今回の料理はムー パッキン、タイ料理です。「ムー」は「豚」、「パッ」は「炒める」、「キン」は「生姜」なので、タイ料理の豚の生姜焼きという事です。日本で生姜というと、普通にスーパーなどで販売されているショウガ科ショウガ属の生姜を指しています。タイでは様々な生姜が使われ、大きく分けて3つあるそうです。トムヤムクンやトムカーガイに使われる「カー」と「ウコン」と、今日使用する「キン」です。キンは日本で通常流通している生姜と全く同一の種類です。カーは英語ではgalangal=ガランガル、日本語ではナンキョウ=南姜と呼ばれるハナミョウガ属の生姜です。カーは皮がとても堅くて、断面は白っぽいです。香り高く、辛味が強くて、ピリッとした味わいが特徴です。ウコンは英語ではturmericで、タイ語では、カミンチャンと呼ばれるウコン属の植物です。色が鮮やかで、黄色い染料の原料としても広く用いられてきました。活性酸素の除去に効果があるのではないか?とか、肝臓などに良いのではないか?と言われる事もあるクルクミンを多く含んでいますので、二日酔い対策ドリンクなどにも使われています。さて、今日はムー パッキンなので、日本で普通に売られている生姜を使います。生姜の分量は多目で、豚肉の1/10くらいの生姜を、マッチ棒の軸くらいの太さに千切りして使います。副素材は玉ねぎときくらげです。きくらげはキクラゲ科キクラゲ属のキノコで東南アジアでは盛んに食べられます。日本では中国産の乾燥のものが多く流通していますが、各地で栽培もされており、市場では北海道産から沖縄産まで各地のものを、乾燥ではなく生で見かけます。県別で最も多く生産しているのは2016年の農林水産省の特用林産物生産統計調査をよると熊本県で、その後は茨城県、鹿児島県の順になっています。
このムー パッキンにテイスティングメンバーが選んだイチオシワインはヤルンバ ワイ シリーズ リースリングでした。ヤルンバはオーストラリアに現存する最古の家族経営ワイナリーのひとつと言われている伝統ある生産者です。1849年、イギリスの移民サミュエル・スミスが12歳の息子のシドニーと共に月明かりの下でぶどうを植えて、先住民の言葉で「ヤルンバ」=「すべての土地」と名付けたのが始まりです。現当主は創業者から5世代目にあたるロバート・ヒル=スミスです。ヤルンバ ワイ シリーズの「Y」はYalumbaのYであるとともにYour Wine (あなただけのワイン)を見つけてほしいというメッセージが込められているのです。ワイ シリーズのリースリングは、オーストラリアの地理的名称であるGIバロッサのリースリング100%で醸されました。熟した白桃やリンゴに加えて、パイナップルなどのトロピカルフルーツを連想させる果実の香りや白い花のニュアンスがあります。まろやかで豊かな果実味を、リースリングらしいシャープな酸が引き締める、メリハリのある辛口ワインです。ムー パッキンに合わせると、ヤルンバと出会う事で豚肉の味わいが、よりくっきりとします。
「美味いです!豚が引き立つ組み合わせですね」
「豚の脂が、めっちゃ美味しいです!!」
「脂が美味しいワインって、タンニンのある赤ワインな気がしていましたが、ヤルンバは白でも美味しいですね」
「リースリングの美しい酸が豚の脂の旨みを、より鮮明に浮かび上がらせる感じです」
「スパイシーさも、際立ちますね。生姜のぴりっとした味わいも強調されますし、こしょうも活力を増しています」
素材リストを見るとナンプラー以外は和食の生姜焼きと、あまり変わらないのですが、味わいは、きちんとタイ料理になっています。豚の生姜焼きは人気の献立です。和風の味付けばかりではなく、タイ料理風味の変化球で定番料理を愉しんでみてはいかがですか?そしてヤルンバ ワイ シリーズ リースリングとの絶妙のマリアージュを是非お試しください。