今回の料理は、じゃがいもとたらのガレットです。ガレット(galett)は、フランスの北西部にあるブルターニュ地方の郷土料理で、お菓子も料理もあります。語源ですが、galettは「小石」を意味するgaletの女性形なので、「小石のような丸い形」を表していると思われます。料理の方では、ワインスクエアでも以前に取り上げましたが、そば粉のガレット(そば粉を溶いたものを薄く焼いて、真ん中に卵を落として折り畳んで四角くして食べる料理)が有名です。お菓子では、丸いビスケットのようなガレット ブルトンヌや、カトリック教の公現節(1月6日)に食べるガレット デ ロワが有名です。ガレット デ ロワはアーモンドクリームの入ったパイで、紙製の王冠が乗っけてある事が多いです。パイの中には小さな陶器の人形=フェーヴ(fève)が入れられています。家族で切り分けて食べて、フェーヴが当たった人は王冠を頭に、祝福を受け、幸せな1年が過ごせると言われています。今回鈴木薫先生に考えていただいたガレットは、じゃがいもの千切りを生地にして、中に塩たらを入れたものです。じゃがいもはメークイーンを使うと、焼いた時にまとまり易いです。フライパンにバター、オリーブオイルを入れて火に掛け、工程の写真のように、塩たらを乗せて、更にその上にじゃがいもを乗せて焼きます。
さて、このじゃがいもとたらのガレットにテイスティングメンバーが選んだイチオシワインは、サンタ バイ サンタ カロリーナ ソーヴィニヨン・ブランでした。サンタ カロリーナ社はチリのサンティアゴ市で1875年に、創業者ルイス・ペレイラ・コタポス氏が設立しました。ワイナリー名は最愛の妻カロリーナ夫人の名前をとりました。コタポス氏は、それまでは地元で消費されるだけの存在であったチリのワインを、世界に通用する高品質なワインに進化させるべく、フランス人ワイン醸造家 ジェルマン バシュレ氏を招聘しました。設備面でもフランスの高い技術を取り入れた最新鋭の設備をつくりました。それが1973年に国定記念建築物に指定された1880年建築のセラーです。また、それまでチリで主要に栽培されていたパイスなどの品種ではなく、いち早くカベルネ・ソーヴィニヨン、メルロ、ソーヴィニヨン・ブランといったポテンシャルの高いぶどうを導入しました。その多大な投資の成果が、フランスで開かれた「エクスポジション ユニヴェルセル」での金賞の受賞です。この事でチリワインが世界的に認められるようになりました。2005年以降、再びサンタカロリーナ社は、更なる品質向上を目指し、ぶどう栽培から醸造技術に至る、ワインづくりの全てのプロセスに巨額の投資を実施しました。その投資と、チーフワインメーカー アンドレス・カバレロ氏率いる醸造チームのワインづくりに対する情熱とが、近年成果となって現れています。世界中のワインコンクールで多くの賞を受賞する一方、各種ワイン専門誌でも高い評価を得るようになりました。サンタ バイ サンタ カロリーナ ソーヴィニヨン・ブランは、それまでソーヴィニヨン・ブランとシャルドネのブレンドだったものを、ソーヴィニョン・ブランの味わいがより力強く感じられるようにリニューアルしました。爽やかな酸味、柑橘系の香りで、フレッシュさをより楽しめる味わいになりました。
ガレットと合わせると、たらの穏やかでしみじみとした旨みを、サンタ ソーヴィニョン・ブランが、くっきりとみせてくれました。
「サンタのソーヴィニヨン・ブランって、強いワインじゃ無いですよね。その控えめな個性だからこそ、たらの繊細な旨味を素直に引き出せるんだと思います」
「そうですね。控えめだからこそ、相方のたらの、穏やかな持ち味を、上手く引き立てるんでしょうね」
「いものカリカリとした食感と、ソーヴィニヨン・ブランのキレのある酸のクリスプなタッチとも良く合っています」
「そのいもの千切りの先っぽの、ちょっと焦げてしまった部分の香りと、ソーヴィニヨン・ブランの少しフュメなニュアンスとも、とっても良い感じです」
爽やかなサンタ ソーヴィニョン・ブランにじゃがいもとたらのガレット、一度、試してみませんか?