つに分けて、体の中にスポンジ状の石灰質の甲があるずんぐりむっくりしたコウイカ系と、細長く筒状のツツイカ系がいます。タイでももちろん、両方食べられていて、コウイカ系はモンコウイカやアオリイカ、沖縄では高級食材のコブシメなども市場に並びます。ツツイカ系ではアジアジンドウイカやヒラケンサキイカが主に漁獲されています。タイのイカ釣り漁船の灯は緑色で、ミャンマーと共に面しているアンダマン海やタイランド湾で盛んに行われています。夜の漁火は、エメラルドグリーンの灯りが無数に浮かんで、神秘的でとても綺麗です。
今回、イカはヤリイカを使いました。詰め物は豚ひき肉と玉ねぎのみじん切りです。味はシーズニングソースとにんにく、白こしょうでととのえ、つなぎには卵、片栗粉を使いました。タイではパクチーの根もよく入れます。もし、冷蔵庫にパクチーがあれば、より美味しく仕上がります。イカは焼くと縮みますので、工程の写真のように、あまり詰めすぎないのが綺麗に仕上げるコツです。
さて、このプラムク クルアイ、イカのタイ風詰め物にティスティングメンバーが選んだイチオシワインはタヴェルネッロ オルガニコ サンジョヴェーゼです。
「えっ?イカに赤ワインですか?!」と驚かれるかもしれませんが、サンジョヴェーゼは今までのワインスクエアのマリアージュ実験でも、魚介類との相性の良さが何度も証明されているぶどう品種なのです。タヴェルネッロはイタリア国内販売量 No.1 (※1) で、しかも、世界で一番売れているイタリアワイン (※2) なのですよ。オルガニコ サンジョヴェーゼは、注目の有機ワインです。農林水産省の定義によると、有機ワインとは、有機農業で栽培されたぶどうを使って、総ての製造ラインにおいて、有機ワインではないものと隔離され、しかも公的機関で認証されたものと定義されています。更に有機農業とは、「有機農業の推進に関する法律」の第二条に、「化学的に合成された肥料及び農薬を使用しないこと、並びに遺伝子組み換え技術を使用しないことを基本として、農業生産に由来する環境への負荷をできる限り低減した農業生産の方法を用いて行われる農業」と定められています。そして化学肥料や農薬を使用できないのは、過去3年に遡ると規定されています。そして認証機関ですが日本の代表的な有機認証団体は、農林水産省から認定を受けた「オーガニック認証センター(OCC)」です。いま世界中で有機農産物がつくられていますが、それを輸入する時に日本で再検査することは不可能です。ですが、日本はEUやアメリカなどの国と平等性の評価が完了しており、相互に認証しあえる仕組みを作っているのです。発売されて未だ日の浅いタヴェルネッロ オルガニコ サンジョヴェーゼですが、ドイツのムンドゥス ヴィニ 2018年で金賞を獲得しています。ドイツでは毎年、2つの国際ワインコンクールが開催されていて、そのひとつがムンドゥス ヴィニで、ノイシュタットで開催されます。審査員は50か国近い国から、200名以上が選ばれ、1週間に渡ってティスティングを行い優秀なワインを選ぶのです。
タヴェルネッロ オルガニコ サンジョヴェーゼの格付けはルビコーネIGTです。ルビコーネはエミリア・ロマーニャ州のボローニャから南東に100kmの所です。ぶどう品種はサンジョヴェーゼ100%です。発酵後、素直な果実味を愉しむために敢えて樽は使わずステンレスタンクで、6ヶ月間熟成しました。
グラスに注ぐと、明るいチェリーレッドです。熟したチェリーやプラムを思わせる香りがあります。スミレを連想させる香りや、甘苦系のスパイスをイメージさせる香りもほのかに感じられます。やわらかな果実味と軽やかな酸味がバランス良く、まろやかな渋みが味わいを引き締めるワインです。
プラムク クルアイとタヴェルネッロ オルガニコ サンジョヴェーゼを合わせると、イカの美味しさが素直に強調されました。
「イカに赤ワインがこんなに合うのは驚きです。余韻まで美味しさが続きますよ!」
「重厚な赤の場合は、イカと相性が悪い事がよくありますよね。ボルドーのちょっと良いクラスになると、イカと遊離したりします」
「オルガニコ サンジョヴェーゼは全くそんな印象をうけません。かえってイカにぴったり寄り添っている感じです」
「オルガニコ サンジョヴェーゼならではの特徴というよりは、サンジョヴェーゼ自体の性質かもしれません。品種として、魚介との相性の良さがありますからね。以前も秋刀魚でイチオシに選ばれましたよね」
「オーガニックならではの自然さもプラスに働いているんでしょうね」
詰め物の豚肉や、ナンプラーで炒り煮にして香ばしく仕上げているのも、赤ワインを引き立てる要素になっているとは思いますが、なかなか素晴らしいマリアージュでした。皆様も小ぶりのイカをお店で見かけた時は、是非チャレンジしてみてください、そしてタヴェルネッロ オルガニコ サンジョヴェーゼとの抜群の相性をお楽しみください。
(※1) シンフォニーIRIグループ 2017年12月報告データ(イタリアSM 100平方M以上の規模における)
(※2) Shanken’s IMPACT databank Review and Forecast -2017EDITION-The GLOBAL WINE MARKET, World’s TOP 20 Wine Brands