今回のレシピは、ナンプリックプラーヤーン、タイ料理です。ナンプリックの「ナン」は「液状」とか「液体」という意味で、ナンプラーのナンと同じです。「プリック」は「辛い」なので、「辛い液体状のディップ」という事です。唐辛子、にんにく、ホムデン(タイの紫色の玉ねぎ)、カピ(5月掲載のペナンカリーにも登場したエビで作る魚醤)、ナンプラー、ライムのしぼり汁などを石臼やフードプロセッサーでペースト状にしたものです。野菜にディップしたり、調味料としても使います。現地では、何十種類もバリエーションがあるそうで、ナンプリック〇〇〇という名前になります。今日のレシピではナンプリックプラーヤーン、「プラー」は「魚」、「ヤーン」は「焼く」で、「焼き魚のナンプリック」という訳です。魚は鯵の干物を使いました。タイではナンプリックプラーヤーンを作るのに、鯵に似たプラトゥーという魚を、よく使います。魚屋さんには、蒸された状態で売られている事が多いのですが、どの魚も、首が折ってあって、まるでお辞儀をしているような不思議な姿です。このプラトゥーは、見た目は鯵に似ているのですが、実は鯖の仲間です。傷みやすいので、漁獲されるとすぐに首を折って、血抜きをしているのです。
まず、鯵の干物を焼きます。タイでも、蒸されて売られているプラトゥーを焼いてから使います。このほうが香ばしい香りが出て、更に美味しくなるからです。にんにくとホムデンは粗みじんにしてから、から炒りしカピを加えて香りを出します。そうです、ナンプリックプラーヤーンは香りが重要なのです。
この、ナンプリックプラーヤーンにテイスティングメンバーが選んだイチオシワインは、なんと赤ワイン、サントリー塩尻ワイナリー 塩尻メルロでした。長野県塩尻市にあるサントリー塩尻ワイナリーはJR塩尻駅のホームからすぐ見える位置にあります。岩垂原や桔梗ヶ原などの契約農家さんが丹精込めて育ててくださったメルロを仕込みました。マリアージュ実験に使ったのは2015年ヴィンテージです。2015年は生育期である4月から8月は好天候と悪天候が交互にやってくる難しいヴィンテージでした。9月中旬から天候が回復し、収穫期の10月は好天に恵まれました。ゆっくりと進む果実の成熟を辛抱強く待って、例年より10日くらい遅く収穫しました。フレンチオーク樽で12~15ヶ月間樽熟成、新樽比率は2割弱です。色は濃く、紫がかった深いダークチェリーレッドです。カシスなどの黒系果実を思わせる香りと、ほんのりとスパイシーな香り、さらにタバコの印象やスモークしたような香りもあります。アタックはなめらかで、熟したぶどうの甘やかさを感じます。酸は穏やかで、程よいボリュームです。タンニンはきめ細かく、力強さがあります。きっちりとした端正な構造で自然な甘さや、ふくよかさがある余韻の長いワインです。
ナンプリックプラーヤーンに合わせると、鯵の味わいをメルロが柔らかく包み込むのが判ります。
「赤は意外でしたね」
「本当です。ちょっと驚きました」
「焼いて、香ばしくなっている所がポイントだと思います」
「鯵の風味が引き立っています」
「ワインも、より美味しく感じますよね」
「フィッシュケーキのような味わいで、魚の旨みがしっかりと出ています」
色とりどりの野菜を用意すると、食卓が華やかになります。干物を焼いて、フードプロセッサーを使えば、手早く作ることができます。タイ料理の美味しい時期になりました。是非サントリー塩尻ワイナリー 塩尻メルロと合わせてお楽しみください。