今回の料理は新じゃがのペナンカリーです。ペナンカリー自体は、わりとポピュラーなタイ料理です。ペナンはマレー半島の南に位置するマレーシア領の島で、半島の西側にあります。面積はちょうど、沖縄県の西表島くらいです。タイの最南端から海路で120kmと近いので、タイとは交流のある島です。今日のペナンカリーはタイ料理のペナンカリーなのですが、ちょっとややこしいのはマレーシアのペナンにもペナンカレーと呼ばれる料理がある事です。アメリカの「ラーメン レイター」というサイトで、2014年の世界一美味しいインスタントラーメンに選ばれた「ペナンホワイトカレーヌードル」はペナンカレーのアレンジラーメンです。タイ料理のペナンカリーは、日本で言うスパゲッティー ナポリタンのような存在で、ペナンのカレーだったらきっとこんな味わいだろう・・・とイメージしたカレーで、ペナン島の地元で作られているカレーそのものではないのです。レシピは、レッドカリーに似ていて、大きな違いは、レッドカリーでは使わない事が多いナツメグとシナモンを入れる事です。上の写真を見ていただくと、材料が並んでいます。金属トレイの左にあるのが出来上がったペーストです。金属トレイの左上の大きな唐辛子がプリックチーファーヘンです。生の物=プリックチーファーの輸入は認められていませんが、乾燥(ヘン)した=プリックチーファーヘンや冷凍は日本でも購入できます。そんなに辛くない唐辛子で、穏やかな優しい辛さが特徴です。その右隣の小さい唐辛子がプリッキーヌです。タイ語でprik kee noo=ネズミの糞のような、という名前がついています。可愛らしいサイズの唐辛子ですが、タイでは最強と言われる程に辛く、辛さの指標であるスコビル値は50,000~100,000SHUです。タバスコが2,500~5,000 SHUとされていますので、プリッキーヌの強烈さが良く判ります。プリッキーヌが無い場合は、鷹の爪で代替可能です。唐辛子たちの下に写っているのがカー、タイの生姜。その下がタイの小玉ねぎであるホムデン。長いのがレモングラスで、その右隣の白いお皿に入っているのがカピです。カピはエビで作る魚醤です。ナンプラーが液体状なのとは違って味噌状、もしくは固形です。小エビを塩漬けにし、発酵させて作りますので、原材料表示はシンプルに小エビ、塩となっているものがほとんどです。独得の強い香りがあってペナンカリーには、是非入れたい調味料です。ペースト材料をフードプロセッサーにいれてペーストを作ります。主素材は牛肉の薄切りと新じゃがいもです。ジャガイモはナス科ナス属の植物でアンデスの原産です。日本では、年に2回植えつけられ、秋植えの物が3月から7月にかけて「新じゃがいも」として出回ります。春先は長崎産や鹿児島産が、7月になると北海道産が市場に並びます。水分を多く含み、柔らかくて美味しいじゃがいもです。
この、新じゃがのペナンカリーに、テイスティングメンバーが選んだイチオシワインはフォルタン リトラル メルロでした。フォルタン リトラル メルロは今年の2月に発売されたばかりの新製品です。スカリ社がフランス最大のIGPワインの産地であるペイドックのぶどうで醸しました。今では当たり前になっているペイドックの品種名ワインは、1987年、スカリ社のロベール スカリ社長の提唱によって誕生したワインなのです。スカリ社の本社はラングドックのヴェネツィアと呼ばれる港町、セートです。ペイドックは320日晴天が続く「地中海性気候」の土地です。暑く、日照量が豊富、春から収穫までの期間とても乾燥していて、病気も少なく、農薬などをほとんど使わなくても良い、ぶどう栽培のパラダイスなのです。千数百年前から安定してワイン生産が行われていて、なんと、日照時間はチリより長いのですよ。
よく熟したブラックベリーやスミレの花などを連想させる甘い香り。口に含むと、やわらかな果実味と穏やかな酸味、程よいタンニンが広がる、優しくてまろやかな味わいの赤ワインです。新じゃがのペナンカリーと合わせるとペナンカリーの辛さをメルロの充実した果実味が優しく包み込んでくれています。
「ペナンカリーのフレッシュハーブの香りが強まります」
「ココナッツミルクの柔らかな広がりと、メルロのテクスチュアが良く合っていますね」
「ワインの豊かな果実味が、ペナンカリーの辛さを和らげてくれます」
タイ料理とワインはちょっとなぁ・・・・と誤解されているワイン好きの方に是非お試しいただきたいマリアージュだと思いました。暑くなってくると、食べたくなるのがカレーですよね。このペナンカリーにも一度挑戦してみてください。手軽に作りたい方にお勧めなのが、市販のレッドカリーペーストにナツメグとシナモンを足す方法です。かなり本物に近いペナンカリーになります。