今回の料理は鶏もも肉と栗のソテーです。クリスマスに鶏もも肉を食べるのは、日本では定番中の定番ですが、世界では決して主流ではないようです。アメリカでは、何と言っても七面鳥です。開拓時代には七面鳥が貴重なたんぱく源だったので、勤労や天の恵みへの感謝を象徴しているとも言われます。クリスマスや感謝祭に、大きな七面鳥を丸揚げする家庭も多く、それが原因での火災が多く発生するので、今の時期は消防署が「凍ったままの七面鳥をそのまま揚げない!」キャンペーンを繰り広げています。イタリアではイブのディナーとクリスマス当日のランチで食べるものが違うところが多いようです。イブは魚料理、25日のランチはイタリア料理のフルコースというのが定番です。魚料理は鱸や鯛、ナポリでは鰻が出るそうです。フルコースの方はレストランの料理かと思うような、アンティパスト(前菜)から始まるご馳走で、プリモ・ピアット(パスタ料理)、メイン、付け合わせ、デザートまで続く家が多く、〆は何と言ってもパネトーネです。メインの素材が特に決まっている訳ではなく、ローストビーフやTボーンステーキなども出るようです。ドイツもイブとクリスマス当日は料理が違い、イブはソーセージとポテトサラダで簡単にすませる家が多いそうです。クリスマス当日はガチョウや鴨の丸焼きという家が多いようですが、青い鯉という料理もあります。もともとの色が青い鯉を食べる料理ではありません。鯉を白ワインでマリネする時に青くなるそうです。クリスマスに鯉を食べる風習はポーランドやチェコにもあります。フランスに長く住んでいる日本人に「フランスでのクリスマス料理」を尋ねると、「キャビア、フォアグラ、鶏の丸焼きとビュッシュ ド ノエルかな?」という答えが返ってきました。やっと出てまいりました、鶏です!鶏は鶏でも、クリスマス用として特に珍重されるのが、「ブレスのシャポン(Chapon)」だそうです。シャポンは去勢した雄の鶏で雌よりもずっと大きく、ブレスのシャポンは最低3kgが義務付けられています。飼育も厳密な規定があり、飼育密度は、屋外だと1羽あたり最低10㎡です。畳に換算すると、畳の大きさが東日本と西日本で違ったりする事もありますが、1畳が約1.62㎡ですので、6畳以上が義務付けられている事になります。広々としていますね。生まれて35日以前に鶏舎から屋外に移され、屋外での飼育期間は最低23週間、更に伏篭で4週間の仕上げが義務付けられている大変手間隙がかかった鶏なのです。ワイン好きの皆様は「ブルゴーニュの栄光の3日間」の事はご存知かと思います。ブルゴーニュのワイン産業の中心地であるボーヌで開かれるオスピス ド ボーヌの競売会です。ブレス鶏にも同じく「栄光」の名前を冠されたコンクールがあるのです。Les Glorieuses de Bresseという名前のコンクールで、今年は12月14日から18日にブール エン ブレスをはじめとする4つの村で開催されます。ブレス鶏の生産者がこぞって出品し、肥育状況や美しさを競います。そこに出品された鶏は、まさにクリスマス用として出荷されます。有名生産者の鶏を手に入れるには、それこそ何ヶ月も前から予約しないと買えないそうです。日本でも、時期からしてコンクール出品の鶏ではないのでしょうが、ブレスのシャポンがネットで販売されていました。1羽、何と約5万円・・・・・大変高価な鶏ですね。日本でもシャポンに取り組んでいる農家が鹿児島などで出始めています。さて、今回はシャポンではなく普通の雌鳥ですが、栗とソテーします。栗は生の定温貯蔵品とかが手に入ればベストですが、甘栗でも美味しく作る事が出来ます。
さて、鶏もも肉と栗のソテーに、テイスティングメンバーが選んだイチオシワインはサントリージャパンプレミアム かみのやま産メルロでした。かみのやま産メルロは、山形県上山市の契約農家さんに育てていただいたぶどうを冷蔵輸送し、塩尻ワイナリーで醸します。山形県は県央エリアが盆地になっていて、果物の栽培が盛んな県です。醸造用のぶどうの都道府県別生産量では第4位で、ワインづくりの歴史も大変古い県です。上山市は県の南東部にあり、県庁所在地の山形市のすぐ南側です。夏の最高気温は高く40℃に迫る時もありますが、夜になると東側にある蔵王連山から冷気が入り込むのか気温が下がります。この昼夜の寒暖差がぶどうづくりではとても大切で、そのおかげで色素などのポリフェノールの生成が促進されるのです。グラスに注ぐと濃い目のラズベリーレッドのとても美しい色合いです。スミレを思わせる花の香りとプラムやさくらんぼ連想させるフルーツの香りがあります。味わいはピュアな赤系果実で、やわらかさがあり、メルロの特徴である甘さが感じられます。ぶどう由来の自然な酸味豊かなバランスが良いワインです。
鶏もも肉と合わせると、鶏の肉汁とかみのやま産のメルロの程良いボリューム感とがピタリとマッチしています。
「美味いですね、メルロの優しい旨みが鶏を包む感じです」
「ワインと合わせると、トマトの酸味がより活きていますよね、上山が冷涼だからですかね」
「4月から10月の平均気温を見ると、登美の丘と上山では1.8℃も違うのです。なので、酸がエレガントでキレがあるのです」
「栗のほっこりとした味わいと、メルロの品種が持っている柔らかな味が良く合っています」
「2016年ヴィンテージなので、まだ若いワインなのですがキノコの味わいを引き立てますね」
「一見、線が細いワインに見えますが、繊細でしなやかな強さのあるワインだと思います」
今年のクリスマスや年末年始のお料理に、鶏もも肉と栗のソテーはいかがですか?そして、サントリージャパンプレミアム かみのやま産メルロとの抜群の相性をお試しくださいませ。