今回の料理は、豆クリームパスタです。豆は春から初夏にかけて美味しい食べ物ですよね。マメ科は、被子植物の双子葉類で、一般的に豆と呼ばれる植物は大体マメ亜科に属します。マメ亜科は、花が特徴的です。花びらの枚数は5枚なのですが、4枚がくっついて筒状になり、オシベを包んでいます。5枚目の花弁は上方向に目立つ形で大きく広がって旗弁と呼ばれ、5枚合わせてマメ亜科の花に特有の形になります。マメ亜科にはエンドウ、ヒヨコマメ、いんげんまめやダイズが属しています。ふむふむ、なるほど!の顔ぶれです。意外なところではクローバーやシロツメクサもマメ亜科なんですよ。「えっ?花の形が違いませんか?」と思うかもしれません。シロツメクサの花は100くらいの花の集合体で、その一つ一つをじっくりみると、まさにマメ亜科の花の形をしています。マメ亜科はなんと1万以上の種が属しており、葛や藤もマメ亜科なんです。今回使った豆はグリーンピース、そら豆、いんげんまめ、スナップエンドウです。グリーンピースとスナップエンドウはエンドウの未成熟の実です。エンドウの新芽は豆苗として食用になります。エンドウは豌豆と表記されますが、「豌」の文字はエンドウやヒヨコマメの故郷であるカスピ海の東側のエリア、今のウズベキスタンあたりの盆地「フェルガーナ」から来ていると言われています。フェルガーナは、いろんな豆の故郷であるとともに名馬の産地としても有名でした。その昔、フェルガーナを大宛と表記しており、その大宛から来た豆と言う事で豌豆が充てられたのでした。エンドウには、さやの硬さにより、硬莢種と軟莢種があるのですが、サヤエンドウやスナップエンドウは、ともに軟莢種です。硬莢種はアオエンドウやアカエンドウが代表的です。グリーンピースはアオエンドウを生のまま、乾燥せずに食用にするものです。そら豆は蚕豆や空豆と表記されるソラマメ属の豆で、地中海周辺,西アジア辺りが原産と言われています。空に向かって実を付けるので空豆と呼ぶという説もあります。いんげんまめは隠元豆とも表記される一年草で中南米原産です。サンドマメ(三度豆)と呼ばれる事もあり、フランス料理では大変良く使われる食材です。カスレは白いんげんまめと豚肉を煮込んだものですし、アリコヴェールはサヤインゲンを、くたくたになるまで煮込んだ料理で、英語ではfrench beensと呼ばれています。
今回はいろんな豆を使って豆クリームパスタを作ります。パスタはショートパスタのオレッキエッテを使いました。オレッキエッテはプーリア州やバジリカータ州を代表するパスタで、耳たぶパスタと呼ばれる事もある、親指の爪くらいの大きさのパスタです。プーリア州とバジリカータ州は地図で言うと長靴の踵から土踏まずの辺りのエリアです。
さて、この豆クリームパスタにテイスティングメンバーが選んだイチオシワインは、ミオネット プロセッコ DOC トレヴィーゾ ブリュットでした。プロセッコは堅調に伸びているスパークリングワイン市場の中でも、絶好調に伸びている今注目のアイテムです。イギリスの酒調査会社であるIWSRによると、プロセッコは2000年以降、10倍以上にも伸長しました。同じ時期、スパークリングワイン合計は1.4倍です。泡の世界での絶対王者シャンパンを、販売量で2013年に逆転しその差は開く一方です。プロセッコを最も多く消費しているのはイタリア本国で、全体の35%で、続いてイギリス、アメリカの順です。アメリカ市場でも大人気です。スパークリングワイン市場の全米での売り上げの2割近くを占めるほどにもなりました。
プロセッコについておさらいをしましょう。プロセッコとは2009年にDOC認定されたイタリア北部の、ヴェネト州とフリウリ・ヴェネツィア ジュリア州にかけての9つの県にまたがるエリア(栽培総面積約30,000ha)で栽培されるスパークリングワインです。このエリアの土着品種であるグレーラ種(最低85%)を主体で使用する事が義務付けられています。グレーラ種は、もともとプロセッコ種と呼ばれていたのですが、ぶどう品種の名前のままにしておくと、他の国でも「ぶどう品種を名乗るワイン」として「プロセッコ」の名前が使用されてしまいます。実際、ブラジルなどの低価格プロセッコに手を焼いたイタリアが、プロセッコは原産地の名前だけに限定し、ぶどう品種の名前はグレーラ種にすることで、「原産地を守るマドリッド条約」批准国ではプロセッコの名前が使えないようにしたのです。
ミオネット社は130年以上の歴史を持っている伝統ある会社で、伸長著しいプロセッコの販売数量において世界No.1のメーカー※1です。
ミオネット プロセッコ DOC トレヴィーゾ ブリュットをグラスに注ぐと、元気の良い泡が立ち昇ります。香りは豊かで、軽やかな白い花や、フレッシュなリンゴや白桃を連想させます。口に入れると、やさしい果実味がたっぷりあります。ブリュットながら、柔らかな味わいが広がり、その後にホロ苦さが程良く口の中を引き締める、いかにもプロセッコらしい味わいのワインです。
豆クリームパスタとミオネット プロセッコを合わせると、豆の旨みが素直に広がりました。
「パスタの、豆の清々しい緑のニュアンスと、プロセッコの白桃などを思わせる甘い香りが、上手くバランスが取れていて、心地良いですね」
「今回、豆はグリーンピース、そら豆、いんげんまめ、スナップエンドウの4種類を合わせました。なので、バランスのとれた、ある意味何にでも合わせられる万能タイプのソースに仕上がりました」
「グリーンピース単体とか、そら豆単体で作ったらそれぞれの個性的な味わいが全面に出て、それはそれで、とても美味しいソースになると思いますね」
豆を合わせて、フードプロセッサーでソースにする事で、とても美味しいパスタソースになります。パスタだけでなく焼いた鶏や魚などにも、美味しいソースとして利用できます。皆様も是非、豆クリームパスタにトライしてみてください。そして豆クリームパスタとミオネット プロセッコとの春を愉しむマリアージュをお試しください。
※1 IWSR 2018 International brand